事業損失補償の現状

損失補償における損失は収用損失と事業損失とに区別されることがあります。その場合に収用損失とは収用された財産について生じる損失をいい、それに対して、事業損失とは公共用地の取得の目的となる国、地方公共団体、公社、公団による事業の施行によって生じる損失をいいます。ここに国、地方公共団体、公社、公団による事業とは、国や地方公共団体による治山、治水、道路、港湾、住宅、生活環境などの土本事業と国、地方公共団体や公社、公団によって管理運営される公益事業の双方を指します。以下では、これら二つの事業を合わせて公共事業と呼ぶことにします。したがって事業損失は公共用地として取得された土地については発生しません。

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事業損失が生じる原因としては、当該事業の性質が、社会的に好まれないもの、火葬場、伝染病院等であることによるもの、同建設工事がもたらすもの、工事の騒音、地盤沈下、水脈枯渇、水質汚濁、街区の分断など。当該事業の活動や施設の形状によって生じるもの、煙害、騒音、日照不足などがあり、それらの原因によって生じる損失としては、土地家屋等の物件の損傷または交換価値の低落、営業上の損失、肉体的または清神的な苦痛、傷害による損失などがあげられます。このような事業損失は空港、新幹線、高速道路等に代表されるように、公共事業が大型化するにつれて、各地で頻発し、深刻な問題になっています。しかし事業損失に対する補償は、日本の補償制度の中でもっとも立ち遅れており、従来、民法上の不法行為の問題として処理されてきました。つまり公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱によれば、損失の補償は、第五章に規定する場合を除き、土地等の権利者に対してするものとするとして、残地等に関する損失の補償についても、事業の施行により生じる日陰、臭気、騷音その他これに類するものによる不利益又は損失については、補償しないものとすると規定しています。閣議了解はこのことを、事業施行中又は事業施行後における日陰、臭気、騒音、水質の汚濁等により生じる損害等については、この要網においては損失補償として取扱うべきでないものとされています。しかしながら、これらの損害等が社会生活上受忍すべき範囲をこえるものである場合には、別途、損害賠償の請求が認められることもあるので、これらの損害の発生が確実に予見されるような場合は、あらかじめこれについて賠償することは差し支えないものとすると説明しています。
従来、事業損失が一般に等閑視されてきた理由として、土地収用の法理から、損失を事業用地のための権利の取得に基づく損失、つまり収用損失のみを対象にしたこと、実質的理由として、公共事業の施行に伴う間接的な侵害による損失は、評値損、その他の無形のものが多く、その範囲、程度を確定し難いこと、補償額が膨大になり、公共事業費の増大につながるという三点をあげています。
精神的苦痛、身体的損害等の事業損失は、金銭に換算できない場合が多く、その場合には、損失補償は被害者にとってほとんど意味がなく、事業そのものの差止めが請求されます。日本の通説、判例によれば、差止請求が認められるかどうかは、事業の公共性に依存すると考えられています。

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