建たない建売住宅

土地付の建売分譲住宅を買う契約をしました。建物は設計図のとおりにこれから建築するとのことで、代金の二分の一を支払い、土地の移転登記をしてもらいましたが、建築にはいっこうに着手しようとしません。何度も催告していますが、売主には全く誠意がみられないようです。私としては早く建物が欲しいのですが、どんな方法があるでしょうか。
土地付の建売分譲住宅の売主が建物を建ててくれない場合に、いくら買主が建築を催告しても売主がそれに応じなければ、売主自身に建築を強制的にやらせることは無理ですので、第三者に建築させることを裁判所で命じてもらい、その場合にかかった費用や損害賠償を売主から取り立てる、という方法が考えられます。すなわち民法四一四条二項本文は、債務の性質が強制履行を許さざる場合に於て其債務が作為を目的とするときは債権者は債務者の費用を以て第三者に之を為さしむることを裁判所に請求することを得と規定しており、他人が代わって実現できる債務につき他人にやらせるという形で強制執行をしますので、これを代替執行と呼んでいます。本問の場合、すでに建物の設計図ができているというのですから、あとは設計図どおりに売主自身が建築しても、第三者が建築しても、できあがる結果に違いはないはずで、ただ第三者にやらせた場合の費用を売主に支払わせるという問題が残るだけです。
この代替執行のほかに、強制履行の方法としては、裁判所は申立に因り決定を以て相当の期間を定め債務者が其期間内に履行を為さざるときは其遅延の期間に応じ一定の賠償を為すべきこと又は直ちに損害の賠償を為すべきことを命ずることを要す。という執行の方法があります。しかし、建物を設計図どおりに建築するという債務は、第三者が代わってなしうる債務だから、その強制は間接強制によるまでもなく前記代替執行によるべきだ、というのが今日の多数学説であり、判例も、傍論ではありますがそのことを認めています。

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土地

本問の場合、土地、建物の代金の二分の一をすでに支払っているということですが、ともかく代金全額を支払う義務があり、他方、代替執行により第三者に建築させた費用や売主に対する損害賠償金を売主から取り立てることができます。このうち費用については、民事訴訟法七三三条二項は、債権者が代替執行の申立をした場合、債権者は同時に其行為を為すに因り生ず可き費用を予め債務者に支払を為さしむる決定の宣言あらんことを申立つることを得担其行為を為すに因り此より多額の費用を生ずるとき後日其請求を為す権利を妨げず。と規定しています。すなわち、建築をやらせる第三者とあなたとが建築請負契約を締結し、その際の材料費や請負の報酬につき、あなたがともかく支払をすべきことになりますが、その費用は本来分譲住宅の売主が負担すべきであったものを買主のあなたがやむなく立て替えるということになりますので、それを売主に対して予めあるいは事後的に償還請求することができます。事後の請求権の理論的根拠としては、売主は不当に利得をしており買主がそのため損失を受けたという理由で不当利得だといってもよいし、また売主のやるべき事務を買主が義務なくしてやったという事務管理に基づく費用償還請求権だといってもさしつかえありません。さらには、売主が本来なすべきであったのを怠ったことによる債務不履行に基づく損害賠償として請求することも考えられます。前記民事訴訟法七三三条二項も、こうした請求権の存在を前提にしたうえで事前の請求を認めたものです。
このうち、損害賠償として請求するときには、建築させる第三者に支払った費用のほかに、売主の不履行によって生じた一切の損害を含めて売主に請求できますが、不当利得や事務管理による請求の楊合には、第三者に支払った費用の請求のほか、別個に売主の不履行によって生じた損害の賠償をあわせて請求する必要を生じます。
本問の場合、土地と建物との価格の比率が不明確ですが、この費用償還請求権、損害賠償請求権により可能な範囲で残り二分の一の代金債務と相殺することが考えられます。相殺した結果なおあなたに支払義務が残っていればそれだけ支払えばよいし、費用償還請求権、損害賠償請求権の金額が残代金二分の一を上まわれば、それの支払を売主に対して請求することができます。こうした費用償還請求権、損害賠償請求権は、金銭の給付を求める債権ですから、強制的に売主からとりたてることは容易です。つまり、民法四一四条一項本文のいわゆる直接強制により、売主の財産を差し押え、換価することによって実現できます。
以上は、売主に建物建築 の義務が残っていることを前提にしたうえでの議論ですが、本問の場合、売主がどうしても建築に着手しないときには、売主の債務不履行を理由に契約を解除することもできます。つまり、相当の期間を定めて建築するように催促し、その期間内に売主が履行しなければ、買主は売買契約を解除することができます。解除をすると当事者は原状回復の義務を負いますから、買主は、土地の登記をもとどおりにしたり、引渡を受けていればそれを返還する反面、支払った代金二分の一の返還を売主に対して請求でき、さらに損害の賠償を請求できます。
これは全面的に契約を解除した場合のことですが、買主が土地だけは手放したくないということであれば、建物についてのみ契約を解除することもできます。すなわち、土地付の建売分譲住宅の売買は、土地と建物とにつき契約を分けて処理することが可能であり、建物についてのみ契約を一部解除することが許されます。その場合には、やはり相当の期間を定めて建築を促すという催告の手続は必要ですが、解除をした結果、土地と建物との価格の比率に応じて、すでに支払った二分の一の代金の過不足の問題を処理することになります。その際、売主が建物の建築を怠ったことによる損害賠償の請求ができることはいうまでもありません。
なお、一部解除が可能なのに契約を全部解除することは解除権の濫用として許されない場合がありますが、本問のような土地付の建売分譲住宅の売買のときは、全部の解除と認めてもさしつかえないと考えられます。

土地
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