公共用公物の法的性質

一般公衆の使用に供すことを目的とする、道路、河川、公園などの、いわゆる公共用公物については、それが供された本来の用途に適合するかぎり、一般公衆は、管理者の特別の行為をまたず、これを自由に使用することができます。これを公共用公物の自由使用または一般使用といいます。例えば道路の通行、河川での水浴、公園の散歩などです。公共用公物の設置ないしその存在は、一般公衆の福祉の維持増進を目的とするものであり、その使用により国民はなんらかの生活利益を享受します。

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公共用公物の自由使用による国民の利益は、権利ではなく、単なる反射的利益にとどまると、従来の判例、学説は解してきました。それまでの学説では、自由使用を共用と観念しつつ、各人は唯道路河用等が公衆の共用に開放せられたる結果の反射的利益として、其の許容の範囲に於て且つ他人の共用を妨害せざる限度に於て平等に之を使用する自由を享有するに止まるとします。判例でも、道路の供用廃止に対して住民よりなされた無効確認請求について、公衆による道路の通行は、道路管理者がこれを公物として維持し、一般交通の用に供している場合に、そのことの反射的利益としてのその自由を享有するに止まり、それを通行するについては権利はもとより法律上の利益をも取得するものではないとしてしりぞけ、また、第三者による道路通行の妨害についても、行政行為に基く反射的効果として、利益を享受し得るに過ぎない者は、第三者の行為によって、その利益享受が妨害ざれたからと云って、直ちにその第三者に対して妨害排除を請求しうる権利を有するものではないとします。つまり、自由使用による国民の生活利益を公共用公物の設置に伴う反射的効果とみる見解によれば、自由使用における国民の地位は、行政主体に対しても、また、第三者に対しても、なんら法的保護に値しないとされます。
従来の反射的利益説を採る学説においても、特に違法な第三者による自由使用の妨害が、いかなる意味においても権利侵害たりえないとしたわけではなく、自由権の侵害となることを認めるものもありました。また、同様に、第三者による通行妨害について、共同使用権にもとづく妨害排除請求を認容した古い判例もあります。したがって、反射的利益説によるときも、自由使用における国民の地位のあらゆる法的保護を否定することは当然の結果ではありません。最高裁判所では、第三者が村道を不法に占拠し住民の通行を妨害した事例について、地方公共団体の開設している村道に対しては村民各自は他の村民がその道路に対して有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の活動を自由に行い得べきところの使用の自由権を有する。これに対しては民法上の保護を与うべきは当然の筋合であると判示し、妨害排除請求の成立を肯定したこの判決は、公共用公物の自由使用について、国民が一種の自由権を有することを示しています。もちろん、そこでは、現に存在し公衆の用に供されている公共用公物に関してという前提がありますが、そのかぎりでは、この自由権は、第三者に対してのみならず、行政主体の公物管理権の行使あるいは警察権の行使に対しても、当然に、法的に保護されるべきです。
公共用公物の自由使用について、国民に自由権が認められるとしても、それは、あくまで、一旦設置されかつ現に公共の用に供されている公共用公物についてでしかありません。公共用公物の新たな設置あるいは廃止そのものについて、その自由使用により一定の利益を享受する国民が、なんらかの権利を有するかについては、なおも、一般に否定的です。したがって、設置、廃止そのものに対する意味では、自由使用による利益は、なおも反射的利益でしかないとされる余地があります。しかし特に廃止については、従来よりその自由使用により利益を享受してきた国民の地位を、法的に保護の対象とする見解が、今日、様々に示されています。その第一に、裁判的救済とりわけ抗告訴訟の対象を、実体法上の権利から法律上の保護に値する利益にまで拡大し、権利と反射的利益の相対化を図る見解があります。これは、反射的利益論一般にかかわる議論ですが、公共用公物の廃止についてもいえ、判例にも、道路の廃止により自己の住家の唯一の出入口を失う等直接の利害関係を有する者の抗告訴訟の提起を容認するものがあります。第二に、自然公物たる海岸、河川の公用廃止については、英米法とくにアメリカ法における公共信託の理論を援用して、環境利益を含む国民の生活利益の法的保護を説く見解があります。公共信託の理論は、海域、海岸、河川などの自然財は民衆の共有財産であり何人の私的所有にも属さず、国家は民衆の自由使用権の保障のために管理する、とのローマ法的観念に起源があります。特にアメリカ法においては、この観念にもとづき、行政主体の自然財の管理権限は、自由な処分権ではなく、公共利用を第一義として行使されるべきものとされてきました。その結果、公有水面の埋立てに対する国民の環境訴訟の提起が広く認められ、裁判所による開発計画決定過程の審査がなされています。日本において、公共信託の理論を援用する見解は、自然公物の公用廃止決定への関係住民の手続的参加などの立法論を含みつつ、環境利益を含む国民の自由使用権を、同時に、手続的性質の強い権利として位置づけ、これにもとづき、裁判所による廃止決定手続の審査の拡張を主張しています。
公共用公物の本来の用途に適合するかぎり、何人も自由にこれを使用しうりますが、その場合、自由使用は無制限ではなく、一定の限界があります。つまりある個人の自由使用は、常に他人の同様の自由を前提とするものであって、他人の自由使用を妨げることはできず、自由使用が、一般使用とも、時には共同使用とも称されるゆえんです。したがって公共用公物の本来の用途に適合し、自由使用を原則とすべき場合であっても、利用の方法によっては、この共同使用を損うおそれのある場合に、当該利用を許可にもとづかせ、多数の利用者間の調整を図ることがあります。河川における流木、通航に関する許可制や、皇居外宛など国民公園における集会の許可制がこれです。また、利用者間の調整のみならず、同時に公共用公物の維持管理の見地から許可を要件として使用が認められることもあります。道路における特定の車両の通行制限および許可にもとづく通行がこれです。これらは、いずれも、いわゆる公物管理権にもとづく許可使用であり、警察権にもとづく許可使用とは区別されます。つまり公共用公物の使用については、その公共的性格より、公物の維持管理とは別の見地から、社会公共の安全、秩序を維持するための制限をうけ、許可制が独自に採用されることがあります。例えば道路における危検防止と交通安全のための、工事ないし作業、そのほか一定の形態、方法による道路使用に関する許可制度があり、また、公共用公物上での集会、集団行進について、いわゆる公安案例により許可制度が採られていますが、その合憲性はともかく、警察権にもとづく許可使用です。同一の公共用公物について、管理権と警察権が競合することも多くありますが、行政庁は、その権限行使において、両権限を混同してはならず、管理権に名をかりて、別の考慮より表現の自由を制限する場合には、違憲違法となることを免れません。

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