環境の変化と地代の変更

近くに私鉄の駅ができて、商店街になるというので、かなり高い地代を払って土地を借りましたが、私鉄の計画が変更になったため、その土地は、商店街としては、あまり適切ではなくなりました。このような場合に契約を解除することができるのでしょうか。
私鉄の計画が変更になったのは、借地契約の前であるか、あるいは後であるかによって考え方が違ってきます。借地契約の前だとしますと、錯誤の問題を生じますし、後ですと、事情変更の原則や借地法一一条の問題になります。
 近くに私鉄の駅ができて、商店街になるというので土地を借りたが、実は私鉄の計画がその前に、知らないうちに変更になっていたというのは、いわゆる動機の錯誤といわれるものです。借地をする動機に思違いがあったわけです。この場合には、動機、すなわち、私鉄ができて商店街になるから借りるのだということを地主に表示していないと、錯誤による無効の主張はできません。商店を建てるための借地では、このような思違いは大きな影響のあることですから、もし動機が表示されておれば、無効だということができましょう。もっとも、借りた人に重大な過失、例えば、調査すればすぐわかるのに調査しなかったというような場合があって思違いをしたのだというのであれば、無効の主張はできません。

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契約をしたあとで私鉄の計画が変更になった場合についてでは、契約をしたときの事情が、後に至って著しく変わったときには、契約の内容を変吏したり、契約の解除をすることができるという考え方です。もっとも、契約の内容を変更するという点は、この問題に即していえば、借地法一ニ条として具体的に立法されておりますので、ここで一般的に考える必要がなく、借地法一二条の問題としてあとでふれることにして、ここでは、契約の解除の問題として、事情変更の原則を考えていきます。ところで、この事情変更の原則は、それを適用するに当たっては極めて慎重でなければなりません。なぜかといいますと、将来何があるかということなどを予測することはできません。したがって、契約をするということは、かけをしていることにもなるのです。契約はそういう前提に立っているのです。そうしますと、契約をしたあとで、事情が多少変動することがあっても、それを顧慮しないのが妥当だということになります。判例もそのような態度をとっています。
そこで、この原則を適用する要件としては、(1)事情の変動が契約をしたときに全く予測できなかったこと、(2)その変動が急激で大きいこと、(3)このように著しく変動した事情のもとで、契約の内容をそのまま履行させることが著しく信義に反すること、があげられております。本問をそれにあてはめて考えてみると、(1)の要件はあるいはみたすかもしれません。しかし、場合によっては、注意すれば予測できたかもしれません。そうなれば、要件をみたすことになりません。(2)については、社会的、経済的な大きな変動というほどのことではないともいえません。(3)についても、この契約の解除を認めねばならないほど、両者の間に不公平が生じ、信義に反する事態にたちいたったともいえないでしょう。このような見込違いのときに、いつでも信義に反するものとして契約の解除を認めていたのでは、契約そのものの安定性というものは期することができないように思われます。
結論として、事情変更の原則の適用はな く、契約の解除はできないといっていいでしょう。
契約の解除ができないとすれば、借地人は借地法一二条、事情変更の原則の一面の具体化である立法にもとづ いて値下げの請求ができるでしょうか。本問では、借地法一二条がかかけている、税金がひくくなったこと、他価が下がったこと、という事情がないようです。付近の地代と比べてみて高過ぎるということはあるかもしれません。もしそれもないとした場合に、値下げの請求ができるでしょうか。借地法一二条にかかげられている三つの要件は例としてあげられたのですから、それがなくても、ほかに値下げの請求を認めるに十分な理由があればよいと解釈されております。そこで、本問のような場合に認められるかどうか考えていく手がかりとして、これに似た判例にあたってみましょう。以下のような判例があります。
新道路および市営電車の開通を予期して 不相当に高額の地代を取り決めていたところ、それが見込違いであった事件で、開通がないときは別に相当賃料を協定すべき約定もなかったのだから、見込違いで地 代が不相当になったからといって地代の減額請求はできないとしたものです。この事案は、本問とほぼ同じケースだと考えてよいでしょう。判例の立場にたてば、本問の場合は、地代値下げの請求ができないという結論になります。
 借他人は、おそらく発展をみこして、他の人をおしのけて借地契約を結んだのでしょう。ところが、見込違いだったからすぐ値下げしろというのは、少し虫のよすぎる話です。値下げを認める基準は、結局公平の観念です。それに照らしてみて、この場合は認めるべきでないように思われます。
もっとも、それから相当の期間、例えば五年とか経過して、他価が下がったとか、付近の地代に比べて高過ぎるということがあれば値下げの請求は認められるでしょう。
また、契約をするときに、地主が、将来私鉄の計画が変更になることはないというようなことをいって、将来を保障して 契約をしたというような事情があれば、公平の観念からみて値下げの請求を認めるのが妥当だということになるでしょう。

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