土地の収用

公共的な土地利用計画を実施するためには、公共用地として私人の土地を収用したり、用途地域制や開発許可制度等によって土地利用の方法を制限する必要性が生じます。その場合、一般的には、一方に利益を享受する比較的多数の者が存在するわけですが、他方で損失を被る比較的少数者が存在します。そして、その場合の損失は単に土地という財産権に関する損失に限らず、生活権や人格権等が侵害される場合も多く、財産権については、日本国憲法では29条2項で、財産権の内容は公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定めると規定し、同条3項で、私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。と規定しています。他方では国家による個人の生活権や人格権の侵害に対する損失補償に関しては、憲法による明文の規定がなく、また、補償対象についての現行法律制度の基本的考え方も、もっぱら財産権におかれています。このように補償対象が法律的に狭く限定されていることが、現実に資源配分の効率牲と分配の公正上深刻な問題が発生しているにもかかわらず、望ましい解決が図られない原因の一つになっているように思われます。

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公共の福祉や正当な補償とはどのような内容を持つものなのでしょうか。また、どのような基準に従って損失を補償すべきかどうかを決定すべきなのでしょうか。これらの問題は、従来、主として法律学界で論議されてきましたが、経済学的な側面の考察はほとんどなされてこなかったように思われます。
資本主義経済においては、土地所有権はどのような理由によって制限されるのでしょうか。規範的経済学の観点からみれば、土地所有権は通常、効率的な資源配分と公平な分配を達成するために制限されるといえます。その場合に二つの要因が作用します。
ある財産権の行使が外部不経済をもたらす場合には、資源配分の効率性の観点から、その行使を制限する必要が生じます。例えば土地は、すでに述べたように地理的に固定された生産要素であるために、隣接した土地あるいは地域一帯から、様々な影響を隣接地に及ぼします。歴史的にみても、土地所有権に対する制約の必要性は、いま述べた土地利用の相互依存性に伴って発生する外部不経済の問題をめぐって生じ、権利濫用の禁止という観点から、土地所有権の行使に対して一定の制約が課せられるようになりました。
現代においては、国家は効率的な資源配分と公正な分配とを達成するために、多くの公共財を供給しています。また、公正な分配という基準からは、排除の原則が適用できる私的財であっても、費用以下で公的に供給することが望ましい材サービスが存在します。公共財の供給も私的財の公的供給も多くの場合土地という生産要素を必要とします。つまり道路、空港、鉄道、上下水道、学校、公園、公共住宅といった公共財ないし私的財を公的に供給するためには、国は私有地を収用ないし任意買収して公共用地として土地を取得しなければなりません。あるいは、大規模な宅地や工場用地は最終的には個人や企業に払下げられる私有地であって公共用地ではありませんが、輸送施設や生活用、工業用水道施設等の整備を効率的に行うためには、国または地方公共団体がそれらの用地を造成して供給することが望ましい場合があります。このような公共財の供給や私的財の公的供給に伴って、土地所有権その他の物権、債権、漁業権等が国家によって制約されます。
上述のことからも知られるように、従来、損失補償法の主要な考察対象は、土地所有権の収用に関して生じる財産上の損失の補償でした。しかし、現実の社会における損失補償問題をみると、土地収用や土地利用の制限に伴って、精神的損失の補償、生活再建補償、さらに、公共事業の施行に伴って発生した事業損失に対する補償といった、財産権の補償という概念ではとらえきれない問題が生じています。

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