紛争処理

不動産売買においては他の商品売買とは異なり、目的物の特殊性に応じたトラブルが、売買契約の当事者間で、あるいは買主と隣接する第三者との間で、しばしば発生します。ここではそれらを対内的トラブルと対外的トラブルに分けて説明しましょう。
売買当事者間では、契約締結以後に起こりうる紛争を未然に防止するために契約書を作成するはずです。ところで、その契約書はたてまえとして当事者の合意に基づいてて作成されたものとなっていますが、現実には、不動産業者や仲介業者が予め作成していた約定書に買主が記名捺印するだけという場合が多く、明確な契約意識のないまま取引が進行していくなかで、契約条件と現実が異なったり、目的物になんらかの瑕疵が発見されたりして、紛争が生じてきます。多くの紛争が売主の債務不履行や瑕疵担保責任に関していることです。
ここでは特に、売主の瑕疵担保責任の代表的事例として、行政上の用途判限や負担についてふれておきます。これには、都市計画区域内の土地についての用途制限と、それとは別に、国土の保全と合理的利用を確保、増進するため、その土地の現況、利用目的などに応じて定められる土地の用途制限とかあります。前者は、公共施設の建設予定地に課せられる制限、市街地の開発事業や再開発事業の予定地についての制限、都市計画区域についての用途地域、地区割または地帯制による制限に分かれ、それぞれに根拠法令があります。また、密集市街地の防止対策として建築基準法により建ぺい率が定められていたり、場所によっては建築物の高さの制限があったり、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(容積率)が規制されていたりしますから、注意が必要です。これとよく似たものに、宅地造成等規制法による規制があります。これは分譲地を購入する場合に特に重要で、同法に基づく造成基準に合格していなければその上に建物を建築することができませんから、宅地造成の検査済証を確認して契約手続に入ることが必要です。
ところで、造成された分譲地のうちどこを道路が通り、誰にその道路部分の所有権が帰属するかは重要な点であり、紛争の起こりやすいところです。分譲業者が道路施設まで分譲面積のなかに含めて販売している場合には、購入した分譲地の面積が広いと思っていても、それが道路負担部分に指定されているかぎり宅地として利用できなくなりますから、はじめにどこを道路が通るのかをはっきりさせておく必要があります。道路負担部分が契約書に記載されておらず、口頭の説明もなくてその分まで購入したときには、売主の担保責任の問題となります。

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土地

分譲地の売買で一般的に注意しなければならない事項に、「地目」の確認があります。登記簿上の地目が「宅地」や「山林」となっておれば問題ありませんが、「田」「畑」「牧野」となっていれば、これらは農地としての取扱いをうけますから、すぐには建物を建築することができません。これらの地目の土地に建物を建築することは、農地法に基づく農地の宅地への転用許可があってはじめて可能だからです。このためには一定の手続をふまなければなりませんので、あとで問題が起こることのないよう前もって地目の確認をしておく必要があります。さらに、登記簿上の地目が「宅地」となっていても、戦時中からその土地が農地として使用されている場合には、そこは農地法の適用をうけますから、登記簿だけによる確認では十分とはいえません。この場合には、農業委員会等に問いあわせてみることも必要です。
さらに困難な問題が生じるのは、農地を宅地に転用することにつき合意が成立し、知事の許可を条件とした農地の売買契約において、買主がその許可を受ける前に第三者に転売した場合、転売を受けた者が元の所有者に許可申請への協力を請求しうるかです。判例によれば、許可前の農地の売買契約上の買主の地位の譲渡については、農地所有者と転買人との間に、用途の売買についての合意が認められ、かつ、共同して知事に対し許可申請をなすことについての合意がなければなりません。このように農地を知事の許可が出る前に転売するためには、取得の要件につき厳しい条件がつきますから、特に注意する必要があります。
地目とならんで紛争の起こりやすいもの に、境界の確定、確認があります。これについては、売買の当事者問だけでなく、買主と隣接買主との間でもトラブルが発生する可能性があります。
対外的トラブルの例として大別して次の三点が重荷となります。
第一は、相隣関係の規定です。ここでに特に袋地の囲繞治通行権と給排水設備の共同利用が問題となります。後者は、マンション等の区分所有建物における共同管理等において特に重要となってきますが、管理、修繕等は管理規約に基づいてなされます。
第二は、公害問題です。大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、悪臭をはじめとして、日照、通風妨害、地盤沈下、地下水涸渇、眺望阻害、電波障害等と多岐にわたっています。宅地を買って建物を建てようとする場合については、近時の最高裁判決でも認容された日照権の問題が重要となるでしょう。
第三に、住環境維持のための協定が売買契約書の一項として挿入されていた場合、例えば、「買主は、本分譲地の他の購入者と相互に協力して、分譲地の住環境を維持するよう努力する。買主は、本土地の利用形態について第三者から異議の申立てを受けたときは、買主の責任と負担においてこれを解決する。また、買主が本分譲地の他の土地の利用形態について異議あるときは、買主はその土地の所有者と協議してこれを解決する」、この条項の拘束力、ひいてはこの条項をもとにした協定書の問題があります。
以上のように、住宅取引にまつわる紛争はいろいろな角度から発生してきます。その他、売買契約書に定められていない事項についても、種々のトラブルが発生する可 能性があります。そこで、当事者間においてスムーズな紛争解決をはかる一手段として、信義誠実条項が挿入される場合があります。この条項は、契約書全体について定められる場合と、契約条項以外の事項について定められる場合とがありますが、いずれにせよこれは、紛争が発生したとき当事者間で話合いによって合理的解決を導き出そうとする点においては同じです。問題は、この話合いによる解決なるものが、不動産取引において豊富な知識と経験をもった売主と知識や経験に乏しい素人との買主との間で、昨今の住宅供給状況、おいてなされるとき、はたして合理的なものでありうるか、ということです。もちろん、この種の条項が戦前、戦中の官庁土建請負契約などにおいて果たしてきた役割と同じものをここに見出そうとするのは早計ですが、微妙なところで片務性の強い解決を強いられている場合も少なくないようです。しかし昨今では、消費者パワーや各種の消費者保護法を中心に事態が改善されつつあることも事実のようです。

土地
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