売主が代金を受け取らない場合

 土地や家屋の売買契約がすんで、買主が売主のところへ契約書に定めた期日に代金をもっていったのに、売主は「もうすこし考えさせてほしい」というばかりで、代金を受け取ってくれません。どうしたらよいでしょうか。
 民法四九二条(弁済提供の効果)によれば「弁済ノ提供ハ其提供ノ時ヨリ不履行二目リテ生スヘキー切ノ責任ヲ免レシム」と規定されていますので、この場合は売主には代金支払の遅延を理由に損害賠償、違約金の請求、契約解除などをする権利はないわけです。
 しかし、そうかといってそのままにしておくと、「当事者ノー方ハ相手方カ其債務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ履行ヲ拒ムコトヲ得」という民法五三三条の同時履行の抗弁権が売主にもありますから、事情が変って売主があらためて代金の支払を求めたときこれに応じなければ、契約解除のおそれがあります。

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 そこでこの場合、買主は売主が受領を拒否した売買代金を供託するのです。
 民法四九四条において、土地や家屋の売主がその売買代金の受領を拒否した場合には、その代金を供託することによって、この支払義務を果すことができると、弁済供託の効果を規定しています。
 すなわち供託というのは、この場合、売主の住所地を管轄する供託所(法務局・地方法務局・支局・出張所など)に買主が代金をあずけることによって、買主は売主に直接支払ったと同じ法律的な効果をあげる制度です。供託を必要とする代金は、従来は取り決めた代金の全額でしたが、現在では買主が至当と考える金額でよいことになりました。ただし、売主が値上げを理由にしている場合、裁判の判決などによって不足額が生じたときには、その差額と年一割の利息を、値上げ要求した時期にさかのぼって支払わなければなりません。
 供託所に提出する供託書は、供託所に備えつけられている前記のような供託書用紙(金銭・有価証券その他の供託用)に、次のような事項を記入するのです。
 供託者の住所・氏名、被供託者(この場合は売主)の住所・氏名、売買の目的物(たとえば家屋ならば○都道府県○郡市区○町村○番地所在、木造瓦葺平家建居宅一棟、床面積○○平方メートル)、供託する代金、供託の事由(平成○○年○月○日提供したが受領を拒否されたということを記載します)、供託者の住所・氏名を書いて押印します。
 この供託書は同文二通を作成して供託所に提出します。一通は供託所がこれを保管し、もう一通は供託所が確かに供託金を受け入れたという印を押して、供託者に返還してくれます。この一通は代金を弁済したことについての証拠書類となるものですから、大切に保管しておくべきです。
 供託所は、供託者から供託書と供託する代金の現金を受取ったならば、その事実を郵便で被供託者に知らせます。この通知を「供託通知書」といいます。
 鉛筆による記入は不明確になるので不可です。黒または青のインクを使用します。 一、二、三、十などの数字には、壱、弐、参、拾などを使用します。書類の性質上、金額の訂正は絶対にゆるされません。だから、まちがいのないよう入念に書きましょう。失敗したら供託所から新しい用紙をもらいましょう。被供託者あての封筒には、必ず郵券(切手)を貼りましょう。供託書用紙は無料交付であり供託の手数料もいっさい必要ありません。
 供託について説明をしたついでに参考までに供託が行われるほかの場合をあげてみると次のとおりです。
 地代・家賃の弁済、仮差押・仮処分・解放金のとき、裁判上の保証(訴訟費用の担保・仮執 行の担保・仮執行を免れるための担保・強制執行停止の保証・強制執行取消の保証・強制執行続行の保証・仮差押の保証・仮差押取消の保証・仮処分の保証・仮処分取消の保証など)、営業保証、供託金払渡請求書のとき、供託有価証券利札請求書のときなどです。

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