土地建物の売買にあたって欠点のない契約を結ぶには

 契約前の事前調査を十分に行った結果、売買契約を結んでもよいという確信を得たならばいよいよ契約を行うわけですが、それでも契約の仕方が悪いと紛争をまねき やすいので注意しなければなりません。それではトラブルをまねかないように契約するにはどうしたらよいでしょうか。
 作成された契約書類に欠陥がないことを確かめるためには、形式面と内容面からのチェックが必要です。契約書類は当事者間に契約が成立したという証拠となる書類ですから、その形式が整っていないと、証拠としての価値がなくなるかあるいは減少してしまうのです。また、その記載事項の内容に誤りがあったりあるいは不備があったりすると、あとからそれが紛争をまねき、当事者間に思わぬ争いが生じたり、損害が生じたりするのです。
 したがって、契約の当事者が締結前にお互いに十分意思の疎通をはかり、その契約内容をし っかり検討し、合意に達したうえでこれを正しく書類にあらわすことが必要です。契約内容については、あらゆる場合を考慮してその対策を協議し、当事者間で納得がゆくまで練って決定しないと、失敗します。

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 契約書類にはいろいろの内容のものがありますが、どの書類にも欠くことのできない基本的な事項があります。それは次の通りです。
 当事者の表示(売買契約では売主と買主)
 当事者の署名(または記名)押印
 契印(または割印)
 契約の目的物の表示(土地の売買契約であるならば所在、地番、地目、地積など。建物であるならば所在、家屋番号、種類、構造、床面積など)
 日付(契約成立の日付をはじめ約定に必要な日付)
 以上、形式面の基本的な事項について要約してみると、契約書類で最も大切なことは当事者をはじめとして契約事項を特定するということです。そして契約の途中で抗弁の出ない完全なものにするということです。たとえば署名だけで印がない場合でも契約は有効に成立するのですが、印がないために契約が成立途中の段階であるという抗弁が出ることも考えられます。まして署名や記名でなくゴム印を押しただけのものであっては、当事者の特定は全然不可能になりますので、証拠としての価値はゼロに近いといえましょう。
 また、自然人の場合はその住所と姓名で当事者の特定が行われ、法人の場合は本店所在地と会社名・代表者名などで当事者の特定が行われるので、住所の記載がない場合には原則として特定できないことになります。ここで原則としてといったのは例外があるからです。たとえば建物や貸間などの賃貸借契約で借家人や借室人の住所の記載がなかったとしても、これらの人々は現にその建物や室に住んでいるので、他の客観的な資料で補足すれば、はっきり特定することができるのです。
 抵当権設定契約書や不動産売買契約書など登記に関係のある契約書では、登記原因証書として使用される場合が多いので、その形式に欠陥があると役に立たないので、注意を要します。このような場合には契約書を使用しないで、登記申請の委任状に契約の内容を入れ、申請書の副本をそえて申請することができます。
 契約書を公正証書にしようという場合にはこれを公証人役場へもっていき、公証人の手で公正証書にしてもらうわけですが、この場合には記名押印・契印などをはじめ、その内容についても細部にわたってチェックされますから、遺漏のないよう注意しましょう。
 売買契約 書の作成については、次のようなことに注意しなければなりません。
 所有権移転本登記および引渡しの期日を確定させること。
 土地・建物にかぎらず、物の売買契約では、いつ代金を払うのか、いつ物を引渡すのが明確になっていないものは駄目です。履行期は、平成○○年○月○日というように確定した年月日で決めなければならないのです。
 もし宅地造成等規判決による工事完了の検査がすむ時期がはっきりしないという場合には、売主がいう検査完了の目標に対して余裕をみた期日を履行期として記入しなければなりません。たとえば「売主は平成○○年○月○日までに本件の宅地造成等規判決による検査を完了のうえ同日までに買主に本件土地の所有権移転の本登記手続及び引渡しをなすものとする」というように書きます。
 最終代金の支払いと所有権移転登記は引換えにすること。
 売買契約においては売主が相手方に商品を引渡す義務を負い、買主が相手方に代金を支払う義務を負う、いわゆる双務契約であってこの二つの債務はお互いに対価関係に立って います。だから、売主と買主が同時に義務を履行するよう契約書に片手落ちのないよう注意が必要です。
 契約の重荷点に関し「甲乙協議」という書きかたは危険です。
 契約書作成の目的は、お互いに契約の要点を明確化して証拠書類として残すことにあるのですから「協議」というようなあいまいさがあってはいけません。細かい枝葉末節のことがらは協議であってもいいが、最終の履行期や代金額などについて協議の余地を残すのであれば、契約書としての価値はありません。
 売買当事者の損害賠償義務や危険負担に関する条項を書き忘れないように。
 たとえば建物の売買であったならば「売主または買主の責によらず建物が引渡し前に滅失又は毀損したときは売主の負担とし、ただちに自動的に契約を解除し、売主は手付金を返還すること」というように、危険負担について明確にしておくことが必要です。
 「本件土地について、宅地造成等規制法にもとづく工事完了の検真証が交付されないとき、またはその交付が著しく遅延したときは甲乙協議の上、本契約を解約することができる。この場合損害賠償の請求はできないものとする」というような約定は、前記で述べた「協議」というあいまいさとともに、売主の損害賠償義務があいまいにされており、約定が売主につごうよくできています。いろいろと起こりうる事態を契約前に考えてその重要なものを事前に協議の上とりきめるというのが、契約の正しいありかたでしょう。あとで紛争になる契約書は、必ずこのような点が欠けているのです。
無催告解除の記載は危険である。「各当事者のいずれかが不履行の場合は不履行の相手方に対し通知催告を娶せず本契約を解除されたものとする」というように相手側に不履行があれば、催告をしなくとも、また解除通知をしなくとも、契約解除に当然なってしまうような約定の仕方が無催告解除です。
 しかし、法律的には特約の効果がないばかりか他の約束を害する危険性があります。
 むしろ無催告解除の記載を削除して「買主は売主に対し、期限を定めてその日まで猶予を与え、その期限内に履行することを求めることができる」というように約定を修正したほうが賢明です。なお、法律用語に示されている「相当ノ期間」というのは、いままでの判例や学説などで場合に応じて考慮される日数です。だが「著しく遅延」というように書くと どのくらいの日数なのかあいまいなので確定できません。
 売買の目的となった土地や建物の表示は、図面その他によってはっきりさせること。
 土地の地積や建物の床面積は、実測によって登記したものでありますが、新たに実測した結果が登記簿記載のものと異なる場合があります。このようなときは登記簿上のものでするか、あるいは実測のものでするか、事前に当事者間でとりきめることが必要です。また、私道を合むか含まないかも、はっきりさせておくことが必要です。
 契約書に修正した箇所があったら、全体を入念に見なおすこと。
 修正箇所が一つでもあったら、それが他の契約条項に影響しているかどうか、もう一度契約書全体を念を入れてチェックすることが必要です。一箇所の修正により思わぬ矛盾が生じていたり、ちぐはぐな内容になっているのを見すごして、当事者が契約してしまい、後で収拾のつかない紛争になった例は数多くあります。

土地
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