土地と機会費用

日本の戦後の経済成長を支えたのは地価の高騰であったという、花見酒の経済理論では、企業は銀行から借金して土地を購入し、地価の値上り分だけ担保力を増強し、それに第二抵当権を設定してさらに銀行から借金しその資金で土地を買う、このような地価高騰、銀行貸出増、信用膨張のスパイラルが戦後の日本経済の成長を支えたというのが骨子でした。しかし、この因果関係は全く逆であり、戦後都市およびその周辺の地価が急上昇し続けたのは、企業による急速な資本蓄積と能力単位で測った労働力の増加と人々の所得水準が上昇し続け、都市へ人口が集中して、都市及びその周辺の土地の限界生産性が上昇し続けたためでした。言い換えれば、戦後の急連な経済成長こそが地価としたがって土地の担保価値を高めた原因なのであって、その逆ではありません。このことは、実質経済成長率が-0.2%とマイナスに転じた昭和49年以降全国市街地価格指数の伸びが鈍化し始め、不動産研究所の調査によれば,49年から50年にかけては、ついに、-5.5%とマイナスに転じ、6大都市については、-8.5%にまで低下した事実からも明らかでした。

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ニクソン・シヨック後に我々が直面した現実は円の激落ではなく、反対に円のレートの切上げ、円の対外価値の上昇でした。このような見通しの誤りの原因の一つとして、その後も地価高騰が続き、それが担保力を増加させていったことは事実でしたが、企業の帳簿上の土地勘定は一貫して原価主義にもとづいて記截され、いくら値上りしても評価替えを実施したことがなかったために、企業の製品価格はつねに時価に比べて非常に低い資産価格を基礎にして計算された点が重要です。そのため消費者物価は急騰しましたが、最近まで卸売物価と輸出価格は横ばいを保ち続けたのでした。この、土地の時価と帳簿価格と卸売物価の関係に関する議論は全くの誤りという他なく、きわめてショッキングな主張でした。家計の行動でも企業の行動でも、それらの行動に影響を及ぼす費用は、家計簿や損益計算書に記載されている費用や支出に必ずしも一致しません。土地の簿価が時価をはるかに下回っていても企業の行動の基準となるのは時価であって簿価ではありません。企業が土地を所有して生産に従事している場合、企業はその土地を売却して代替的な最も有利な資産に投資したら得られるであろう収益を年々失っているのです。このように失われた年々の最大の収益を年々の機会費用と呼びますが、企業の行動を決定するのは、土地の時価を基準にして考えられるこの機会費用であって、簿価は全く問題になりません。都心近くに工場を持っていた企業が、その工場を閉鎖して、土地を売却し、他の土地で新しい事業に乗り出したり、売却代金を新たな機械設備の購入に向けたりするのは、新事業や新機械設備の予想収益の方が、高くなった現在の土地で工場を操業し続ける場合の予想収益よりも大きいと考えるからです。その場合、経営者は土地の簿価は安いのだから、工場を閉鎖するまでもないなどとは決して考えません。
例えばが時価1億円のダイヤモンドをプレゼントされたと仮定するとすると、貰った人はダイヤモンドなどには一つも興味がなく、したがってそれを所有することから少しも効用を感じないとします。そこで第三者に、どうせただで、かつ欲しくもないのにもらったダイヤモンドだから、ただで譲ってくれないかと申し出たとします。ダイヤモンドを獲得するために要した費用は帳簿上はゼロですが、帳簿上の費用、すなわち0円を基準にして行動するでしょうか。すべての人が時価1億円を基準にして行動するはずです。ある人はただでもらったにもかかわらず1億円以上でなくてはそのダイヤを第三者に譲ってくれないかもしれません。また、ある良心的な人は、ただでもらったのだから若干時価よりも安く譲ってくれるかもしれません。しかし全く面識のない人が若干なりとも割引いて第三者に譲ってくれるとは、誰も思いません。このように、我々の行動は企業も含めて時価を基準に行動しているのです。そもそも、生産要素の帳簿価格が時価よりも安く、評価替えが行われなければ、卸売物価が安定するという説が正しいとするならば、日本銀行は貨幣量を徴妙にコントロールしたりせずに卸売物価を安定を違成することができ、そうであれば卸売物価安定のための金融政策など全く不必要となってしまうことになります。

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