借家の修繕

借家契約における修繕の問題も、借地契約における修繕の問題と共通した面がありますが、借地の場合には自分の持家であるのに対し、借家の場合には他人の家であるという事情があって、具体的にはやはりいろいろな違いがでてきます。まず共通していえることは、修繕を必要とするに至った事情が、家主に起因すれば家主が、借家人に起因すれば借家人が、それぞれ修繕義務を負うということです。そこで、そのような修繕を要するにいたった事情がどちらの側にも起因していない場合、いいかえると、家主、借家人双方の故意や過失、責に帰すべき事由にもとづかない場合を考えてみましょう。
修繕を考える場合に、その修繕の規模がまず注意されなければなりません。通常、修繕といいますと、常識的には、大中小の三種類に分けることができると思います。大修繕というのは、建物の土台や柱などを取り換えたり、屋根を天井板から下地板まで含めて全部葺き替えてしまったり、外側のはめ板を全部はずしてモルタル塗りに替えてしまったりするような場合です。また小修繕というのは、畳表を替えたり障子を張り替えたりする程度です。これらに対し、中修繕というのは、通常の屋根の瓦やトタンの葺替え、風呂場のコンクリートの塗替え、上下水道のパイプの交換、排水溝の修繕、煙突の修繕、台所が水気で朽廃した場合の補修工事などになるでしょう。
ところで、このうち、小修繕が借家人の 負担になることは、だいたい社会慣習となっております。反対に、大修繕は、それが建物の自然の経過によって必要とするに至った場合には、必ずしも家主の義務とされておらず、朽廃にいたるのがふつうです。したがって、修繕義務、費用負担でいちばん問題となるのは、中修繕ということになります。もっとも、家主の修繕義務とか借家人の修繕義務とかいっても、反対にどちらにも修繕に対する権利というものもついているわけですから、その点も注意する必要があります。

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土地

台風で大水がでて、住んでいる木造アパートの床上まで浸水してしまいました。水が引いたあと、いつまでたっても家主が修繕にきませんので、修繕を請求したところ、台風という不可抗力が原因だから家主に修繕義務はない、借家人が自分の費用で修繕するのが筋ではないか、といってとりあってくれません。この場合はどうなのでしょうか。
この場合は、床上浸水による建物の修繕だから、畳表の張替えだけでなく、畳の床までも交換しなければならないでしょうし、また、土台や床板その他に被害が及んでいるものと推測されます。したがって、いわゆる中修繕にあたるといえるでしょう。本問では、その被害が台風による出水が原因だということで、不可抗力にあたるか否かがまず問題となりますが、台風ということですから、不可抗力にあたる事情はないと推定してよいでしょう。さてそうなりますと、修繕義務はとうぜん家主の側にあるということになります。
家主に修繕義務があるにもかかわらず、家主がその義務を履行しないとき、つまり、家主が長屋を頼んだり大工を頼んだりして修繕作業に着手しないときには、やむなく借家人が自分で畳紙や大工に依頼し、修繕費用を払ったあと、その費用を家主に請求することができる、と解してよいでしょう。もっとも、正式にいえば、裁判所に訴えを起こし、判決を得てはじめて畳屋に依頼したり大工に依頼したりできる段取りですが、本問のように、畳がいたんだとか床がいたんだという場合には、即刻日常の生活に支障がくるわけですから、発生する損害を予防するため、借家人が自分で畳屋や大工に依頼することも可能だと解していいでしょう。その場合には、それらの畳屋や大工に支払った出費を、必要費あるいは事務管理費として家主に請求したり、家主の義務不履行、債務不履行にもとづく損害賠償として請求したり、家賃から差し引いたりすることも、可能だと解していいでしょう。この場合にも、あくまで本訴(正式の裁判)を求めることにし、その裁判中のために仮処分によって代替執行をおこなうということが、ほんとうは正式なやり方ではあるのですが、実際には、そのような正式なやり方の手続をふまなくても、借家人が客観的に相当な修繕を依頼して完成し、適正な報酬を畳屋や大工に支払い、それを家賃から差し引くことは、信義則上許されると解してよいでしょう。
反対に、家主の立場からみた場合、家主は権利として修繕をおこなうこともできます。もともと借家は家主の所有建物ですから、家主は、自分の保有する財産の管理手段として、借家人の意思に反しても修繕をおこなうことができます。その場合には、借家人にとってもっとも損害の少ないような方法を講じながら修繕する義務が家主にあることは、いうまでもありません。ときには、一時借家人を立ち退かせて修繕しなければならないこともないとはいえませんが、その場合の、借家人が一時立ち退いている費用は、修繕を要するにいたった原因が誰にあるかによってきまります。建物の建築が初めから欠陥をもっていたような場合には、それは家主の責任に帰着することになりますから、家主の費用で一時立ち退かせ、かつ立退先での滞在費を負担しながら、修繕作業を完了しなければならないでしょう。しかし、不可抗力によって修繕を要するにいたった場合には、借家人の一時退去にともなう費用は借家人の負担とならざるをえないことが多いと解されます。あるいは本問のように、不可抗力とはいえないが、なおかつ家主の責任によって生じたのではない場合も、同様に解することになるでしょう。家主も借家人も、河川管理者たる国や自治体に水害の補償を求めることは可能です。
なお、借家契約書のなかには、ときに、「いかなる事情があっても、修繕はつねに借家人の負担とする」とか、「借家人が修繕費用を負担する」というように、修繕の義務をつねに借家人に転嫁する特約が書かれていることがあります。このような特約は、それ自体でただちに無効だということはできませんが、通常の借家関係の場合には、賃料との相関関係において、その合理性が判断されなければなりません。いいかえると、修繕費用が借家人に負担させられていることによって、賃料が低額であるとか、その他なんらか借家人に有利な条件が付加されている場合には、その修繕義務の借家人への転嫁は合理性がないとはいえません。しかし、家主の一方的な押しつけであることが少なくないので、その場合には、その限度において、その条項が公序良俗に違反し無効となることもないとはいえませんから、注意が必要です。

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