売買と第三者に対する対抗力

土地と建物を買い、契約は公正証書にしておき、代金の支払と同時に権利証の引渡も受けました。しかし、どんなに確実な文書で契約をし、権利証をもっていても、登記をしておかない限り、売主がこの土地と建物をさらに第三者に売ってしまうと、これを買った第三者には抵抗できないのでしょうか。そうなった場合、この契約はどういうことになるのでしょうか。
売買契約は、所有権を移転することを約束する契約です。しかし、所有権はこの売買契約だけで移転するか、またいつ移転するかについては、いろんな説があります。まず第一は、所有権移転は売買契約だけで足り、しかも売買契約締結と同時に移転を生ずる、とする判例、および従来の通説の立場です。第二は、売買契約だけで所有権移転を生ずるのではなく、物の引渡、登記、代金支払などの外部的特徴を伴うところの、所有権移転そのものを内容とする物権契約によって移転する、という学説です。第三は、所有権移転は売買契約という債権契約の効果として生じ、物権契約を必要としないが、所有権移転の時期は、売買契約と同時にではなく、代金支払または引渡、登記のときにまでずれる、とする学説です。大勢は第三説を支持しますが、所有権移転は代金支払、引渡、登記のいずれか一つがなされれば生ずる、と解すべきではないこと、代金支払と引渡、登記のもつ意味は質的に異なること、したがって、代金支払があれば原則的に所有権移転を生ずるが、引渡、登記があったからといって必ずしもそうではないこと、など強調したいところです。

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本問の場合、このの第一説によれば、売買契約と同時に所有権を取得したことになりますし、第二説および第三説によれば、代金を支払ったが故に所有権を取得したことになり、いずれにせよ所有権者になったのです。しかし、所有権者になったとしても、この所有権取得を当然に売主以外の一般第三者に対抗しうるわけではないのです。買主がさらに登記をそなえた場合にだけ第三者に対抗できることになります。
契約を公正証書にしていますが、たしかに公正証書は確実な文書です。しかし確実という意味は、売買があったことを証明する証拠として、ないし、金銭の支払などにつき民事訴訟で勝訴の確定判決がなくても強制執行をなしうる手段として確実であるということであって、ここでいう対抗要件としての登記に代わりうるものではありません。また、買主は権利証を受け取っていますが、権利証は登記手続をするときに必要なひとつの書類であって、もちろん登記そのものではありません。しかも、権利証を持っているからと安心していても、売主がその気になれば、権利証に代えて保証書で登記手続ができます。さらに、土地、建物の引渡を受けたとしても、登記をそなえなければやはり第三者に対抗できません。
本問で、買主が登記をそなえなければ所有権取得を第三者に対抗できない典型的な場合が、売主による二重譲渡の場合です。第二の買主がたとえまだ登記をそなえていない段階でも、買主に登記が ない以上、所有権を取得したことを主張できないのです。さらに、第二の買主が登記をそなえてしまうと、もはや登記を得ることができなくなり、所有権を取得したといっても全く無意味になってしまいます。ただ、売主に対して売買契約上の責任を問いうるだけです。
たしかに、売主に、一旦売ったものをまた第三者に売る権利があるだろうか、買主が所有権者になった以上、売主は無権利者になったはずであり、したがって、第三者がたとえ登記をそなえても所有権を取得できないのではないか、という疑問が生ずるのも、無理からぬところです。学者はこの点の論理的説明に苦心しています。しかし、ここに述べた結論は変わらないのです。というのは、登記制度を設けて不動産の所有権移転や抵当権設定などの物権変動があったことを公示し、一般の取引安全をはかる、という大きな目的が優先しているからです。しかも現在の法律制度では、物権変動の公示のために、国が市民に対して登記するよう直接に強制するのでなく、登記をしないと法律的に不利益な取扱いを受けるとすることによって、間接的に登記を促すことにしています。このようにして、本問の場合、登記をしていない買主の不利益において、登記されていない物権変動はないのだと考えた第三者の信頼が保護されることになります。決して、買主との約束を守らなかった売主の保護に意味があるわけではありません
もっとも、第三者の登記に対する信頼保護といっても、その第三者がすでに物権変動があったことを知っていたら、この第三者を保護する必要がないようにも考えられますが、それでもなお、第一の買主に登記がなければ対抗できないところの第三者に該当する、とするのが判例、通説です。つまり、ここで保護さるべき第三者の信頼とは、登記がない以上は、たとえ実際に売主が第一の買主に不動産を売っていたという物権変動があったとしても、売主がさらに第二の買主へ売ったというようにこれと競合する物権変動を生じたときは、登記がなければ実際にあった第一の売買はなかったものとして取り扱われることかありうる、ということに対する信頼、という強い意味を持っています。もっと平たく言えば、第一の売買にまだ登記のない段階では、第三者が割り込んでゆける状態なのだ、ということです。これは、第一の買主と第二の買主との自由競争の余地を法律的にも認めることを意味します。
以上の理由から、できるだけ早く登記をすませることが必要です。

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