現金以外の支払方法

土地や家屋を買った代金は、金銭債務ですから、現金で支払うのが本則ですしかし、当事者間で話合いがつけば、現金払以外の方法で決済することをとりきめてもかまいません。契約は自由ですから、売主さえ承知すれば、代金を払ったことにする方法はいろいろあります。郵便為替で送金することは現金払と同じに扱われますが、手形や小切手で支払うというのは、実際上普通になされていることです。そのほか、債券を譲渡することも、品物を提供して代金の支払に代えることもできます。また、代金の支払に代え、 その代金額だけ借金したことにして借用証書を作成するという方法もとれますし、売主に対して貸金や売掛代金などがあるときは、相殺を主張してその分だけ代金を支払ったことにするという方法も考えられます。
ところで、現金払以外の決済方法のほとんどは、売主がそれでよいと承知したときにとれる方法であって、いつでもこの方法をとってよいというわけではありません。手形や小切手による支払方法でも、常に必ず許されるとは限らないのです。そこで、以上の現金以外の支払手段の仕組や取扱いについて簡単な考察をしてみましょう。
手形、小切手の制度は、近代的取引において、売買代金の支払手段として重要なものですが、手形と小切手とではその仕組や機能が違います。
手形には、為替手形と約束手形があります。為替手形は、振出人がB支払人にあてて受取人に一定金額を支払ってくれと頼む形式の証券で、売主以外の第三者に金銭債権を有する買主がとれる方法です。約束手形は、振出人から受取人に一定の期日に一定金額を支払うという形式の証券で、現在は現金の手特ちは十分でないが近い将来に現金の用意ができるという場合に、支払を先に延ばしてもらうための方法です。
小切手は、銀行その他の金融機関に預金を持っている人が、その預金から支払をするという当座勘定契約をしておいて、銀行から交付される小切手帳に一定金額および必要事項を書き込んで交付する証券で、自分で現金を取り扱わないで、銀行に、自分の預金から払ってもらう、という方法です。支払人は必ず銀行ということになります。
このような手形や小切手を持っている人は、手形の場合は支払日に相手方に呈示して、小切手の場合は一覧払いですからすぐそれを銀行に呈示して、券面に記載された金額の支払をうけられます。呈示期間は、手形は満期の翌日から三年以内、小切手は振出日からI〇日以内となっています。つまり、法律的にみると、手形とか小切手とかいう証券の上に一定金額の支払を受けられるという権利か付着していることになるわけで、その権利の行使や譲渡のときにはその証券を所持し交付しなければならないのです。したがって、これは有価証券だということになります。
要するに、手形(約束手形)は、取引の 都合上、今すぐ現金を支払えないが三ヵ月後なら支払えるというとき、三ヵ月後を満期とする約束手形を振り出してそれを売主に交付しておけば、三ヵ月後には現金になるし、三ヵ月を持たなくても銀行で割り引いてもらえば現金で支払を受けたと同じことになるので、支払手段としての役割を果たすことになるのです。手形の満期日に振出人(買主)が現金を用意できないときは、その手形は現金化されないことになりますが、このことを「不渡り」といいます。手形が不渡りになっても券面の金額についての債権はありますから、訴訟をへて強制執行ができます。小切手は、自分で現金の出納をするとミスをしたり危険が伴ったりするので、金銭を専門に扱う銀行に代わってやっても らうための用具だともいうことができ、実際には、ほとんど現金の支払と同じに考えられています。したがって、小切手は、手形にくらべて、売買代金の支払手段としての役割は大きいわけですが、銀行預金額が小切手金額に足りない場合は、手形と同じように不渡りの問題が起こります。
手形、小切手、特に小切手は、売買代金支払手段としての役割は大きいのですが、売主によっては、手形や小切手では受け取らない場合がありえます。手形や小切手による支払は、債務の本旨に従った提供とはならない、というわけです。判例は、郵便為替や振替預金払出証書で支払った場合には、売主が承知しなくても、現金で払ったと同じく債務の本旨に従った支払だが、手形の場合はもちろん、小切手による支払でも、売主の了承がないかぎり、それだけでは便務の本旨に従った提供にはならないといっています。小切手でも不渡りになることがあり、確実性において一般には郵便為替などより劣るというわけです。しかし、同じく小切手といっても、銀行取組みの送金小切手や線引小切手による支払の場合は、ふつうの取引では有効な弁済の提供があったものとみていますし、学説も、銀行の振出、裏書または支払証明つきの小切手は、確実性があり、一般に現金と同一視する慣習があるとみて、それによる支払は債務の本旨に従った提供があったものと解しています。
手形は有価証券ですから、満期前に現金が必要になれば、裏書をして他人に譲渡することができます。これを手形割引といいます。不動産の買主が第三者振出しの約束手形を譲り受けて待っているという場合がありうるわけで、売主が承知しさえすれば、その約束手形を、さらに裏書して譲渡し、それで支払を済ましたことにすることができます。ところで、手形を譲り受けたり譲り渡したりするときは、裏書が絶対に必要です。しかも、その裏書が連続し ていなければなりません。ここに、裏書の連続とは、手形の裏面に、振出人から宛名人、宛名人から譲渡人へと、その住所、氏名が連続して書き込まれていることをいいます。裏書の連続があれば、手形の所待人は適法な所待人とみなされ、満期日に振出人から現金を支払ってもらえるわけです。
債券譲渡の方法による場合、不動産の買主が、公社債を持っている場合は、それを売って現金に換えてから代金の支払をするということにするのが普通ですが、売主が承知すれば買主が持っている公社債券を交付して支払に代えることができます。ところで、この用に供することのできる債券としては、国債、地方債、政府保証債、事業債、金融債などがあります。株券の譲渡もこの類です。一般の債権の譲渡には、債務者への通知や承諾が必要ですが、証券化された債権の譲渡の場合には、手形にみたように、裏書して証券を交付する方法で譲渡できます。無記名債券の場合は証券の交付だけで済みますし、換金も比較的簡単なので売主としても容易にこれらによる支払に応じてくれるはずです。

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