相隣関係法理と損失補償

相隣関係法理が適用できる場合には、補償を必要としないと考えられています。例えば建築基準法に基づく工業地域、商業地域、住居地城といった、地域地区制による建築の制限に対しては、相隣関係法理が適用されると、一般的に考えられています。用途地城の指定がない場合には、各種用途が混在して、大気汚染、騒音、悪臭といった外部不経済が発生します。また、建築基準法を相互に遵守することは、火災等の発生、拡大を予防し、良好な生活環境を維持することによって、相互に外部経済をもたらし合います。これらの土地所有権の行使に対する制約は、現代のように各個人の土地所有権行使が、相互に密接に依存し合って外部不経済を及ぼし合う可能性が著しく高い場合には、不可欠の措置です。しかし、これらの制約が不可欠の措置だからといって、無補償でよいとは必ずしもいえません。利益と損失は個人にまで還元して考えなければなりません。用途地域の指定替えが行われる場合、あるいは無指定地域が新たに指定される場合には、多かれ少なかれ、当該地域の土地所有権者で、損失を被る者が存在することになります。つまり土地所有権の行使に対する制限内容が変化すると、その土地に対する市場の評価が変化し、この変化の過程で損失を被る者が存在することとなります。それに対して、用途地城の指定替えが行われた後に、当該地域の土地、家屋等を取得する者については、指定替えに伴う市場の調整は完了しており、また取得者もその制限の内容を知って土地を取得するのであるため損失は生じません。したがって、互譲の精神に基づく相隣関係理論とは、指定替えあるいは指定に伴う市場の調整が完了した後に適用すべき法理であり、調整過程で発生する損失にその法理を適用して、これを無補償とすべきではありません。

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土地

我々の補償基準からすれば、指定替えによる損失一般を補償すべきかどうかという形で議論することはできず、指定替えによって個人が被る損失が、それを補償しなければ基本的人権が保障されないほどに大きな場合に、補償することになります。例えば住居地域から準工業地域への指定替えといった場合には、その地域の環境は一変してしまい、したがって指定替え以前から当該地域に土地を所有していた者は、それが補償されなければ基本的人権が保障されないほどに大きな損失を被ることになります。
都市計画法における開発許可制度に関して生じる損失補償問題についても上述の用途地域制に関する補償基準が妥当すると思われます。都市計画法における市街化調整区域における開発許可制度については、憲法上、必ずその損失の補償を与えなければならないということにはならないとしながらも、正義と公平の理念からすれば、開発許可制度にともなって人々の間に生じる利害得失について、なんらかの調節がなされるべきであると考えられるとして、市街化調整区域については、開発許可の与えられたた土地を除き、都市計画税を課さないとか、固定資産税を低い額にとどめておくといった租税上の優遇策をとることにし、市街化区域については、農地についても宅地として固定資産税や都市計画税を課し、さらには、高い開発許可料をとり、あるいは都市計画によって利益を受ける者について受益者負担金を課するといった細かい種々の調整借置を講ずることが要求されると付け加えています。このように断らざるを得ないのは、市街化調整区域に指定されることによって、当該地域に土地を所有している者が被る損失は、必ずしも無視できる大きさではないという観念があるからです。しかし、その損失が基本的人権を保障するという立場からみて、無視できない大きさであるならば、その損失を正当に補償すベきであって、損失とどのように対応するのか不明確な都市計画税を免除することや、固定資産税を軽減するといった手段によって調整すべき必要があります。各種の祖税攻策や開発許可料は、分配の公正を達成することをその目的とする損失補償の観点からではなく、むしろ、資源配分の効率性の観点から考えられるべきものです。

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