建物の売買と焼失

土地付の家屋を、代金全部で3000万円、引渡や登記と代金支払は二ヵ月後という契約で買うことにし、手付金100万円を支払いましたが、約一ヵ月たった晩に、家屋は火事で全焼してしまいました。火事は、売主側の火の不始末が原因です。買主は、土地だけを引き取って残代金2900万円を払わなければならないのでしょうか。契約を解除して100万円を返してもらうことはできないのでしょうか。
売買の目的物が火事のため、売主の引渡が不能になった場合、その火事が売主の責に帰すべき事由によるか否かで、結果がまるで違います。売主の責に帰すべからざる事由、例えば類焼による家屋の滅失の場合は、危険負担の問題となり、買主は代金支払義務を免れることができません。これに反し、売主の責に帰すべき事由による履行不能のときは、債務不履行となり、売主は損害賠償の義務を負いまた買主はそれを理由に契約を解除することもできます。
本問の場合、売主が火の不始末が家屋の焼失の原因だということですが、売主の責に帰すべき事由による家屋の滅失であることは否定できません。判例も、家屋賃借人の妻の失火によって家屋が滅失した場合や、家屋賃借人の雇った仕込工員の失火による家屋の焼失の場合に、これらの者が賃借人の復務の履行補助者にあたるとみて、賃借人の責に帰すべき事由による履行不能だといっています。いずれにしても売主が注意をすれば避けることのできた火災ですから、売主には責に帰すべき事由があったといえます。

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売主の責に帰すべき事由に基づく履行不能という債務不履行が成立しますと、買主は、まず第一に、売主に対して損害賠償を請求することができます。つまり、本問の場合、土地付の家屋の売買という契約 はそのままにしておいて、買主は、契約の可能な部分の土地だけを引取、不能になった部分の家屋の焼失についての損害の賠償を請求することが可能です。この場合の損害は、目的物である家屋にかわる価値を意味し、したがってその賠償は、いわゆる填補賠償です。そして買主としては、家屋を引き渡してもらったら通常得たであろう利益の全部について損害の賠償を求めることができます。本問の場合、土地と家屋の代金六3000万円のうち、手付金100万円を支払っただけで、残代金2900万円の支払義務を負っていますから、この損害賠償請求権により、可能な範囲で相殺することができます。たとえば、家屋の焼失による損害が1300万円だったとしますと、1300万円の損害賠償請求権で残代金債務と相殺する結果、差額1600万円だけ支払えばよいことになります。
売主の責に帰すべき事由による履行不能の場合に、買主は、第二に、契約を解除することができます。つまり民法五四三条は、履行の全部又は一部が償務者の責に帰すべき事由に因りて不能と為りたるときは債権者は契約の解除を為すことを得と規定しています。そこで本問の場合は、土地付家屋の売買の一部が不能になったことを理由に、契約を全部解除することが可能です。契約を解除しますと、双方とも原状回復の義務を負いますので、すでに支払った手付金100万円の返還請求ができますが、それには、売主が受領したときからの利息をもあわせて請求できます。利率は特約がなければ年五分ですそのほかに損害があればその賠償も請求できます。ここに述べたのは契約の全部解除の場合ですが、契約の一部解除も可能です。つまり、土地付の家屋の売買で家屋に関する部分の契約のみを解除するということも可能です。
もし売主が 家屋に火災保険をつけていたら、保険の目的物の譲渡により、火災保険金請求権は買主に移転しうるのですが、保険会社の承認が通常約款により必要だとされていますので、承認がなければ請求権の当然移転を認めることは困難です。むしろ、売主がこの請求権を行使しうるかわり、買主に対し売主は前記の損害賠償義務を負うと解すべきです。この場合、売主は目的物の所有権を失っているので、被保険利益がなく、したがって保険金請求権を行使しえない、という考え方もありますが、所有権の移転は売主、買主の内部的な問題であり、対外的関係においてはなお売主に被保険利益は残っていると考えられます。
このように売主が火災保険金請求権を行使しうることになりますと、買主は、この請求権により売主が得る利益に対し、自らの損害の限度において償還を請求することができます。これを代償請求権といい、民法に規定はありませんが学説上認められており、近時、判例も、履行不能を生せしめたと同一の原因によって、債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には、公平の観念にもとづき、債権者において債務者に対し、履行不能により債権者が蒙りたる損害の限度において、その利益の償還を請求する権利を認めるのが相当であるといっています。

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