地代支払の相手方

土地を借りていますが、その地主は、Aから金を借り、私への貸地を抵当に入れたり、借金を期日までに返せないときは、Aに土地を譲るという約束をしたりしていたようでした。地主は、約束どおりの日に借金を返せなかったようで、このため、Aは、その土地は自分のものになったからといって、私に地代の請求をしてきました。他方、地主も、Aに土地をやるという約束をしたこともなく、またAが借金の返済期日を延ばしたから、その土地はいままでどおり自分のもので、地代は自分の方に払ってくれといいます。この場合の地代の支払は、どうしたものでしょうか。
本問では借地人の取りうる態度として、登記簿を調べて登記上の権利者に支払う場合、登記簿を調べないで適当と思う者に支払う場合、債権者の確知が不能として供託する場合、地主A間にはっきり決着がつくまでどちらにも支払わず、また供託もしないでいる場合、が考えられます。
本間では、地主はAのために抵当権を設定していますが、そのほかに、代物弁済の予約をAとの間に取り交しているかどうかが問題となっています。
代物弁済の予約というのは、金銭貸借のときに、借主は返済ができなかったときには、弁済の代わりに借主の所有する動産や不動産を貸主にやるという旨を契約しておくことです。弁済期に貸金の返済がなされなかったときには、貸主は予約完結権の行使をする。例えば、あなたは弁済しなかったから私は代物弁済の予約にもとづき予約完結権の行使を致しますという旨を通知すればよいことにより、代物弁済という本契約を単独で一方的に成立させることが できます。そうすれば、意思表示が到達した日から所有権は貸主に移ったことになるのです。ですから、普通、代物弁済の予約は貸金の担保として抵当権と併用されます。貸主は、不動産の価格が貸金の金額より高いときには代物弁済を成立させればよいし、低いときには抵当権を実行すればよい、競売代金が債権額に充たぬ場合は残額は一般債権として残るわけです。

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土地

本問では、Aは代物弁済の予約完結権を行使したから土地は自分の所有に帰したと主張し、地主は代物弁済の予約はしたことがないと主張していることになります。そこで、借地人が代物弁済の予約がなされていたかどうかおよび予約完結権の行使がなされたかどうかを登記所で調べ、なされていたらAに、なされていなかったら地主に支払う途が考えられるわけですが、このような途をとったらどうたるでしょうか。
判例は、賃貸不動産の譲受人は、登記をしなければ、賃借人に対し、所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を対抗しえないとし、賃料請求の関係においても同じだとしています。学説も多くこれに賛成しています。つまり、判例、通説によれば、移転登記がなされていない場合、賃借人が賃料を元の所有者に支払ったとしても、譲受人 は文句はいえないわけです。もっとも、譲受人と賃借人との関係は対抗関係ではないとし、登記の有無にかかわりなく、譲受人が真の譲受人であれば、彼は賃料の請求ができるという少数説もあります。理論的にはこの方が正しいと思います。しかし、この説においても、賃借人が登記名義人たる元の所有者に支払ったときには、債権の準占有者への弁済として、その支払は有効となります。債権の準占有者への弁済というのは、真の債権者ではないが債前者の立場からみていかにも債権者らしくみえる者に対して、善意無過失で、債務者が弁済したときに、その弁済を有効と認める制度です。例えば権判者でないのに貯金通帳や恩給証書と印とをもって貯金の払戻または恩給の支払を求めた者に弁済した場合、本当は相続権がないのにいかにも相続人に見える者に弁済した場合、無効な差押、転付命令を受けた者に有効な差 押、転付命令と恩って弁済した場合などに、その弁済を有効と認め、弁済者を保護するのです。
以上の賃貸不動産の譲渡の場合の一般理論は、本問の代物弁済の予約の場合にもそのままあてはまります。けっきょく借地人は、代物弁済の予約完結権の行使が登記上なされたことになっていればAに、それが登記上なされていないことになっているとき、または代物弁済の予約の登記号のものもなされていないときは他主に支払えば、債権の準占有者への弁済として、保護されるわけです。
この場合は、けっきょく、後になって真の権利者が判明したときに、真の権利者に支払っていなかったことが問題になります。さらにいくつかの場合に分けることができます。第一に、借他人がAに支払ったが、登記上の権利者はたまたまAとなっていたものの、真実の権利者は地主であることが決定した場合です。この場合は、借地人は保護されます。なぜなら、この場合、Aは債権の準占有者だからです。第二に、借地人が、Aに支払ったが、登記上の権利者も、真実の権判者も地主であった場合があります。この場合にも、借地人は債権の準占有者への弁済を主張するほかはありませんが、登記を調べなかったということは過失と認定されますから、けっきょく借地人の支払は有効でなかったことになります。第三に、第一の場合のAと地主を入れかえた場合、第四に、第二の場合のAと地主を入れかえた場合が考えられます。そして、借地人の支払は第三の場合は有効となり、第四の場合は無効となります。
債務の弁済のときは、いつでも供託できるというものではありません。供託原因がなければならないのです。供託原因は、債権者が受領拒絶したとき、債権者が受領不能であるとき、および債権者を確知できないときです。ですから、本問の場合、どちらが債権者か断定できないのであれば、供託してもよいわけです。供託は現実に支払ったことと同じ効果をもちます。
借地人は地代の延滞をしていることになりますから、事態がはっきりした後に、真実の権利者が延滞地代を支払えと請求し、それで借地人が支払わなければ、その真実の権利者は借地契約の解除をすることができます。この請求に応じて借他人が支払えば、解除はできません。事態がはっきりしない前に、Aか地主かが履行遅滞を理由に催告し、停止条件付に解除の意思表示をしても、その意思表示は効力を生ずるとは認められません。近年の判例は、債務不履行という事実のみでは解除を認めず、その事実その他から、信頼関係が破れたときにのみ解除の効力を認めているし、はっきりするまで支払わないでいることが信頼関係を破ったといえないからです。

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