親族間での土地の貸借り

兄所有の土地の一部を借りて家を建てることにしました。兄は、兄弟の間のことだから地代はいらないといいます。そのためにあとで困るようなことにならないでしょうか。
これは、理論的には、使用貸借にあたります。したがって、この面からだけ考えると、無償の賃借の場合、借地人は様々の不利益をこうむるように考えられます。
しかし、通常、親しい身内の間では、地代をとらずに土地を貸借することが行なわれ、しかもそれは、親族間の特別な事情にもとづくことが多いので、一般の使用貸借の場合とは、やや異なった見方ができるのではなかろうかと思われます。つまり、親族間に存する特別な事情を考慮して、その借地の法律関係を考える必要があるのです。
一つの判例をみましょう。
 甲には、乙、丙の二人の子供がおり、甲は、その生存中、自分の所有している土地の上に家を建て、これを丙に贈与し、その敷地をただで使わせていました。ところが、甲が死亡し、乙がその家督相続をし、この家の敷地の所有者になったところ、その後、丙に対し、この借地は、期間および使用目的につていの定めのない使用貸借だから、これを返還するように請求しました。
このようなケースについて、裁判所は、甲は、丙に、甲が建ててやった家の敷地として、この土地をただで使わせ、丙が生活をたてていけるように取りはからったものであるから、その家が存するかぎりは、丙に対し明渡しを求めることができない、と述べています。これは、甲つまり乙、丙間に存する身分上の特別な事情を考えたものといえます。

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親族間に存する特別な事情とは、どのようなものでしょうか。それは、一口にいえば、親族が相互に、もしくはある一人が他人を扶養している関係といえるでしょう。
あなたと兄さんというように、夫婦、親子以外の親族の間においては自分の能力だけでは、生活を維持することができないものがある場合に、ほかの親族が、自分の生活を維持してなお余力があるときに、生活困窮者の生活を補助するという形で扶養する義務があると考えられています。そうして、その親族の中でも、直系血族と兄弟姉妹は、当然に相互に扶養する義務を負い、三親等内の親族は、家庭裁判所の審判があったときに、扶養義務を負うことになります。また、扶養をするもの、受けるものの順位、扶養の程度、方法は、まず、これらの親族間の協議によって決めますが、それがまとまらないときは、家庭裁判所の審判で決めることになっています。そこで、兄さんから土地を借りる場合について考えてみましょう。
もちろん、兄さんから土地を借りるとい うケースには、純然たる賃貸借または使用貸借があることは否定できません。この場合には、民法、借地法などがそのまま適用となるのであり、特に説明することはありません。問題となるのは、扶養の要素が加わる場合、つまり、兄さんがあなたの生活を補助する趣旨も含めて、土地を貸す場合です。
このように、兄さんがあなたに土地を貸して、あなたの生活の世話をしていると認められるときには、土地の貸借のほかに、兄さんがあなたに土地を使わせるという形で扶養するという合意が成立しているものと解釈できるでしょう。
もっとも、扶養関係が発生するためには、あなたが、自分の経済力や労働力だけでは、人間にふさわしい最低限の文化的生活を営むことができないというように、その生活を扶助する必要がなければならないのですが、その必要性をひろく解釈することもできます。そうすると、宅地が払底している現状では、あなたが日常の生活は十分いとなむことができる収入をえている場合であっても、たやすく宅地を求めることができないときに、兄さんが余裕の宅地を持っているかぎりは、住宅問題に関しては、兄さんの扶助を受ける必要があるといってよいでしょう。したがって、このような事情があり、兄さんがそれを了解してあなたに土地を貸したという場合には、同時に扶養の合意があったと考えてよいといえるでしょう。そうであるとすれば、このときは、あなたが兄さんから扶養を受ける必要が存続しているかぎりは、兄さんは、あなたに対し、土地の明渡しを請求することができないことになります。
しかし、あなたに十分資産と資力ができて、自分で宅地を求めることができるようになったとか、兄さんの生活状態が悪くなって、あなたに貸している土地を他に有利に処分したり、利用したりする必要ができたときは、兄さんは、あなたを扶養する義務がなくなり、その土地の返還を求めることができるわけです。
また、兄さんが死んで相続があったときには、その相続人とあなたとの間で、あなたを扶養する必要や義務があるかどうかを考えてみなければなりません。
というのは、兄さんの扶養義務は、その兄という身分を前提として認められるものですから、それが当然に、その相続人に承け継がれるものではないからです。まず、兄さんの相続人がその妻と子である場合には、三親等内の親族として家庭裁判所の審判によって、扶養義務を負うことになります。ですから、その相続人があなたに土地を貸すのを拒めば、家庭裁判所の審判を求めるほかありません。
しかし、相続人が、前述のような三親等以外の親族になりますと、その親族は、あなたに対して扶養義務を負わないのですから、あなたは、その親族と借地契約をしなければなりませんし、その契約が使用貸借であれば、不利益を受けることになります。
さらに、兄さんが、その土地を第三者に売った場合も、ここに述べたと同様です。
今度は逆に、あなたが死んだ場合のことも考えてみましょう。扶養を受ける権利は、あなただけが持っている権利で、あなたの相続人に承け継がれるものではありませんから、あなたの死後、あなたの相続人と兄さんとの間の扶養義務の問題として考えられなければなりません。もし、相続人があなたの妻子であるならば、兄さんとの話合いによって土地を借りるか、家庭裁判所の審判によって、土地を使わせてもらうようにすればよいのです。しかし、相続人が、たとえばあなたの孫であるときは、兄さんは、このあなたの孫に対しては、扶養義務を負いませんから、話合いによって改めて借りるほかはありません。それですから、兄さんから土地を借りる場合も、将来の安定性を考えるならば、世間並みの賃料を払うようにするのが適当です。

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