土地の動学的有効利用と土地投機

土地が有効に利用されているかどうかは、土地利用規制のもとで、いま問題にしている期間中に稼得しうる最高のインカムゲイン(地代)を実現しているかどうかによって判断される.もし,土地の利用方法を変更する時の転用費用がネグリジブルであり、不確実性が存在しなければすべての土地は競争的価格機構を通じて、各期稼得しうる最高のインカムゲインが実現されるように利用されるはずです。しかし、土地に関しては建物の取壊し費用に加えて、借地権、借家権といった大きな転用費用が存在するため、現在は遊体地としておき、将来土地利用方法を変えたり、あるいは異なった利用の仕方をする人に売却したりする方が有利であると判断される場合がしばしば生じます。土地の所有者がどれだけの土地を遊体地として残しておくかは、どのように土地を利用する投資機会が存在するかと、土地保有者が資産保有に関して、どの程度の不確実性、流動性、可分性及び可逆性の組合せを選好するか、とに依存します。他の事情を一定とすれば、土地利用における転用費用が大きくなればなるほど、土地の低度利用が促進されます。都市近郊農家が形ばかりの農業を続けたり、作物を作ったり、簡易駐車場を経営したりするという利用形態を選択するのはいま述べたの条件を考慮しつつ、転用費用をできるだけ小さくし、将来高くなった地価で持ち家需要者や民間ディベロッパー等に農地を売却することが、もっとも自らの効用を高めることができると判断するからです。

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都市近郊農家の場合は、広義の土地投機を行っているわけですが、地価が上昇してゆき土地キャピタルゲインの地価に対する比率の低下が予想されるにつれて、土地投機は不利になり、農地、林地はしだいに商業地や宅地に転用されていきます。これが土地資産市場の動学的資源配分機能です。広義の土地投機を行っているのは農家ばかりではなく、農家以外の個人、不動産業者、民間ディベロッパー、私鉄等も同じように広義の土地設機を行っています。広義の土地投機は広範に行なわれていますが、それに比べれば純粋な形での土地投機ははるかに少なく、このような土地資産市場における土地投機は土地の動学的有効利用に関してどのような意義を持つのでしょうか、
第一に、土地の転用には大きな費用がかかるため、土地投機が行われるときには、遊休地ないし形ばかりの農業を営むといった低度利用の形で保有されることが多く、したがって、土地投機は静学的な資源配分の観点からはマイナスの効果を持っています。この土地投機のマイナスの効果を生産阻害効果と呼んでいます。しかし、この土地投機の生産阻害効果はあくまでも静学的資源配分の観点からマイナスであっても、動学的資源記分の観点からもマイナスであるとはかぎりません。例えば、一旦農地や林地を工業用地や宅地に転用してしまうと、将束もとの状態に戻す必要が生じた場合には、転用費用が膨大なものになってしまうので、動学的にみれば、農地として残しておく方が効率的であるかもしれません。そこで、次に土地資産市場あるいは土地投機の動学的資源配分機能を検討すると、動学的に最適な資源配分を達成するためには、現在の財、サービスの需給を均衡させる直物市場のほかに、将来の財、サービスの需給をも現在、均衡させてしまう先物市場が存在することが必要です。しかし、そのような先物市場は若干の財を除いて現実には存在しません。したがって、各経済主体は各財、サービスの将来価格を予想して、現在の消費と生産を決め、将来の消費と生産に関する計画を作成します。将来価格の予想が的中すれば、需給の不均衡は存在せず、動学的にも最適な資源配分が達成されます。しかし,将来価格の予想が的中することは稀であり、人々の予想が的中しないとき、価格機構は効率的な動学的資源配分に失敗しますが、投機的行動はこの失敗をある程度修正するといわれます。この投機の動学的資源配分機能を土地についていうと、例えば、ある一定の面積の土地の所有者が、比較的短い期間をとれば、その土地に木造アパートを建てて、家賃収入を得ることが有利ですが、将来、住宅用役の需給バランスは現在以上に切迫し、その土地を将来、マンション業者に売却すれば相当大きなキャピタルゲインが得られると予想するとします。このような場合に、もし木造アパートを経営すれば、将来マンション業者に売却しようとするときに、借家人は借家権によって保護されているために、彼らを立退かせることができないかもしれません。あるいは、多額の立退料を払って立退いてもらわなければなりません。さらに、木造アパートを取壊す費用もかかります。不確実性と流動性の問題を捨象して考えれば、こうした転用費用の現在価値が、木造アパートからの家賃収入の現在価値よりも大きければ、地主は木造アパートを建てずに、空地にしておいて、その土地を将来、マンション業者に売却しようとするはずです。このような投機的行動は投機者の将来地価に関する予想が正しければ、将来の住宅用役の需給の不均衡をある程度修正します。しかし、たとえ土地投機者の予想が正しくても、土地投機の動学的資源配分機能の有効性はごく限られたものであり、社会的費用という観点からみると逆に望ましくない場合の方が多いと思われます。その理由は、第一に土地の生産性あるいは土地用役から得られる効用は外部経済による影響を受けやすく、第二にある特定の形で土地を利用するためには、公共投資が不可欠であるという、土地のもつ二つの特徴に求められます。第一の土地の外部効果の問題は、すでに述べたように、土地利用の形態を指定し、それを厳重に守らせることによって、相当程度まで解決できます。しかし、一定の環境を維持するために、空地を地主にどのように管理させるかという問題は依然として解決できません。

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