借家の転貸

他人の建物を借りて、飲食店を営業してきました。商売は繁盛していましたが、最近、有名店の支店として暖簾をださないかという誘いをうけました。誘われたチェーン店は有力な会社なので、たいへん魅力があります。もし支店になることを承諾した場合には、現在の建物の賃借権をその会社に譲渡するかまたは転貸するかしなければならないことになるでしょう。家内は、現在のままで営業を続けたほうがよいし、もし会社というほうが税法上あるいは営業上有利だという事情があるなら、独立に自分の名前で会社の設立手続をとったらどうかといっていますが、独立の会社を設立した場合にも、現在借用中の建物で営業していくわけですから、同様の法律問題がでてくるように思われます。どうしたらよいでしょうか。
借家の場合も、借地の場合と同様に、民法六一二条の原則により、借家権(賃借権)を譲渡、転貸しようとするときは家主の同意が必要とされています。しかし、この点も借地の場合と同様ですが、判例では、家主に対する信頼関係を破壊しないと認められる特別の事情があれば、譲渡、転貸でも借家契約は解除されない、ということになっています。ただ、借地のように、建物買取請求権や裁判所の許可のような立法上の措置は、とられておりません。借家権の場合には、実際に問題を生じているのは譲渡の場合よりも転貸の場合のほうが多いので、転貸を中心に説明します。

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借家権の譲渡、転貸には家主の承諾がいるたてまえになっていますが、信頼関係を破壊しないと認められる特別の事情があれば、無断譲渡、転貸にもかかわらず借家契約は解除されないことになっています。本問の場合、有力会社のなかに吸収されるべきか、小さくとも一国一城でいくべきかという営業政策上の悩みですが、ここでは、それにともなう営業建物の賃借権の行方について説明しておきましょう。
まず、有力会社のなかに吸収されますと、従来の個人営業から会社営業に変わるわけですが、そのさい、営業用建物の賃借権をかりにそのまま継続使用でいくことにしますと、結局賃借権の譲渡または転貸の法律関係を生じますが、ここでは転貸として説明しましょう。
転貸の場合には、支店長となる本人は、依然として借家人名義を保持したまま、その建物だけを会社に貸すわけですから、その点では転貸人となります。しかし、これは単純な転貸ではなく、その建物は、原則としてその会社の本社の営業方針にもとづいて利用されることになると思います。問題は、この利用方法の変更の程度です。従来の個人営業をしていたときと、会社の支店として営業するにいたる場合とで、その建物の利用方法に著しい変更があるかどうか、がまず第一の問題になります。おそらく、従来よりも営業が盛んとなるでしょうから、建物の利用効率も高くなり、わるくいえばそれだけ建物がいたむということもありえます。しかし、大会社の場合には、個人営業にくらべて、建物の保守に投ずる資金量も少なくないと思われますので、相対的にみて、建物の価値はむしろ上昇するとみていいのではないでしょうか。さらに、家賃は、転貸人たる個人の資格で家主に提供するわけですが、事業も盛んとなるでしょうし、本社からの財政的な支援も期待できるわけですから、家主に対する賃料支払能力もまた高まるとみていいと思います。このような観点からみますと、家主に対して有利にこそなれ、不利になるおそれはないと推測されますので、その点からは信頼関係を破壊するとは認められないように解されます。
もっとも、従来の賃借人は、個人として賃借人名義は保留しますが、建物の利用は支店長という肩書のもとにおこなうわけで、その点では、いわば二重人格者的な地位に立たされます。この場合、その会社のなかにおける発言権はそれほど高いものではないでしょう。じつはここに、多少、信頼関係に関する問題がからむおそれがあります。いいかえると、一旦会社組織に組み込まれ、営業用建物が転貸されることになると、こんどは、賃借人個人の資格だけで簡単に賃貸借を終了し家主に建物を返還することがむずかしくなるからです。もう少し進めていいますと、支店の営業を左右するのは本店の重夜会の決定ということになり、その意味では、個人としての建物賃借人はほとんど決定権というものを奪われますので、家主との関係に個人的な要素が加わっていた場合には、家主との信頼関係に微妙な影響を与えることが考えられます。この点から、家主に対する信頼関係を破壊するという意見もでてくることがありますから、注意しなければなりません。
次に、独立法人化の場合を考えてみましょう。この場合にも、借家を譲渡する場合と転貸する場合とが考えられますが、転貸の場合を中心に説明しておきましょう。
特に、有力会社に吸収される場合との違いは、従前の賃借人が新会社の実力者として残りうる可能性があるということです。したがって、従前の賃借人が、個人として賃借権を留保するとともに、新会社の社長であり、その結果、家主に対する信頼関係はほとんど問題となるほどの影響はないと考えてよいでしょう。したがこの場合のメリットは、個人としての賃借人が新会社から建物転貸の収益を入手することに定点があるだけで、とりたてて複雑な問題は発生しないと解してよいでしょう。
もっとも、このような単純な転貸の場合でも、形式的にいえば新会社は、従前の賃借人個人のほかに、家族や友人、知人、ときにはまったくの他人などの役員が設置され、そこではいわば合議体によって運用されることになるでしょうし、必ずしも従前の賃借人だけの意見で行動できるわけではありませんから、ときには見解の対立や役員会の分裂等をきたし、個人営業の時代にくらべると営業の円滑さを欠き、そこから家主の不信感を買うようなこともないとはいいきれませんから、多少の注意は必要でしょう。

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