公園予定地の時効取得

行政法学では、国、地方公共団体やこれに準ずる行政主体により、直接、公の目的のために供用される個々の有体物を公物と観念し、公物については、公物でない他の国、公有財産、私有財産と異なる法的取扱いがなされます。一般に、ある有体物が公物、特に一般公衆の用に供される公共用公物としての性質を取得するには、それが公共の用に供しうる形態的要素と公共の用に供する旨の行政主体の意思行為とを必要とします。しかし、公共用公物としての形態的要素を備えず、また、公共の用に供されていない場合でも、将来、特定の公共の用に供用すべきことが決定されている土地、その他の物件については、実定法上、公物に準じた取扱いが規定されていることが多く、学説上も、従来より、これを予定公物と称して、公物に関する法理が適用されるとしてきました。河川法でいう河川予定地、道路法でいう道路予定地がこれになります。また、都市公園法二三条によれば、地方公共団体ないしは国土交通大臣が都市公園を設置すべき区域を決定し、これを公告した場合には、いまだ公園が設置されない間でも、地方公共団体ないしは国が、当該区域の土地の権限を取得した時点で、当該土地は公園予定地とされ、施設設置の制限、占用の許可制や私権の制限など、都市公園に準じた法的取扱いがなされます。都市公園予定地の取得時効の問題は、公物一般に関する取得時効の可否としてあります。

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土地

公物について、民法一六二条以下の取得時効の適用があるかについては、判例では、従来より、ほほ一貫して、否定的であり、これに対し学説は、肯定、否定の各説が対立しています。判例における否定の理由は、必ずしも十分に明らかでなく、公物たる性格上当然のことと解してきたと思われ、明示の公用廃止により公物たる性質を喪失した場合にのみ取得時効の対象となりうるとしてきました。ただ、判例も、例外的ではありますが、公物であったものが自然の事実により公物の形態的要件を喪失し、それを公共の用に供することが永久に不可能となったものについては、公物たる性質を失い取得時効の対象たりうることを認めています。学説においては、私人が其の所有権を取得し、随て其の管理権が私人に帰することは公の目的と相容れないとして、判例の傾向を支持する否定説が、行政法学における有力説として古くよりあります。しかし、私法学説では、一定の制限を認めつつも取得時効の成立を説く制限的肯定説があり、行政法学においても、一時期より、肯定読が主張され、今日では、それと、いわゆる黙示的公用廃止説が、むしろ、有力であるといえます。肯定説は、民法の時効の規定は、真実の法律関係が不明瞭であるとき、永続する事実状態を法的に承認し、もって法律生活の安定をはかるといういわば法全体に通じる理念にもとづくもので、目的物が公物、私物にかかわりなく適用されるべきものとしています。制限的肯定説も、基本的には同様の見解にたちますが、所有権の時効取得は成立しても、明示の公用廃止のないかぎり公用負担の義務は免れないとする黙示的公用廃止説は、公物は、公物そのものとして取得時効の対象たりえませんが、取得時効の要件事実が存在するとすれば、その物についてはすでに公用廃止の黙示の意思表示があるものと認めます。公物の時効取得の可否は、公物たることから一概に断しうるとも思われません。特に公物としての成立に公示をもってする明示的な公用開始行為を必要とする場合と要しない場合とでは事情が異なり、それぞれについて、取得時効の要件充足の可否が検討されるぺきです。
近年では最高裁判所は、まず予定公物たる公園予定地について、外見上公園の形態を具備させたわけではなく、取得時効の進行が妨げられるものとは認められないと、時効取得を肯定しました。判決後、なお、取得時効の適用は予定公物にのみ限定して肯定されるかどうか議論がありましたが、最高裁判所は、さらに、公物たる公園上の水路についても、取得時効の成立を肯定するにいたっています。判例の傾向からは、現実に公共の用に供されていない予定公物については、ほぼ、取得時効の適用が肯定され、公共用公物については、自然公物など、明示的公用開始行為を経ないものについて、自然的形態の変化があり、取得時効の要件の充足のあるとき概ね黙示的公用廃止がなされたものとして肯定されるといえます。その意味では、学説上の黙示的公用廃止説が妥当とされるところです。しかし、道路や都市公園など、明示的公用開始行為を経て成立する人工の公共用公物や、自然公物でも法令により確定されるもので法的に有意味な自然的形態の変化のない場合については、黙示的公用廃止は認めがたく、また、取得時効の要件の完成を認めがたいというべきです。

土地
道路の種類/ 道路の設置と管理/ 公共施設の土地の私権行使/ 河川敷占用許可の法的性質/ 公園予定地の時効取得/ 公共用公物の法的性質/ 入浜権/ 公共用公物の占用/ 公有水面の埋立て手続き/

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