土地の流動性

土地の流動性とはどのようなものでしょうか。土地投資家も従来からの所有者も、都市圏の土地の流動性がきわめて高いという前提に立って自らの行動を決めているというのが一般の認識であり、不動産企業ばかりでなく、製造企業や商社までが不似合な不動産部のようなものをもってまで土地取引に乗り出すようになっているのは、買った土地は望む時に、期待する価格で売ることができると考えていること、つまり流動性が高いことを企業が正しく認識して行動しているということなのです。また、農家の土地に対する留保需要が強い一つの根拠も望む時に売ることができます。すなわち流動性が高いことにあります。

スポンサーリンク
土地

流動性は資産の完全な価値との関連で定義されていることに注意する必要があります。資産の完全な価値とは、その資産をもっとも有利な条件のもとで、しかも十分な準備を経たのちに売却して得られる最大の現金額のことです。資産の流動性とは、この価値が完全に実現されるまでに要する時間の大小、その速度の大小によって定義されます。しかし、現実には、時間が経過すれば資産の需要と供給を規定している諸要因、つまり、他の事情も変化してしまいます。ある資産の流動性の大小を考える場合には、それらの要因の変化の影響を取り除いて考えなければなりません。この点は、次のような例を考えてみれぱ、一層はっきりします。
ある農家がその所有地を売却しようとして、新聞に広告を出したとします。この広告を見て最初にやってきた人は、この土地を1000万円なら買おうと申し出たとします。例えば5日間のうちに買い求めにやってきた投資家の付け値は、2日目、900万円,3日目、1200万円、4日目1000万円、5日目、1500万円であるとします。この場合に最初にやってきた投資家に土地を売却せずに、5日目まで待って1500万円の買い手を見出すことができたのは、単に時間をかけたからなのか、この5日間のうちに土地の需要、供給に影響を及ぼす諸要因、つまり他の事情に変化が生じたからなのかわかりません。実際には、これら二つの要因がともに作用しているのでしょうが、流動性の大小は後者の影響を排除して考えられなければなりません。
他の事情を一定としたときに、本書で定義された意味での土地の流動性は、一般に他の資産に比べて低いと考えられます。つまり他の事情を一定とすると、ある土地や建物をできるだけ高い値格で売却するためには、広告宣伝を行ない、十分に時間をかけなければなりません。それは、一筆一筆の土地や一戸一戸の建物が他の金融資産等に比べて同質性が低いため、取引市場を形成することが他の資産に比べて困難だからです。現金や各種の預金はすべて同質であるので、価格の実現に時間がまったく、あるいはほとんどかかりません。株式も一つ一つの銘柄は完全に同質であるので、取引市場を容易に形成することができます。株式の価値とは取引所で時々刻々形成される株価であり、投資家は証券会社への電話一本で株式を売却し、証券会社にその売却代金を自己の預金口座に振込んでもらえば、その価値を実現することができます。あるいは、他の事情が一定であるかぎり、広告宣伝して、時間をかけてある銘柄の株式の買い手をさがしても、取引所で決定される価格以上の価格で、それを売却できる可能性は極めて小さいといえます。このように考えれば土地や建物の売買に関する広告が他の資産のそれに比べてはるかに多いこと自体、土地、建物の流動性が低いことを示していることが理解されます。
望む時に、期待する価格で売ることができても、流動性が高いわけではありません。流動性は期待する価格というような主観的な価格とは何の関係もありません。どんな資産でも期待する価格が低ければ低いほどよく売れるものです。それは土地の需要曲線が右下がりであれば、当然のことです。また、望む時に売ることができるというのも、正確には、安くすればするほど望む時によく売れるというべきです。

土地
資産の性質と土地/ 資産選択と土地/ 土地需要と予想/ 地価高騰の原因/ 地価決定と財決定の違い/ 地価の限界地規定説/ 住宅金融/ 賃貸借に伴う費用/ 土地家屋の購入と賃貸/ 財サービスの性質と賃貸借契約/ 土地投資の有利性と持家指向/ 住宅金融拡大の効果/ 借地法/ 農家の土地売却動機/ 地価上昇率と土地の有利性/ 土地の流動性/ 土地と機会費用/ 土地と不確実性/ 資産保有を決定する基準/ 土地市場と土地投機/ 地価上昇率と土地投機/ 農地の宅地並み課税の効果/ 土地の外部性と用途地域/ 土地の動学的有効利用と土地投機/ 公共投資の効率性と土地投機/ 公共投資とその利益/ 土地問題の解決/ 土地収用と土地利用制限/ 遊休地に関する措置/ 地価と土地の有効利用/ 土地の収用/ 損失補償の基準/ 相隣関係法理と損失補償/ 事業損失補償の現状/ 効率性基準と受忍限度/ 正当な補償/ 土地収用と正当な補償/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー