売買代金の決定と契約費用

不動産業者の売り出している分譲地を購入し、いよいよ建築にかかることになりましたが、少し狭いようなので測量士に頼んで測定してもらったところ、契約書の表示面積よりも約五%狭くなっています。契約書のなかに、「売買土地の実際面積が後記表示面積と相違することがあっても、売主および買主は互いに売買代金の増減を請求できない」という文言がありますが、減額請求はできないのでしょうか。
分譲地の売買にかぎらず、土地の取引においては一般に、登記簿記載の面積と実測面積とがくいちがうことがよくあります。そこで、登記簿に従い地番や坪数を表示した売買において、これが数量指示売買に当たるかどうかが問題となります。
一般に数量指示売買とは、「当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買」をいいます。
ところで、土地の売買契約においては、前述のごとく、登記簿面積と実測面積とが一致しているとは限りませんので、坪数を表示しているからといって、それがその坪数の存することを確保し、その坪数を基礎として代金を定めたものとみなすべき実験則はない、との理由で代金の減額請求を認めないのが、古くからの判例の態度です。このような判例の傾向からすれば、表示商権と実測面積に相違があっても双方はだかいに異議を述べないとする契約条項は、判例の結論を確認した表現だともいえます。
ところが、判例といいましても、古くからの判例で問題になった土地の売買は、宅地の分譲というような場合のものではなく、登記簿面積と実測面積が必ずしも一致していないという一般の現実を前提としたものだとみることができます。分譲地の売買においては、あらかじめ売主は、当該土地の面積については正確な知識をもっており、表示面積が実測面積とくいちがうことは少ないのです。このように分譲地の売買では面積についての不確定要素が比較的少ないので、この場合にはむしろ表示面積は実測面積だと考えるのが一般常識に合致するという意味で、数量指示売買とみるべき根拠があるように思われます。
このことは若干の契約書のなかにも反映しています。例えば、本売買は実測面積によるものとします。したがって、実測の結果、本物件の面積に増減を生じたときは、売主の指定する日までに標記の一平方メートル当り単価で売買代金を精算します。という契約書もあります。
こうした点からすれば、本問のような約定文言については、疑問を持つことになることも根拠がないではありません。一般に契約書の文言は当事者の特約であって、双方の合意があったことを意味するでしょうし、その内容が公序良俗に反しないかぎり有効ということになります。そのような意味では、本問のような特約もまた有効ということになりましょうが、現実の契約書は、当事者の合意を文書化したものというよりは、一個の土地売買に伴う形式的な確認書といった役割しかもっていないことも少なくありませんので、このように分譲地の売買で数量不足に対する売主の担保責任を排除するような特約条項の効力については、場合によっては、問題がないとはいえません。
例えば近時の下級裁判所の判例ですが、山林の売買において、山林の坪数が公簿面積どおりにある旨の返事をうけ、後日実測する約束をし、代金を坪単価で算定したことを明示した事案につき、契約書に「本件土地の面積に増減ありたるときは、末尾の物件表示の記載によるものとする」という文言があっても、この文言はそれ自体意味が明確でなく、また上記の経緯からしても本件売買が数量指示売買でないことを示す趣旨ではないとして、原告の減額請求を認容した事例もあります。減額請求権の排除について売主に厳格な態度を示した一例といえましょう。
以上のようなことを念頭において考えてみますと、本問の減額請求権放棄特約は原則として有効だとしても、売買代金が一平方メートル当り単価に表示面積を乗じて算出してあるのに、実測面積が表示面積に比べてあまりにも少ないとか、実測面積のままでは公法的制限等により建築予定を手直しせざるをえないというような場合には、特約が予想した事態を超えるものだとして例外的に減額請求を認めてもよいように思えます。なお、面積不足のため建物が全く建てられないというような、契約の目的が全うされない場合には、買主はもちろん契約を解除することができます。

