履行遅滞を理由とする解除権の行使

 売主が買主に土地を売る契約をしましたが、約束の代金支払期日になっても買主の方で代金の準備ができなくて支払えずもうニカ月ぐらい待ってほしいというのです。売主として解除権を行使したいのですが、この場合、いきなり解除権を行使してもよいものでしょうか。

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 民法では履行遅滞を理由として解除権を行使する場合は、いきなり行使することはできません。法律で相当と認めるある期間を定めて、まず配達証明付の内容証明郵便で債務の履行を催告します。そして、その期間内になっても未だ履行されない場合は、解除権を行使することになります。
 土地、建物の売買の当事者である売主、買主の間に債務の不履行があった場合は、その不履行をうけた相手方に契約の解除権が生じます。この契約解除を行う前提として最後の通告をするのですが、この通告の内容を公の第三者である郵便局長に証明してもらって、相手に送達するというのが内容証明郵便の目的です。
 買主が土地を買う契約をして手付金を入れました。そして残金の支払いと引きかえに所有権移転登記という段取りになっているのに、売主は買主に無断でこの土地を他の第三者に転売して登記をしてしまったというような場合です。
 この場合、第三者が登記をしてしまった土地は買主には戻らないのですから、売主は買主に対して債務の履行が不能になり、買主には債務の履行不能による解除権の行使ができます。そしてこの場合は履行遅滞と異って、何ら催告の前提手続を経ないで、即時に解除権を行使することができるのです。この場合の解除通知も、配達証明付の内容証明郵便で相手に送達します。
 土地や家屋の売買契約書の文中には、ふつうは、買主が約定の期日までに売買代金を支払わたかったり、また売主が約定の期日までに土地(あるいは家屋)の所有権移転登記をしなかったときは、何ら催告を要せず本契約を解除する、という文言が示されていますが、たとえこのように書いてあっても、履行遅滞の場合に、催告の通知をしないで契約を解除することは、正式な裁判への手続としてみとめられていないことです。
 このような場合には、売主または買主は「○月○日までにその債務を履行しなければ契約を解除する」という前記のような催告の通知書を出したという証拠を立てるために、最寄りの郵便局の局長にその郵便物の内容を証明してもらうのです。内容証明には、このような送達事項確認の立証的な効力があります。
 内容証明郵便は前記したように、郵政省が郵便法六三条の規定にもとづいて、郵便物に書かれている文言の内容を謄本によって証明するものです。
 内容証明郵便はカーボン紙または複写タイプ用紙をもちいて、一枚の用紙に一行二〇字で二六行に書きます。用紙は中央部で二つ折りにしますので、片面十三行ずつにします。字数は句読点やカッコなども一字に数えなければなりません。同文三通をつくり、それぞれ相手方(送達先)・発信者控え・郵便局保管とします。内容証明の文面が二枚以上の用紙になる場合には、それぞれに割印を押すことが必要です。字句の訂正・追加・削除がある場合には、その個所を訂正・追加・削除したうえ、さらにその個所の上側に「何字訂正」「何字追加」「何字削除」と書いて、印を押します。印は認印でもよいのです。なお、文面に訂正がない場合でも、もしもということを考えて安全のために、何カ所か欄外に捨印を押しておきます。郵便局長は、提出された同文三通の文書に一枚ずつ内容証明郵便として出したことを前記のように証明し、目付と番号をつけます。
 前記のようにして作成された内容証明郵便物を、さらに配達証明付にしますと、郵便局の方から「○月○日、この内容証明郵便を何某に配達したことを証明する」という証明のハガキが届きます。
 たとえば前記の書式の例文のように、遅滞している残金の支払期限を「本状到達後○日以内」という催告の通知書を内容証明郵便で相手方に送達しますと、発信期日が証明されるので、到達後○日目である期限満了の日が確定されるわけです。
 このことは本件が裁判の係争になったとき、有力でかつ有利な証明になります。また、ずる賢い相手方では、自分あるいは家族の者が書留の受領印を押して受け取っていながら、受け取らないとか、家の留守居を頼んだ親類の者が受け取ってどこかに紛失してしまったというような理由をつけて、のがれることがあります。
 このような弊害を前もって防ぐために「配達証明付」にするのです。こうすれば国の公共機関である郵便局が、これを相手方に○月○日に配達したことを証明してくれるのです。
 内容証明郵便は前記のような不動産売買契約の解除の通告ばかりでなく、不動産の賃貸借契約の解除や契約更新拒絶、金銭貸借契約の解除や契約更新拒絶などをする場合に、その意思表示を相手方に確実にしたいという証拠を明らかにするために用いられています。その他いろいろな場合の申入れにも利用されています。
 内容証明郵便で債務や義務の不履行に対して催告をしてきた場合には、その発信者(通知人)はこれを前提にして解約、損害賠償など、強硬な措置に及ぶわけでありますから、そのままにしておくことは非常に不利です。だから、さっそく通知人の指定した期間内にその債務や義務を履行することを、内容証明郵便をもって回答し、それを履行したという証拠をとっておくことが必要です。
 また、通知人から内容証明郵便で或る申入れがあったけれども、それが事実に反していて承知できないという場合には、その証拠をはっきりと示して事実無根であることを、やはり内容証明郵便で回答することが必要です。なお通知人からの申入れに法律上の論拠がないかあるいは薄弱であるのに無理押しをしていたり、契約内容に欠陥、欠落、不明確な部分が発見されたり、目的物の表示が不完全であったり受信人の指定が筋違いであったりしたら、それを回答書に示して反論すればよいのです。

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