借地権満了による立退き

Aは、土地所有者Bから、宅地約一六〇平方メートルを、期間一〇年間、賃料月額三万円、無断で賃借権を譲渡したり、増改築をしないことなどの約束で借り受け、木造建物を建築して、そこで化粧品店を開業して居住しています。一〇年後、Bは期間満了を理由に立退きを追ってきました。Aは話合いで解決したいと思っていますが、どのようにしたらよいでしょうか。
期間満了を理由に立退きを請求してきたBの真意は何かを知ることは有意義です。例えば、Bとしては期間満了を機会に従来の契約書を「書き換え」るだけの目的の場合や、それに加えて賃料の値上げ、更新料の請求などの目的を達成するための形式的な口実として立退きを追っている場合もあり、そうではなくて、Aの立退き後の宅地を積極的に利用、例えば転売するとか、ビルを建築するとか、駐車場にするとかする目的で、実質的にも立退きを追っている場合もあります。こうしたBの真意を知る方法としては、直接会って話をするとか、Bがもし他の所有宅地を同じように第三者に貸賃しているならば、そうした場合のBの処理方法を調べたりすることなどによって明らかになることと思います。

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一方、Aとしては、条件いかんにかかわらず立退きをすることはできないのか、条件によっては立退きをしてもよいのかを考えてみることです。もちろん、無条件で立ち退くことはできない相談であることは明らかですが、営業政策上の理由とか、家族の健康やより良い環境を望むなどということから、むしろこれを機会に転居した方がいいという事情があり、その希望を満足させるに足る金銭的補償の支払いがあれば、立退きに応じてもいい場合があるはずです。
以上の双方の事情は、法的判断とは関係なく存在するものですが、やはり、交渉に入るには法的立場の検討が必要です。Bは、実は期間満了という事実のほかに五年前に子供の勉強部屋を増築したこと、二年前にそれまで個人営業だった化粧品店を会社組織にして、建物所有名義を会社に移転していること、そのそれぞれについてBの同意を得ていないという事実があり、この点の法的判断をどうすべきか不安です。Bは当然この事実を知っていますから、期間満了の理由のほかに、この事実を契約違反として主張してくるに違いないと思われます。そこで市役所の法律相談の弁護士のもとを訪ねてみました。
期間満了による立退請求は心配ない。本件の契約の事情からみて一〇年の賃貸期間は、二時賃貸借契約」とみることはできませんから、借地法一一条によって無効です。したがって、A、B間の借地期間は三〇年間となり、少なくともあと二〇年間の残存期間があることになります(A、B間の借地期間は二〇年間となるという説もあります)。
無断増築行為も心配ない。無断増改築禁止の特約は借地法上有効です。したがって、本件の場合は一応契約違反といえそうですが、そのことから直ちに契約解除ができるものではありません。勉弛部屋程度の増築で、特に五年間もBさんが黙認していたような事情にあれば、契約解除は認められないでしょう。
個人営業を会社組織にして、会社名義にした場合は、法人格は別ですから借地権の無断譲渡があったことになりますが、そのことが直ちに解除の対象になるとは限りません。こうした類型の場合には、解除を否定するのが判例の傾向のようです。いずれにしても今日では、借地法上裁判所の関与によって借他人の利益を保護する制度がありますから、そういうことをする前には、申立手続をとった方がいいでしょう。
Aは、市役所の法律相談の担当弁護士の助言によって、自信をもって交渉に臨みました。何回かの交渉の後、Bは、Aを立ち退かした跡地と、その地続きの自己所有地にまたがって、六階建のマンションを建築する予定であることが判明し、そのためにはどうしてもAの敷地を必要とする事情があり、一方Aはどうしても本件土地に居住する必要性もなかったので、立退料として、更地価格の約七割に相当する金銭の交付を受けて立ち退くことになりました。交渉期間中の約六ヵ月間、Bは賃料の受領を拒否していましたので、Aは毎月一度、供託手続をとっていました。Bは、もともと法律に明るい人で、自分の主張が裁判所でも認められるとは思っていなかったようですが、Aの法律知識があまりないことに乗じて、明渡請求の真の理由を隠して、無償で立退きをさせ莫大な利益を手中に収めようとしたわけです。その目的がAの抵抗にあって達成できなかったことは当然というべきでしょう。

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