資産選択と土地

現金と当座預金は、その将来価値に関して不確実性が全くなく、完全な流動性と可分性を備え、一般的受容性を持ち、ほぼ完全に可逆的な資産です。このように狭義の貨幣は資産の性質のあらゆる点に関して完全ないしほぼ完全であるためにその収益率は低く、現実には、その名目収益率はゼロになります。それに対して流動性、可逆性、可分性について劣っている資産の収益率はそれだけ高くなります。言い換えれば、そのような資産は流動性、可逆性、可分性について劣っているために、その収益に比べて低く評価されることになります。さらに資産が不確実性を有している場合には、各種資産の収益率を比較することは簡単ではなくなります。例えば土地の一定期間当りの収益率はそれ自体不確実であり、確率変数であるため土地の収益率は定期預金の利子率よりも高いなどとは言えません。しかし、ある投資家のある土地の収益率の期待値は定期預金の利子率よりも高いとは言えます。いずれにしても、資産の収益が不確実であることは、投資家がなるべく危険を回避しようとするかぎり、収益が確実な資産よりも、それだけ劣った資産としてより低く評価されることになります。

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土地

自ら居住するために土地を保有している個人を考えてみると、この時彼は年々、土地用役を消費しているわけであり、もし、その土地を保有しているのではなく、借地しているとしたら、消費している土地用役に対して地代を支払わなければなりません。土地を保有している場合には、地代支払いという現金の移動はありませんが、いわば自分自身に地代を支払っていると考えればよい。このような自分自身に支払っていると考えられる地代は、帰属地代と呼ばれます。土地という財は耐久性があるので、その土地を利用するのをやめる場合には、売却することができます。したがって、土地を保有して住宅地として利用する場合にも、その土地を利用することをやめる場合にはどれだけの価格で売却できるかということが当然考慮されることになります。あるいは、その土地を売却せずに子供に相続させる場合にも、相続財産として、将来の土地の価格が考慮されます。しかし居住するためには必ずしも自らが居住しようとする土地を保有する必要はなく、その土地を借地してもかまいません。そこに居住しようとした土地を購入するために費やした資金を土地以外の資産の購入に当て、その収益を年々の地代支払いに充当し、土地用役を消費することもできたはずです。もし、土地に代る資産の収益の現在価値は、その土地を借地した場合の地代とその土地を保有して何期間か後に売却する場合の売却益、つまり、キャピタル・ゲインとの和の現在価値を上回っていると予想するならば、土地には投資せず、借地を選択するはずです。いま述べたことを最も単純な場合を想定し、簡単な数式を用いると、まず、次の二つの仮定を前提します。つまり、第一に住宅用役と土地、家屋およびその他の資産を売買または賃貸借するときに、手数料、契約の更新料、広告料等の費用は存在しません。また、土地を他の用途に用いるときの転用費用も存在しません。第二に所得税、間接税等の税制は存在しません。これら二つの仮定の下で、ある一定額の資産を持っている家計がある一期間だけある土地に居住しようとしているとします。この家計は、一定額の資産で、土地と家屋を購入して、その家屋に居住するか、それとも一方で、その資産を定期預金に投資し、他方で借家住いし、定期預金の利子で家賃を支払うか、いずれかを選択しようとしていると考えます。ただし、簡単化のために土地、家屋と定期預金はともに完全に流動的、可逆的かつ分割可能であるとし、いま問題にしている選択に関連する市場は、すべて完全競争的であるとします。
いま間題にしている家計の資産で、期首に購入できる土地と家屋の合計額をP0、その期末の価額をP1、この家屋を借りて居住する場合の一期間当りの家賃をR、定期預金の利子率をiとします。単純化のために家計はP1を確実なものと考え、リスクは考慮しないとします。ただし、一般的には、P1は各家計毎に異なるとします。

iP0-(P1-P0)>R

という関係が成立しているとします。式の左辺の意味は次のとおりである。家計は、土地、家屋を購入することによって、一方で定期預金に投資すれば得られた利益iP0を失いますが、他方で期末に(P1-P0)のキャピタル・ゲインを得ることになります。したがって式の左辺は、土地、家屋を購入して、そこに一期間だけ居住する場合の費用を示します。他方で式の右辺は定期預金に投資しその利子で借家の家賃Rを支払う場合の費用を示します。したがって式が成立していれば、この個人は借家を選択することになります。個人、法人を問わず、商業用地や工業用地あるいは農地として土地を保有している場合も、その原理はいま述べた住宅地の場合と本質的に同じです。
次にある土地を自らは使用せずに、他人に貸している場合を考えてみると、彼は土地を貸すことによって地代を得ます。また、土地を貸すのをやめて、売却するときには、売却益(キャピタル・ゲイン)を得るか,あるいは売却損(キャピタル・ロス)を被ります。したがって彼にとって土地を保有することの利益は、年々の地代と売却時の売却益とからなります。しかし、彼は土地保有に要した資金を土地以外の資産の購入にも当てることができたはずです。したがって、彼が土地以外の資産を購入しないとすれば、それは土地を保有することからの収益である年々の地代と売却益との合計の方が、土地以外の資産の収益よりも大きいと予想しているということになります。
現実には、土地が全く利用されず空地として保有されている場合があります。その場合には地代収入はゼロになります。しかし、適当な時期にその土地を売却し、その売却価額が取得価額を上回っていれば、空地のまま土地を保有しても利益があるかも知れません。以上から明らかなように、土地をどのように利用する場合にも個人及び企業は、年々の地代と売却時の土地のキャピタル・ゲインとの和から成る土地の収益と、土地に代る資産の取益とを比較して、土地を保有するか否かを決定します。端的にいえば、土地をどのように利用するかにかかわらず、資産として、土地の方が有利か、土地以外の資産が有利かということが、土地を保有するか否かを決定するわけです。

土地
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