財サービスの性質と賃貸借契約

土地、家屋の賃貸借契約に伴う費用は、貸手が負担するか借手が負担するかにかかわらず、その財サービスの性質上、他の財サービスの賃貸借契約に伴う費用よりも高くならざるを得ません。つまり第一に、各個人の宅地、住宅サービスに対する需要は他の財サービスに比較して多様です。これは賃貸借契約の取引費用を高める要因です。第二に、宅地、住宅サービスは人間の生活にとって不可欠の基本的なサービスであるために、賃料の増額や宅地、家屋の明渡しに対する借地、借家人の抵抗はそれだけ大きくなります。これはさきに述べた賃貸借契約に伴う紛争費用を高める要因です。他方で土地を移動させることはできないし、建物は、たとえ移動できたとしても、その費用は著しく高くなります。したがって、地主家主が、賃貸借の更新を拒絶したくても、コンピューターとか複写機のレンタルのようにそれらの財を持ち去って一方的に供給をとめることはできません。この点からすれば、借地、借家契約においては、現に居住している者が事実上有利になります。これは賃貸借に伴う転用、解約費用を著しく高める要因です。これらの要因が存在するために、土地、住宅の賃貸借契約にあっては、地主、家主と借地人、借家人との紛争が絶えず、その契約に伴う費用も他の財サービスの賃貸借契約に伴うそれよりも高くなる傾向があります。

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土地

土地、建物の賃貸借に伴う費用は賃貸人にも負担されます。借地、借家権を強めて賃借人を保護すればするほど、短期的には、賃貸人の費用負担が増大します。このように賃貸借の費用という観点から見れば、借地借家法とは、賃貸借契約に伴う費用をどのような割合で地主、家主と借地人、借家人とに負担させるか、という基準を定めた法律としてとらえることができます。例えば、いま地主が貸地を売却してキャピタルゲインを実現したいと考えているとすると、このとき、借地権が法律によって強く保護されていればいるほど、地主が貸地を他人に売却することは困難です。借地権は、建物保護に関する法律によって、建物を登記さえしておけば、第三者に対抗できると定められています。したがって、借地権が設定された土地を購入した新地主は、立退料等を払って借地権を買うことができないかぎり、従来とは異なった方法で土地を使用すること、つまり土地を転用することはできません。したがって、借地権価格は建物の取こわし費用とともに、土地の転用費用の一部を構成します。かくて、借地権が設定された土地は、この転用費用分だけ低く評価されることになり、それは地主の負担になります。
借地借家権を強化すれば、短期的には賃貸人の費用負担が増大しますが、長期的にみれば、増加した賃貸人の費用負担の一部は価格機構を通じて賃借人に帰着するという点に留意すべきです。なぜならば借地借家権が強化されればされるほど、貸地貸家経営は不利になるために、宅地、住宅供給者は賃貸形式よりも分譲形式を選択するようになり、したがって、貸地貸家の供給自体が減少し、その結果、地代家賃をはじめ、借地借家権を取得するための権利金、契約の更新のための更新料、増改築や借地権の譲渡、転貸における名義書換料、承諾料等が上昇するからです。これらの料金は借地借家権の物権化に対して借地借家人が支払わなければならない価格です。つまり法律によって借地借家権が物権化したからといって、借地借家人はその物権化した分を無料で手に入れることができるのではなく、対価を支払ってはじめて物権化した部分を手に入れることができます。
以上のように借地借家権が物権化すると短期的には地主家主が負担しなければならない賃貸借契約に伴う費用の割合が大きくなるので、借地借家人にとって借地借家は有利になりますが、地主家主にとってみれば、貸地貸家経営はそれだけ不利になるため、長期的には、貸地貸家の供給は減少することになります。

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