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土地

私の買った土地が契約書の面積より狭いので、売主にかけあいましたところ、「あなたの購入された分譲他の面積不足は隣地との境界線がずれているためだとわかりましたから、隣地の購入者にかけあってください」といわれました。私は、隣地購入者に対してどのような請求をする権利があるのでしょうか。また、私道負担については契約書のなかで明記してありませんでしたのに、実際には負担しなければならないようですが、やむをえないのでしようか。
分譲地の売買をめぐっては、当事者間で境界を確足、確認し、紛争を未然に防止することが必要ですが、契約書にもこの点についての条項はあまりみられず、境界をめぐる紛争は決して少なくありません。
しかし、売買当事者間で境界を確定、確認していても、境界をめぐる紛争が生ずる余地はあります。これが本問の事例のような場合で、分譲地が契約上の面積に達せず、その原因が売主の不注意による境界線のずれにあり、前もって分譲面積を実測しないまま売買当事者間で境界を確定、確認したということから生じるものです。本問では、境界線のずれによる面積不足分は隣りの人の土地になっているから、そちらへかけあえということですが、隣りの土地の所有者は、境界線があなたの土地にくいこんでいるため、その分だけ広い面積を所有していることになっているわけでしょう。以下、こういう前提で検討してみます。
あなたの土地の不足分だけ隣りの人が広い土地を所有する結果になっているといっても、それは、隣地所有者が売主との間で結んだ契約により双方境界を確定、確認して取得した土地の一部をなしているのですから、その部分は隣りの人のものだといえます。その部分は、あなたに売るものとして表示された土地の一部にくいこんでいたとしても、あなたは、表示された面積を有しない土地を、それだけの面積があるものとして購入し、境界の確定、確認をしただけのことなのです。そうしてみると、隣地の所有者は、増加分について、売主との契約により土地所有権を取得しているわけであり、あなたの土地を侵害していることにはなりません。したがって、隣りの人はあなたの土地を不法に占拠している等の事情にありませんから、あなたは隣人に対して妨害排除請求権をもたないことになります。あなたは面積不足の土地を購入したにすぎませんから、隣人に対してなんの文句もいいようがなく、もっぱら売主との問で問題を処理するほかありません。
この場合あなたは、売主に対して、分譲地の面積不足を理由に、売主の担保責任を追及することができます。これによる買主の救済は代金減額請求または解除と損害賠償請求ですが、これらは、買主が面積不足の事実を知った時から一年内になされねばなりません。また、境界線のズレが売主の悪意によってなされたものとすれば、売主の詐欺の可能性もありますし、買主の側で要素の錯誤を主張しうる場合もありえましょう。これらの場合には、売買契約は取り消すことが可能となり、あるいは無効となります。
なお、以上では、売買当事者が現地で境界を確定、確認したという前提のもとに説明しましたが、あなたも隣人も図面をみただけで買ったところ、公図を現地にあててみるとズレがあって、既存の境界をなおすとあなたも隣人もほぼ過不足のない土地を取得したことになる、ということに二、三年後に気づく場合もありうるでしょう。こ のような場合には、あなたは隣人にかけあうことができますし、正しい境界がはっきりしなければ、その確定のために裁判所の手続を利用することもできます。また、現地の境界のまちがいが売主の過失によって生じたものだった場合には、境界をなおすために要した費用は、原則として売主に損害賠償の形で請求することができます。
次に私道負担の問題に移りましょう。山林や原野を整地して宅地を造成し、それをいくつかの区画に切って分譲する場合には、宅地造成事業に関する法律や建築基準法等の行政的規制により一定の道路が当然に必要とされることがあります。その部分を宅地として購入しても、そこに建物を建てることはできませんから、前もって十分な調査をしておくことが必要です。しかし、そのことを知らずに購入した者は、その部分については、自己の所有地でありながら、それを思うように使用収益することができません。したがって買主は、売主に対して売主の担保責任を追及するより仕方ありません。

土地
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