地価と土地の有効利用

昭和50年以降の金融引締めと不況下にあって、地価はむしろ低下ないし横ばいの傾向にあるために、土地取引許可制は実施されてはいないが、土地取引届出制はほとんど開発許可制と同じ役割を果たしているといわれます。なぜなら、都道府県の勧告を受けなければ、都道府県から開発の許可がおりないからです。国土利用計画法の最大の問題点は、土地の分譲価額等について、地方公共団体が適正価額なるものをディベロッパー等に勧告し、それに従うようにさせるという行攻指導にあります。

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国土利用白書では、地価については、従来、合理的な地価形成を図るための制度が欠如していたため、一般人が土地ないし地価について十分な知識を持たず、情報も不十分なまま附近地のいわゆる呼び値やつけ値によって左右されるなど、地価が必ずしも合理的とはいえない安易な方法で形成されてきたという認識のもとに、不動産鑑定評価制度を整備し、合理的な地価の形成を図ろうとしています。しかし、土地という資産はもともと不確実な資産であり、様々な与件の変動によって人々の期待としたがって土地に対する需要曲線は変化します。そのように不確実で、様々な与件の影響を受ける資産を、不動産鑑定士が不動産鑑定士試験に合格し、一定期間の実務経験を有しているからといって、必ずしも、土地購入者よりも合理的に評価し得るわけではありません。現行の不動産鑑定は意図的に土地を低く評値する傾向があり、情報としての価値もそれだけ小さくなっています。
個々の土地をいくらで購入するかは、購入者の責任において決定されればよいことです。土地購入者はその土地をどのように利用して、どれだけの収益をあげうるかを、できるだけの情報を集めて調査し、それに基づいて購入価格を決定するはずです。公共的土地利用計画が実施され、用途地域制が整備され、税制によって土地投機が抑割されていれば、最も高い地代をあげるように土地を利用する投資家の土地購入価額が最も高くなるはずであるために、そのような投資家に土地が移動することが、土地の有効利用を促進することになります。したがって土地投機を排除することは重要ですが、きわめて稀少な財をできるだけ安く売却するように行政指導することは土地の有効利用を妨げることになります。さらに、そのような行政指導は、安く土地を取得した人に対する土地を通じる所得分配政策にほかならず、きわめて不公平な政策でもあります。それをその土地を利用もしない第三者が合理的な地価でないと行政介入して引下げようとするのは疑問があります。届出制における価格指導はもっぱら引下げの方向でなされていますが、地方自治体が合理的と考える価格がもっぱら取引当事者のそれを下回るばかりで上回るケースが1件もないのはなぜなのでしょうか。このことは自治体の価格指導の目的は合理的地価の形成などという、いかにも妥当と思われるようなものではなく、単に取引価額をできるだけ引下げる点にあることをはっきりと示しています。
国土利用計画法の内容の規制区域と土地取引の許可制は未だ実施されてはいませんが、第12条第1項にいわれる土地投機とはその文脈からして純枠な形の投機を指すと考えられます。しかし、すでに明らかにしたように土地投機は純枠な形のそればかりでなく、広義の投機も資源配分上望ましくない結果をもたらすのであり、後者の投機の方が前者よりも広範に行われていることに注意すべきです。また、すでに届出制における価格の行攻指導について指摘したように、地価を凍結することは資源配分の非効率をもたらします。
遊休土地に関する措置にかんしても、自治体が遊体地として指定し買取った例は未だなく、その一つの大きな理由は自治体が遊体地を買上げる財源を持っていないという点に求められます。遊体地の効率的利用の問題も土地キャピタルゲインに対する重課税を採用すれば、国土利用計画法のような面倒な手続きは一切不要になり、遊体地を公共用地として取得するための財源も合埋的に調達可能になります。以上において、明らかにしたように、取引価格に対する行政的介入は、土地用役市場の役割をも否定し、土地の有効利用を阻害し、許認可に際して、いたずらに時間と費用を浪費するばかりでなく、許認可をめぐって贈収賄が行われ、行政の腐敗を招くおそれすらあります。それにもかかわらず、多くの人々に地価凍結政策がアピールする埋由は、おそらく政策当局や一般の人々が、地価が人々の平均的所得に比べて高すぎ、つまり地価の水準そのものが問題であると考えられるか、あるいは地価高騰が諸悪の根源であると考えているという点に求められます。しかし、公共財に関連する問題がなく、外部効果が存在しないとすれば、市場で決定される個々の財の価格水準そのものが問題になるのは、独占ないし供給者間の協調によって、人為的に価格がつり上げられている場合だけです。そうしてその場合の対策は価格の凍結ではなく、独占禁止攻策でなければなりません。一般に独占や協調が存在しない場合、ある財の価格が他の価格に比べて高いという事実は、諸悪の根源ではなく、需要者に対してはその財を節約せよということであり、他方、供給者に対してはその財の供給をふやせというシグナルです。
このことを土地にあてはめて考えてみると、日本の土地所有は細分化されており、独占とか供給者間の協調とかいった要素はほとんど存在しないと思われますが、すでに述べたように、土地供給の増加には他の多くの対の供給増加と異なって、公共投資による土地の質の向上が伴わなければならないため、土地供給増加をもっぱら価格機構に委ねることはできません。.しかしこのことから、地価が相対的に高いことが諸悪の根源であるために、地価水準そのものを攻策的に抑制せよという結論は導かれません。導かれるのは土地投機を排除し、土地供給の増加を価格機構に委ねるべきではないという土地政策の基準です。
いま、基準を満たす政策が採用されたとして、そのとき決定される地価が、依然として高すぎると判断された場合とられるべき攻策はどのようなものでしょうか。
基準は満たされているために、人々の間の初期の資産保有と客人の能力の分布を出発点として、土地の有効利用は達成されており、したがって、その結果に不満があるならば政策の対象はこの場合にも地価そのものではなく、出発点である資産保有と能力に基づいて分配される所得とでなければなりません。
なお、国土利用白書では、届出制及び事前確認制を通じて相当な価格からみて著しくて規制を欠くものに対しては、それぞれ的確な措置がとられているので、地価の鎮静化にかなりの実効を収めてていると考えられると述べています。

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