公共投資とその利益

公共投質から生み出される財、サービスは一般に無料ないし費用以下のきわめて低い価格で住民や企業に提供されます。そのかぎりでは公共投資の利益はすべての人々に及ぶことになりますが、価格機構のもとでは、租税負担の転嫁、帰着と同様の現象が政府や公益事業の無料サービスないし費用以下のサービスから得られる利益についても生じるという点に注意しなければなりません。これを、ある地域に地方自治体によって公園が作られ、無料で開放された場合を例にとって説明すると、公園が作られるとまず、第一次的には地域住民ほとんどすべての効用が高ま り地域住民すべてが利益を受けます。しかし、公園ができたことによって、公園が作られる前よりもこの地域に居住することの効用が増大するため、しばらくすると、他の地域から人々がこの地域に居住しようと移動してきます。その結果、借家に対する需要曲線が上方にシフトし、家賃をつり上げます。このような価格機構を通じて借家人たちの利益の一部または全部は家主に移ります。家賃の上昇は借家経営がそれだけに有利になったことを意味するので、借地人の間で借地を確保するための競争が始まり、地代が上昇することになります。その結果として家主の利益もまたその一部ないし全部が地主に移転してしまいます。この例では借家人と家主と地主がそれぞれ別の人である場合に公園という政府の無料サービスの利益がどのように価格機構を通じて移転し、帰着するかを説明しましたが持ち家の場合には一人の人が借家人、家主、地主のすべてを兼ねていると考えればよく、いま例として考えている公同という政府の無料サービスの利益の大部分は価格機構を通じて土地所有者に帰着するのです。このように、攻府の無料サービスのほとんどが土地所有者に帰着してしまうのは、労働や資本のような生産要素と違って、土地の移動不可能性という特殊性に基づきます。

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土地

この例では、公共投資の利益の大部分が土地所有者に帰着しましたが逆に、公共投資が行われたことによって、その付近の土地所有者が不利益を被る場合もあります。例えば十分な緩衝地帯をもうけずに鉄道や道路が建設されれば、鉄道沿線や道路治いの住民の効用は騒音、振動、排気ガス等によって著しく低下します。したがって公園の例とは逆方向の人間の移動と価格メカニズムが働いて、地代と地価は低下します。
以上のように、公共投資は現在および将来の予想地代としたがって地価を高めたり、あるいは低めたりします。公共投資の利益、不利益の相当部分は、このような価格機構を通じて公共投資が行われた地域の地主に帰着するのです。
いま述べた例では、公園は無料で開放されるとしましたが、入園料が徴収される場合では、公園がつくられたことによる地代の上昇は公園が無料で開放される場合よりも小さくなるのです。このことから、土地の価値に体化されるような公共投資は、地主によって負担されるのが正しく、また地域住民に負担させたとしても、それは地主に帰着します。実際的にいえば、この種の公共投資負担は、転嫁と帰着の迂回を経由せずに、土地所有に対する税として行われるのが賢明であると思われます。しかし、所得分配の観点から見ると、公園の費用負担として公園を無料で開放し、地代上昇分に課税する方法と、地代が不変にとどまるように公園を有料にする方法とでは、まったく同等ではありません。なぜなら、第一に公園をほとんど利用しない住民にとっては、公園が有料である場合の方が地代の上昇が小さいから、公園が無料で開放される場合よりも有利であり、第二に公園の周辺の住民以外もその公園を利用し、住民にとっては公園が無料で開放される場合の方が有利です。しかし、いずれにしても公共投資の利益の大部分が地代と地価の上昇を通じて地主に帰着するということは、比較的多くの人々が持っている分配の公正基準からみて、公共投資の費用負担を地主に求める根拠となります。

土地
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