借地権の譲渡と転貸

借地権の譲渡を問題とするのは、そもそも借地権そのものが財産的価値をもっているからです。今日では、借地契約が結ばれて土地が借他人に引き渡されますと、地方によってちがいますが東京などでは、その土地の価格の八割が原則として借地人に帰属すると解されています。借地権の価格は地価の八割などといわれるのはここに理由があるわけです。これに反して、地主に残った二割の価格の部分を底地価格とよんでいます。借地人としては、借地権の価格を回収しないと、転居先で新しい借地を入手するための権利金の支出に困窮することがしばしばありますので、なんとしても、借地権そのものを譲渡する必要にせまられます。
例えば、三・三平方メートルあたり二〇万円の土地を九九平方メートル(三〇坪)借りて、その上に約五〇平方メートル(約一五坪)の建物を建築し、一〇年経過したとします。この場合、借地権の価格は、六〇〇万円の地価の八割にあたる四八〇万円相当であり、また建物の価格は、建築費が坪あたり七万円として約一〇〇万円ですから、この借地権と建物の合計額は、五八〇万円ぐらいになります。しかも、借地人としては、ただ建物だけを処分したのでは、建物の買主に借地権が移転しないことになり、建物を取り壊さなければならなくなりますから、建物の処分価格は結局解体した木材の値段に帰着することになり、一〇〇万円の売買価格を有する建物ですら、木材の価格にすればそれこそよくても数万円にすらならないことが考えられます。このため、借地権を建物と合体して処分する必要はとくに強いといわなければなりません。
ところが、民法では、借地権が賃借権である場合には、賃貸人(土地所有者)の承諾がないかぎり譲渡できないことになっています。ここからいろいろなトラブルが発生するわけです。

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土地

公害の激しい都会に住んでいるため、子供が小児ぜんそくになってしまい、家族の健康に心配が絶えません。そこで、建物を処分して地方にひっこみ、むこうで新しい職業につきたいと思っています。ところが、地主が借地権の譲渡に同意してくれず、困っています。いっそ、建物は売っても土地は又貸しにしておくというわけにはいかないのでしょうか。
借地人が借地権を譲渡し、借地権の価格を回収する必要があることは、すでに説明したとおりです。本問の場合、借地人は田舎にひっこんで、いわば子供の転地療養をかねながら新しい職業を開拓しようとするわけですから、いま流行の脱都会ということでしょう。これからはこのようなケースが増加することが予想されます。ところが、序説で説明したように、賃貸人(土地所有者)の承諾がないと賃借権の譲渡ができません。これでは、借地人としては、建物および借地権の譲渡、処分ができなくなります。
本問では、借地人は借地権の譲渡をあきらめ、むしろ又貸し(転貸)によって解決できないかと考えているようですが、たしかに、又貸し(転貸)というのは、借地人自身が借地人たる地位を保持したまま、土地の使用を第三者にまかせるわけですから、地主に対して、特別に不利益を与えるおそれは、譲渡に比べていっそう少ないといえます。といいますのは、借地権を譲渡してしまいますと、借地人が完全に入れかわりますので、新しい借他人が、例えば地代の値上げや増改築等に関し、賃貸人(土地所有者)とのあいだにトラブルをひきおこすおそれが、まったくないとはいえません。また、地代の支払に関する誠意の問題もあるでしょう。ところが、又貸し(転貸)の場合には、いままでどおりの借地人が借地人たる地位にとどまり、ただ又貸し(転貸)をするだけですから、又借入のほうは、いままでの借地人とのあいだで又借契約(転貸借契約)を結ぶことになります。このような転貸借契約を結んだ場合、貸主たる他位にたつのは従来の借地人で、これを「原賃借人」といい、又借入を「転借人」とよびます。そうして、もとの賃貸借のほうを「原賃貸借(または基本賃貸借)」とよぶことになっています。
しかし、このような転貸借関係では、地主に直接接触するのはもとどおりの原賃借人ではありますが、土地が転借人によって利用されるという関係は、譲渡の場合と実質的な違いは少ないともいえます。このため民法は、譲渡と転貸を一緒にして賃貸人の承諾にかかわらせたわけです。
そこで、本問の場合、どうしても地主の承諾がえられず、かつ、あとに述べるような特別の手続やトラブルを望まないとすれば、建物そのものの売却処分をあきらめ、建物を賃貸するという途があります。この場合には、建物そのものを賃貸するわけですから、もとの借地人は、いねば家主として借家人から家賃を徴収するだけの関係になり、したがって、建物所有権と借地権はもとの賃借人たるあなたに帰属したままの状態になります。やかましくいえば、これでも借地権の転貸といえそうな余地もないではありませんが、建物そのものの所有権が借他人に保留される結果、これについては借地権の譲渡、転貸のような困難な問題は生じないことに、判例、通説できまっています。したがって、建物そのものを転貸することは、賃貸人たる地主の承諾なしに自由にできます。地方にマイホームをたてる場合、住宅ローンを利用すれば、もとの建物を処分せず、家賃を徴収するだけでも、ローンの月々の返済額に充当することがかなり可能であり、必ずしも売却処分より不利益だとはいいきれない面があります。

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