他人の不動産の売買

Aから土地付の家屋を買い受けましたが、登記をする時になって、実は家屋はBのもので、AB間に売買の話が進められているものであることが判明しました。そのため、すぐには登記を移せないのですが、このように他人の物件でも売買できるものでしょうか。
日本民法では、他人の物の売買も有効です。売買は、売主がある財産権を買主に移転する義務の発生を目的とする契約ですから、他人の物の売主のように目的物の所有権を直ちに買主に移転することができなくてもかまいません。そこで民法五六〇条には、「他人の権利を以て売買の目的と為したるときは売主は其権利を取得して之を買主に移転する義務を負う」と定めています。ただ、売主のこのような義務を実際に果たすことができるかどうかの問題は残りますが、この問題は売買契約が有効かどうかには関係がないわけです。
ところで、売買された物の所有権は、契約だけで売主から買主へ移転することになっていますが、それは、売主が契約と同時に買主へ移転することができるような所有権をあらかじめ持っている場合にかぎられています。本問のように他人の物の売買では、売主は所有権を待っていませんから、契約と同時に所有権が買主に移るということはありません。他人の物の買主は、売主に対して物の所有権移転および引渡を請求することはできますが、買主が物の所有権を手に入れることができるのは売主が他人から物の所有権を取得した時であると考えられています。したがって、本問の場合、AB間の話がまとまるまで待っていなければならないわけではなく、Aと売買契約を結び、AB間の話がまとまったら直ちに物の所有権を取得することを考えていてよいわけです。しかし、期待通りに話がまとまらないことも考えてねかねばなりません。この場合には次のような問題が出てきます。
本問のように、他人の物を売った売主が、買主の期待通りに物の所有権を買主に移転することができなかった場合や、一定量の物を売買したのに実際には数量が不足していた場合や売買した物に予想しなかった欠点があった場合などには、売主は買主に対して一定の責任を当然に負わねばならないことになっており、この責任は売主の担保責任といわれています。売買契約にかぎらず、一般にある契約を結んだ者は、その契約通りの義務を果たさない場合には債務不履行の責任を負い、損害賠償をしなければならないとか、相手方は契約を解除することができることとなっています。したがって、他人の物の売主がその物の所有権を買主に移すことができないことや、欠点のある物を買主に渡すことなどが、売主が契約通りの義務を果たさないことに当たるならば、売主の担保責任というのは一般の債務不履行責任と同じことを意味することとなりますが、この二つの責任は性質が違うという考え方があります。特に、一般の債務不履行責任では、義務者が故意にあるいは過失によって義務を果たさないことが条件となっていますが、担保責任では、売主が他人の物の所有権を買主に移すことができないとか、欠点のある物を渡したという事実だけあればよいと考えられています。また、売主の担保責任を追及することができる期間は一年と短く制限されているのに対し、一般の債務不履行責任では、一〇年の間それが許されると解されています。

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土地

本問の場合、契約当時の事情ではっきりしないところがありますが、物の所有権を移転することができない売主は担保責任を負わねばなりません。したがって買主は、契約を解除して損害賠償を請求できます。ただ、契約の当時買主が他人の物であることを知っていたときは損害賠償の請求はできません。しかし、判例によりますと、他人の物の売主にとってその義務を果たすことができない事情が契約当初からある場合であろうと契約後に生じた場合であろうと、また売主の過失によって義務を果たすことができない場合であろうと過失がない場合であろうとにかかわらず民法五六一条は適用されますが、後発不能の場合で売主の債務不履行責任も考えられるときには五四三条による解除もでき、悪意の買主でも五四五条三項による損害賠償の請求ができると考えられています。なお、買主の責に帰すべき事由によって売主が義務を果たすことができない場合には、五六一条の適用は認められていません。この売主の担保責任としての損害賠償については、その法的性質および賠償範囲の点で学説、判例の考え方は一致しておりません。大体四つの考え方があり、履行利益の賠償説、信頼利益の賠償説、原則として信頼利益の賠償だが売主に過失があるときは履行利益の賠償とする説、対価的制限説です。履行利益の賠償説では、契約が完全に履行された場合に買主が受けたであろうと考えられるのと同一の経済的利益の賠償とします。信頼利益の賠償説は、解除によって契約は初めに遡って効力を失うが、買主が契約を有効と信じたために被った損害の賠償とします。原則として信頼利益の賠償だが売主に過失があるときは履行利益の賠償とする設は、信頼利益の賠償説の考え方を原則としますが、売主に過失があるときは信義則に従い売主の賠償範囲を広く解します。対価的制限説は、損害賠償を買主の負担した対価の範囲に限ろうとする考え方で、例えば民法五七〇条の瑕疵担保責任が問題となる場合で買主が瑕疵ある物を受領したときは、損害賠償額は瑕疵ある物の実際上の価格と代金との差額を標準とするのです。四説ともそれぞれ理由があり、どれが通説ともいえない状態ですが、この問題について の判決例としては、信頼利益の賠償説と対価的制限説の考え方を示した高等裁判所の判決があるだけです。

土地
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