契約の解除と損害賠償

建売住宅を購入する契約を結び、手付金、第一回内入金と、指定日までに支払いましたが、第二回内入金の支払につき、少々遅れる旨を売主に通知し、猶予してくれるよう頓みましたところ、売主は、「当事者の一方がこの契約の条項の一にたりとも違背したときは、理由の如何を問わず、相手方はなんらの催告を要せずに即時解除することができる」という条項をたてにとり、解除して手付金を没収すると言ってきました。第二回内入金八〇%を期限までに用意でき、残りも一週間ぐらいで支払うつもりなのですが、このままいくと解除されることになるのでしょうか。
不動産の売買では、売買代金額が相当高額にのぼるため、一括して支払われるよりも数回に分割して支払われる場合が多いようです。したがって、数回にわたって債権の回収をはからなければならない売主としては、それを確実に回収する手段として、本問のような無催告解除条項を契約書の一部に入れておくのです。民法の規定からすれば、履行遅滞に基づく契約の解除は、当事者の一方が履行遅滞におちいったとき、相手方が相当の期間を定め、その履行を催告し、もしその期間内に履行が行なわれなかった場合にはじめて契約を解除することができることになっていますが、この民法の一般原則を回避し、買主になんらかの義務違背があった場合、催告なしでただちに契約を解除しうる旨の特約を、無催告解除条項と呼んでいます。当事者間でこのような特約が結ばれていれば、それは当然に拘束力をもちますし、特別の事情がないかぎり、有効と認められることはいうまでもありません。
問題は、手付金、第一回内入金がすでに払い込まれ、第二回内入金の八〇%が用意でき、残りも一週間たらずで調達できる場合にも、この特約が当然に適用されうるか、ということです。これを文言どおりの効力あるものとして放任しておけば、このような方法で一部の悪徳不動産業者が私腹をこやす結果にもなりかねませんので、慎重な配慮が必要です。
そこで、このような場合には、無催告解除の要件をもう少し厳しくし、その濫用を防ぐことが考えられます。すなわち、履行遅滞に基づく解除権が発生するかどうかについては、当事者の特約そのものが重視されねげならないことはもちろんですが、同時に、解除にいたるまでの当事者の態度その他の具体的な諸般の事情も考慮されぬばなりません。本問の場合、前もって第二回内入金全額の支払が少々遅れることについて売主に了解を求め、期限には八〇%を持参して残額について一週間の猶予を懇請し、受領を拒絶されたのでそれを供託したうえ残額に遅延利息を加算して一週間内に持参するなり、第二回内入金全額に遅延利息を加算して一週間内に売主のところへ持参するなりし、受領を拒絶されて供託所に供託したという事実が認められたとしましょう。そのような場合まで、売主の解除権が発生するとすれば、信義則上疑問といわざるをえません。このような場合には、売主の解除権の行使は解除権の乱用とみられ、売主の無催告解除は許されないと考えるべきものと思います。本問の場合には、第二回内入金の支払について上のような誠意ある態度をとっておくことが必要でしょう。しかし、大事をとるという意味では、二〇%にあたる金額をなんとかしてどこかから一週間だけ借りる方策を講ずるにしくにありません。
つけくわえておきさすが、判例においては、売買契約に基づく無催告解除条項が正面から論じられたケースはないようです。このことは多くの場合、このような条項の有効性が前提とされているからでしょう。よくみられる紛争に、賃貸借契約に基づく無催告解除条項の有効性をめぐる紛争があります。例えば、一ヵ月分でも賃料の遅滞があれば無催告で解除できるという特約につき、条項は、賃貸借契約が当事者問の信頼関係を基礎とする継続的契約関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定である、と制限的に解されています。この判断は賃貸借という継続的契約関係に関するものですが、一つの参考となるでしょう。

