請負工事の途中における解除

請負人に建物の増築工事を依頼しましたが、請負人は契約どおりの工事を施行しておらず、工事した部分は不適当なものです。もうこの請負人に仕事をしてもらうのが嫌になりました。注文者は、請負契約を途中で解除できるのでしょうか。請負人は、工事内容の変更は施工上やむを得ないものであったと主張していますが、もしその通りであるならば、どういうことになるのでしょうか。私たちの請負契約書はごく簡単なものであって、これらの点については全然触れてありません。そして、請負契約を中途解約した場合、支払済みの代金や工事完了部分の所有関係はどうなりますか。
一般的に、契約が成立してその効力が発生した場合、契約当事者はその契約を誠実に履行すべきであって、後になり都合が悪くなったといって勝手に契約を解除することはできません。契約を解除できるのは、それなりの理由があって解除権が認められる場合です。そして、解除権には法定解除権と約定解除権があります。その他、解除権によらない契約消滅原因として、解除契約(合意解除)および失権約款があります。合意解除は、約定解除権のように、あらかじめ解除権を留保する特約があったわけでなく、したがって解除権の行使をするのではなくて、あらためて契約を解除することに双方が合意する場合です。失権約款は、契約に付随して、債務不履行の場合に債権者の意思表示なしに当然に債務者が一定の権利を失う旨を定めた約款です。これらは、一種の契約として、原則的にその効力が認められています。

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建築請負契約において、注文者が中途で、つまり仕事未完成の間に解除できる法定解除権としては、特殊なものを除き本問に関連するものだけをあげますと、注文者の任意の解除権、請負人の債務不履行を理由とする解除権があります。
注文者の任意の解除権は民法六四一条によるもので、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも、損害を賠償して契約を解除できる、とされています。請負は注文者の必要に応じて仕事を完成するものであるから、注文者にとってその仕事が不必要になったときにまで請負工事を継続させることは、注文者にとっても社会経済的にみても無意味なことであり、請負人に損失さえ与えなければ、注文者に任意に契約を解除させてよいだろう、というのがその立法趣旨です。だから、本条による解除は、その性質上、請負人の契約不履行を要件としません。
債務不履行に基づく解除権は契約一般の効力として、債務不履行、正当な理由がないのに債務の本旨に従った給付をしないことの場合には、債権者に契約解除権と損害賠償請求権が認められています。本問のように不完全な試行しかしなかった場合は不完金談行にあたるわけですが、不完全履行の場合には、履行された不完全な給付が追完を許す場合は履行遅滞に準じ、不完全な給付が追完を許さない場合には履行不能に準ずると考えられています。履行遅滞の場合には、相当の期間を定めてその履行を催促し、もしこの期間内に履行しないときには契約を解除することができ、履行不能の場合には、債権者は直ちに解除できることになっています。
法定解除権とは無関係に、当事者が契約で何々の場合にはこの契約を解除することができるというように解除権をあらかじめ留保しておきますと、この解除権を行使することによって契約を解除することが原則として認められています。請負代金値上げの協議に応じないときには契約を解除できる旨の約定はその例です。
解除についての特約がないのですから、約定解除権はなく、法定解除権によることになります。
「契約どおりの工事を施行しておらず、工事部分は不適当なもの」ということであれば、不完全履行ということですが、追完すなわち補修が可能であるかどうかによって区別されることは前述したとおりです。追完可能な場合なら、相当の期間を定めてその履行を催促しその期間内に請負人が補修しない場合でないと解除はできません。容易に補修できない状態になっておれば、建前としては履行不能として直ちに解除できることにはなっていますが、不適当といってもそれが軽微な工事ミスで一般に受忍できるような程度のものであれば、解除権の行使は信義則上許されないと解すべきでしょう。その場合には損害賠償請求が認められるだけです。これに関連する参考例として、建物工事の施行に多少の瑕疵があるとしてもそれがきわめて軽微な場合、その瑕疵を理由に代金の支払を拒絶することは信義則に反すると認められた事例があります。請負人が契約どおりの工事をしないで工事内容を変更したのは施工上やむをえないものであった、という主張がもし真実であるならば、請負人の債務不履行とはいえません。債務不履行の責任が生ずるには、債務者の責めに帰すべき事由が必要だからです。四会連合協定の約款の考え方でいえば、施工上やかをえなかった場合でも、請負人は、契約どおりの施工が適当でない旨をあらかじめ注文者に通知すべきであり、通知しないで工事を変更したことについてやはり落度があるというべきでしょう。もっとも、注文者が旅行中であるとか遠隔地にいるとかなどの特段の事情があれば話は別です。また、 客観的にみて、一方でやかをえない事情があり、他方で、一般的にその程度の工事変更については注文者の事後承認が得られるであろうと思われる場合であれば、請負人を責めることはできません。この諸事情の判定には、すべて信義則が基準になると考えて下さい。もし信義則という判断基準からみて請負人の責めに帰すべき事由がないならば、債務不履行にはならないので、契約解除権もなく、また損害賠償請求権も認められません。
それでも、いまの請負人に嫌気がさしたので他の請負業者に頼みたいというのなら、民法六四一条に規定されている注文者の任意の解除権を行使して解約することになりますが、この場合には、請負人に対して損害賠償、すでに支出した実費と、工事の取止めによる直接損害、それに、工事完了のときに得たであろう利益の賠償をしなければなりません。
一般的に契約の解除は、解除権者の一方的な意思表示によって、契約が当初から締結されなかったと同様の法律効果を生じさせるものです。請負契約が解除されるときも、すでに履行された部分については、原状回復義務および利得償還義務が認められることになりますが、建築請負契約については、もっと問題を具体的に考えてみる必要があります。
建築請負契約の中途解約によって、注文者が、請負人に対して未完成の出来形部分を原状回復義務によって撤去ないし取壊しをさせることは、場合によって、請負人に隔であるばかりでなく、社会経済的にみて大きな損失になります。また注文者としても、これまで出来た部分をもとに他の請負業者に工事を続行させ、当初の期待どおりの工事目的物を完成させることが、目的にかなう場合があるでしょう。つまり、建築請負契約では、解除の遡及効を認めるのでなく、将来に向かって契約の効力を失わせる解約告知と考えるのが妥当な場合があるのです。合意解除ですと、そのへんの問題を合意で合理的に処理することが可能です。合意解除のケースについて、「当事者双方の履行状況を合む合意解除時における諸事実によれば、当事者双方ともに施行済の工事部分及び支払済の代金につき原状回復及び利得の償還を請求せず、各相手方において履行を受けたままに取得することの黙示的合意がなされたものと推認するのが相当である」と述べている判例があります。
ちなみに、標準請負契約約款はすべて、出来形部分を取り壊さない方向で解除に伴う措置を考えています。

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