借家の増改築

建物一五坪・土地三〇坪の借家に一〇年前から居住しています。子供が小学校の四年生になりそろそろ勉強部屋が必要になりましたので、三畳または四畳半程度の子供部屋を増築したいと思っていますが、家主の同意を得なければでぎないでしょうか。もし家主が同意しなかった場合には、裁判によって増築を認めてもらうことはできないものでしょうか。あるいは、建物に接着しないで、庭に四畳半程度のプレハブ式の勉強用ミニハウスを建築する場合は、どうでしょうか。
借地とちがい借家の場合には、もともと他人所有の建物ですから、みだりに増改築をすることはできません。借地のように、裁判所の許可によって増改築をするという途もありません。しかし、今日のような深刻な住宅難のもとにおいては、借家の増改築をおこなっても、とくに家主の利益を侵害することもなく、したがって、家主に対する信頼関係を破壊しないと認められる場合には、例外的に増改築をすることは可能だと解されます。反対に、家主の側からいいますと、家主に対して特別の不利益を及ぼすようなおそれがない場合には、借家人が無断で増改築をおこなったからといって、借家契約を解除すれば、その解除は権利濫用になったり信義則違反となったりするわけです。
借家の増改築が家主の利益を侵害するおそれがある場合というのは、建物に回復できない損害を与える場合です。本問の場合、もし四畳半の一室をつけたすことになりますと、既存の借家の柱にノミで穴をあけて接合することになるでしょう。その点で、家主からみると、建物を損傷させられたという気持になることがないとはいえません。もっとも、そのような増築建物を、家主に将来、借家立退きのさ際に贈与するという予約でもとりつけていれば、家主もおそらく増築に異議を述べないだけでなく、あるいは内心歓迎しているかもしれません。しかし、借家人としては、その増築建物を将来家主に買い取らせることができるかどうかということを気にしながら増築する場合には、家主としても内心抵抗を感ずるにちがいありません。

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土地

増改築は、それ自体が造作とはちがいますので、将来、借家立退きの際に買い取らせたり、あるいはその費用を有益費ないし必要費として請求することも、通常は困難だと思われます。また、増改築によって既存の借家に損傷を加えても、将来、借家立退きの際に、原状に回復して立ち退くことができれば、家主にとって損害はないといえます。しかし、かりに既存の建物に接合する場合でも、したがって、とうぜん既存の建物の柱や外壁の一部を取り壊したりする場合でも、増改築の建物の外観がとくに見苦しくなったとかいうような事情がない場合には、将来家主にその増築部分を買い取らせることができるかどうかは別として、増改築行為それ自体を非難し、借家契約を解除することは、信義則上許されない場合が多いと解されます。
その意味からいうと、既存の建物に接合せず、庭先に独立の小さなプレハブ住宅を設置するのは、まず信義則に違反しないと解していいと思われます。つまり、このようなプレハブ住宅は、解体も容易であり、借家人が将来立ち退く際に解体して持ち去ることができ、家主にはほとんど損害を与えるおそれがないからです。
なお、増改築によって、その分だけ、例えば借地契約的な法律関係に転化するようにみえ、そこからその分の地代を支払わなければならないようにみえるかもしれません。しかし、もともと家賃のなかには、その建物の敷地たる土地の地代相当額が経済上おりこまれているはずですから、増改築によって土地を特別に使用する状態が発生しても、従前の借家敷地内であれば、特に地代を支払う必要はないと考えていいのではないでしょうか。もっとも、借家が密集していて、その敷地利用関係に明確な境界が設定されておらず、数戸の借家が共同して同一敷地内にあるような場合には、増築によって土地の独占的使用部分を拡大することは原則として許されないと解さざるをえないことが多いでしょう。
増改築でも、住宅ではなくて店舗となると、事情はかなり違ってきます。店舗の場合には、初めから店舗向けの建物として建築されていることが多いため、その建物内部の模様替えはほとんど自由にできるのが慣行になっています。契約書のなかには、特にそのことをうたっているものがありますが、仮にその旨をうたっていなくても、店舗の場合にはかなり自由な内部の模様替えができると解していいと思います。しかし、住宅用建物を無断で店舗に改装することについては、原則として許されないと解さなければなりません。もっとも、住宅用建物の玄関先を改装して小営業を始めても、立退きの際に元通りに建物を回復することができれば、例外的に信頼関係を破壊しないと認められることもあります。
ひとくちに造作といっても、実は二通りのものがあり、法的にはまったく違った手続でその費用を回収することになります。もっとも、費用の回収ができない造作もありますが、いちばん大事な区別は、造作のなかで、既存の建物に所有権が吸収されず、独立しているものと、建物に所有権が吸収され、独立の所有権ではなくなってしまうものとの違いです。たとえば、クーラーを 建物にはめ込んでも、クーラーという動産の所有権は建物に吸収されず、残ります。これに対し、流し台や風呂場を増築した場合には、造作といっても、建物の一部に化体し、所有権が建物に吸収されてしまっているわけです。洋式便所に改造した場合にも、もちろん建物の所有権の一部です。セントラルヒーティングなどを設置した場合にも、建物の所有権に吸収されているとみなければならないことが多いでしょう。ところで、少し形式的な理屈めきますが、造作を家主に買い取らせるといっても、それは結局売買ですから、その造作の所有権が借家人のものである場合でなければ、家主に売りつけるという形はとれません。したがって、造作のうちで、所有権が建物に吸収されずに残っているものだけが、買取請求の対象となります。これに反して、建物に接合し、分離することが困難になっている物置や風呂場などについては、建物の価値を増加させたということで、その増加させた部分を金銭に見積もって支払えという請求をすることになります。
借家法の規定している造作買取請求 権は、造作が独立の所有権として残っている場合です。もっともこの場合でも、すべて買取請求ができるわけではなく、それらの造作を設置するさい家主の承諾を得ていたものにかぎる、というのが借家法の原則です。しかし、この原則を厳格に解釈すると、社会通念上設置することが常識となっているような造作でさえ、家主が承諾を拒絶すると設置できないことになる危険もあります。そのような場合には、家主の承諾権という、権利の濫用として、借家人は無断で設置しても借家契約を解約されないと解していいのではないでしょうか。また、なかには、造作の設置に関する家主の承諾をあらかじめ書面で求めるよう義務づけている借家契約書もみうけられます        この場合には、書面でそのような承諾要求や承諾そのものをさせることによって、将来立退きのさい造作買取請求権を放棄し、その造作を家主に無償で譲渡(贈与)す るよう身勝手な条項を押しつけるおそれもないとはいえませんから、注意しなければなりません。そのような条項は無効となります。
他方、そのような造作を買い取った家主の立場も考えてやらなければならないことがあります。例えばある特定の事業の店舗向けにしか必要のないような特殊な造作を設置したり、借家人の好みで特殊な色ガラスを住宅にはめ込んだような場合、かりにそれを家主が買い取っても後継借家人に利用させる途があまりないような、特殊な個人的用途にしか適しない造作については、たとえ事前の承諾によって設置したものであっても、造作買取請求権は借家人に認められない、という判例もあります。
これに反し、建物の所有権にその所有権が吸収されているような造作は、造作というよりはむしろ有益費ないし必要費として、単純な費用の回収手段だけが残されていることになります。この うち、有益費については、借家を立ち退くさいその価格の増加が現存している部分について請求することができ、また必要費の場合は、費用を支出したときただちに請求することができることになっております。
家主がこのような有益費や造作買取代金を支払わない場合に、借家人は立退きを拒み、建物の占拠を続けることがで きるかについては、問題があります。

土地
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