地代の値上げと値下げ

土地に課せられる税金が高くなったから地代を上げたいとか、この土地の近くには鉄道が開通しないことになったから地代を下げてもらいたい、という問題は私達の周囲にはよくあることです。もっとも、現在のように、物価が年々あがっていくような情勢では、値下げの請求というのはめったにおこらないでしょう。そこで、ここでは値上げのほうを主として説明しましょう。
この問題は、借地法一二条で規律されております。同条一項は「地代又は借賃が土地に対する租税其の他の公課の増減若は土地の価格請高低に因り又は比隣の土地の地代若は借賃に比較して不相当なるに至りたるときは契約の条件に拘らず当事者は将来に向て地代又は借賃の増減を請求することを得。但し一定の期間地代又は借賃を増加せざるべき特約あるときは其の定に従ふ」とあります。
つまり、契約をしたときの事情が、後に至って著しく変わってときには、契約の内容を変更することができるという、いわゆる事情変更の原則とよばれるものが具体的にあらわれた条文なのです。
ところで、この条文で、地代又は借賃となっていますが、正確にいいますと、地上権の場合が地代で、賃貸借の場合が借賃ということになります。しかし、一般には借賃の場合も地代とよんでおりますので、ここでもそれに従うことにします。

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値上げの請求が認められる要伴は次のようになります。税金が高くなったこと、地価が上がったこと、付近の地代に比べて低いこと、などで、しかもそれが、公平の観念からみて不相当になったということです。そのほかに、地代が定まったときから相当な期間を経過していることが必要です。
値上げの請求が認められるのには、上述のすべての条件がそろっていなければならないということではありません。そのうちの一つでもあればよいのです。それだけでなく、上述べたの事実がない場合でも値上げの認められる場合があります。事実は例としてあげたのだと解されているからです。例えば、借他人の承諾をえたうえで、地主がその土地に改良工事を加えたというような場合です。
値上げの請求が認められるためには、すでに述べましたように、地代が定まってから相当な期間が経過していることが必要です。もっとくわしく言うと、賃貸借の契約をして地代の定めをした時から、または、この前の値上げをした時から、相当な期間を経過していることが必要です。一度値上げの請求が認められたら、あとは二度とできないとうものではないのですが、そのつぎに値上げの請求をするときは相当な期間が経過していなければなりません。事情が変わったからといって、地代の定めをしてから、たとえば、半年もたたないうちに値上げを請求するのは、不当だからです。それを認めたのでは、借他人の生活は安定することがないからです。
相当な期間とは何年くらいをさすのでしょうか。これは一律にきめるわけにはいきません。経済的事情がどの程度に変わってきたかを考えて、それぞれに応じて決めるほかしかたがありません。また、そこに建てられている建物が住宅か営業用建物かでも違いがあります。判例にあらわれた例をみますと、三年、四年七ヵ月、一年四ヵ月などといろいろあります。平均すると三年くらいになるようです。そのくらいの期間を一応の目標として考えていいでしょう。
税金が高くなったことに関して土地に直接かかってくる税金としては、固定資産税、都市計画税、水利地益税があります。理屈からいえば、固定資産税は、土地を所有していることに対する課税ですから、それは土地所有者が負担すべきもので、借他人にそれをすべてかぶせるのは不当だといえましょう。したがって本来、固定資産説が高くなったからといって、すぐ地代にはねかえらせることはできないと解すべきものなのでしょう。しかし、実際には、固定資産説を地代のなかにおりこんでいるのが多いようですし、固定資産税が高くなるときは地価があがっているときでしょうから、要件の一つと考えていいでしょう。都市計画税や水利地益税は、土地を利用することに対して課せられるのですから、これらがあがれば、地代をあげることは理由になることになります。つぎに地価があがったことが要件としてあげられておりますが、これがもっとも大きな要因をなすといってもいいでしょう。ただ、現在、地価は投機性をもちやすいものですから、すべての場合に、それをそのまま地代に反映させることには問題があります。
地主との間に特別な関係があって、例えば友人であるとか親族であるとかで地代が低く定められている場合には、その関係がなくなったあとでも、付近の地代なみに一挙にその差をうめることができるかどうかは疑 問があります。否定的に解すべきものと思われます。また、ある土地の所在区域がまだ市街地として十分に開発されていなかった当時からそこを借地していた者については、草分けとして地代が低くなっているのが普通です。この場合も、付近の地代と差があるのは当然ですから、この差をうめることができないと考えられます。
地代の増額をしないという特約が、ある一定期間を決めてなされれば、その期間は増額の請求はできないことになります。満三年を経過したときは増額するという特約はどのように解すべきでしょうか。満三年は増額しないという点では有効な特約です。しかし、満三年を経過したなら必ず増額するという意味では借他人に不利な特約になりますから、無効だということになります。したがって、前者の意味にだけ解釈されることになります。
今の社会情勢では減額を請求する場合というのは非常に少ないと思います。しかし、ないわけではないでしょうから、簡単に説明します。基本的な考え方は増額の場合と変わりません。まず期間の経過ですが、増額の場合と追って三年とか五年とかの経過は必要としないと解すべきですが、ある程度の期間を経過することは必要でしょう。税金が低くなったとか、地価が下落したとかが、減額請求の事由になることは、増額請求の場合と変わりありません。問題は、付近の土地の地代と軟べてみて地代が高すぎる場合です。この場合も同様に考えていいでしょうが、ただ、その土地が発展することをみこして、高い地代に応じたというような場合には問題がありましょう。この場合は、借地人の見込違いであって、原則としては減額請求はできないでしょう。ただ、そのように誤信したのが、所有者のたくみな勧誘によるものであるとか、所有者が保障したものであるとかというような事情にもとづく場合には、減額請求ができると考えられます。
また土地の所有者が土地の維持、改良を怠っているときには、借地人は地代の減額を請求することができると解していいでしょう。さらに、営業用建物を住宅に改築したような場合にも、事情によれば減額請求できるだろうと思われます。
減額請求の手続も、借地人の方から請求する点の違いがあるだけで、増額請求の場合と変わりがありません。

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