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土地

先日、土地を購入したのですが、売主は第三者にそれを売却し、移転登記をすませてしまいました。そうこうするうちにこの土地は、付近に工揚が建設されるという計画が発表されてかなり高説し、その後、公害反対の住民運動が激しくなって工場側が進出を断念したため地価は少しさがりましたが、それでも、私が売買契約を締結した時よりも高く、そしてまだ値上りの気配があります。売主にどの程度の損害賠償を求めることがでぎるでしょうか。
本問のように、売主がいったん売却した土地を第三者に重ねて売却することを、二重売買といいます。二重売買になると、先に移転登記を受けた者が優先し、先に売買契約を締結した者であっても、移転登記を済ました第二買主に対抗することはできません。本問の場合、売主は第二回主にすでに登記を移転してしまっているので、第一買主であるあなたに登記を移すことができませんが、これは、売主の責めに帰すべき事由によるものです。このような状態は、債務不履行の一態様である履行不能にあたり、買主は売買契約を解除することができます。買主が売買契約を解除しますと、解除の効果として、お互いに原状回復義務を負いますが、ここでは土地は第二買主のもとにありますから、この点あなたには関係ありません。ところで、解除権の行使は損害賠償の請求を妨げませんので、あなたは売主に損害賠償を請求することができます。履行不能の場合、売主の債務が履行されたならば債権者(買主)が得たであろう利益の全部を損害賠償とよび、履行に代わるべき損害賠償のことを意味します。そこで問題は、買主に補充されるべき賠償の範囲がどの程度になるかということです。このことは、本問のように、工場建設計画が発表されて高騰した土地が公害反対により下落した場合には、いつを賠償額算定の基準時とするかに密接にかかわってきます。ここでは便宜的に、本件土地の売買が履行不能となったときの時価を八〇〇万円、工揚建設計画が発表された段附の時価を一、〇〇〇万円、公害反対の住民運動により工場が進出を断念したときの時価を九〇〇万円と仮定して解説しましょう。
一般に填補賠償額算定の基準時については、判例の立場も一致せず、学説も紛糾しているところでありますが、近時の最高裁の見解によりますと、債務者(売主)が目的物を不法に処分して債権を履行不能にしたことに基づく損害賠償は、原則的には不能時の時価によるべきで、例外として、目的物が価格高騰を続けている場合には、債務者(売主)が履行不能時にこの特別の事情を知っていたか、もしくは知りえたとき、債権者(買主)は口頭弁論終結時の時価を債務者に請求しうる、としています。
ところが、本問のごとく、目的物の価格がいったん騰貴し、それから下落した場合には、基準時のとり方がさらに厄介な問題になります。これは中間最高価格についてどのように考えるかにかかってきますが、前述の最高裁判決は、価格が一度高騰してさらに下落した場合には、この騰貴価格による利益を債権者(買主)が催実に取得したであろうことの予見可能性を立証した場合にのみ認められるとしています。この判例の基本的態度は、価格総員という社会現象が民法四一六条二項の特別事情による損害に該当するという考え方に結びついていますから、目的物がいったん総員したのちさらに下落したようないわゆる中間最高価格については、騰貴価格による利益を転売その他の方法で確実に取得したであろうことの予見可能性を債権者(買主)が立証しなければならないわけです。
以上のことから、本問においては、あなたが売主に対して請求しうる填補賠償額は、本件土地の価格のピーク時にあなたが第三者に転売もしくはその他の方法でその価格による利益を碩実に取得したであろうと予見されたことを立証しえた場合には、一、〇〇〇万円で計算することとなるでしょうし、もしそれが立証できないとすれば、あなたは中間最高価格による賠償を売主に請求することはできなくなります。したがって、その他の場合には、填補賠価額はそれ以下となります。そこで、二重売買により本件売買契約が履行不能となったとき売主が、地価が騰貴しつつあるという特別の事情を知っていたか、もしくは知りえた場合には、口頭弁論終結時の時価九〇〇万円という計算による賠償をあなたは売主に請求できることになります。その場合、あなたは、その時点で目的物を転売して利益を得たであろうと予見されたことを立証する必要がないばかりでなく、あなたがそもそも転売を考えておらず自ら使用する目的で売買契約を締結したのであっても、時価九〇〇万円という計算による賠償を請求することができます。しかし逆に、売主が上記の特別事情を知らなかったか、知りえなかった場合に、填補賠償額算定の基本原則にもどり、履行不能時の時価八〇〇万円があなたに補填されることになります。

土地
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