不動産業者の責任

取引業者との仲介委託契約は、委任に準ずべき関係といわれています。したがって取引業者には、委託された仲介事務を善良な管理者の注意をもって遂行する義務があるわけです。この善良な管理者の注意(善管注意)というのは、取引業者として取引上一般に用いるべき注意のことですが、取引業者が仲介の専門家であることをも考慮して、通常人以上の高度の注意が要求されるものと解されています。その善管注意義務の内容は、売買当事者間の契約が支障なく履行されて当事者双方がその契約の目的を達しうるよう配慮して仲介事務を処理することが中心です。したがって仲介人は、売主や貸主が正当な権判者であるかどうか、目的物件に特別な瑕疵がないかどうかなどを調査して、依頼者が損害を披ることのないように配慮する義務があることになります。外国では取引業者にここまでの義務を負わせていないところも多いのですが、日本では、依頼者が一般に法的知識が低いことや、外国に比べて手数料が割高であることなどから、裁判所でも業者には重い注意義務を負わせる傾向にあります。また宅地建物取引業法によって、取引業者は、目的物件の上に登記されている権利の種類、内容、名義人、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限、私道に関する負担、飲料水・電気、ガスの供給、排水施設の整備状況など、種々の事項について説明する義務を負わされています。
法令の制限というのは、都市計画法による緑地地域内の建築制限とか、建築基準法による用途地域内の建築制限とか、農地法三条による権利移転の制限とか、その他たくさんの事項が政令で定められています。
業者はこれらを説明するためには十分に調査しなければならないわけで、大変な負担だと思われますが、さりとて依頼者にとっては、どれをとってみても重大な利害関係のある事項ばかりです。しかも、依頼者の多くはこのような法律関係の調査に関してはまったくの素人であるのに反し、取引業者は相当の報酬の得られる専門家なのですから、このような重い負担を課したものでしょう。また、業者の中には、この制限を知りながらも、売買不成立になるのをおそれ故意に隠して売買を成立させ、買主に思わぬ損害をかける例もありうるのです。近年の判例にもあるのですが、買った土地が緑地地域のいわゆる「一割地区」で、土地の一割の面積の建築しかできない地域であったため、目的を達しえないので売買を解除したが、手付金30万円を棄てなければならなかった、という場合、取引業者が知りながら告げなかったのは、故意でなければ不注意だとして、不法行為の責任が課せられ、30万円の損害賠償が命じられました。この判決は前記の宅地建物取引業法一四条の三ができる以前のものですが、緑地地域であることなどは業者として当然に注意すべきことですから、依頼者へ告げなかったのは、故意でないにしても不注意があることになるわけです。

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土地

不動産業者を介して、土地を買い受けました。売買の交渉はすべて不動産業者が相手で、売主とはとうとう一度も会わずに終わりました。ところが、その後調査したところ、買い受けた土地は緑地帯になっていることが判りました。この不動産業者に対して、どのような責任を追及することができるのでしょうか。この場合、売買契約の締結にあたりこちらの予定建築面積を申し出て買い受けたのであれば、建ぺい率の不足を理由として、売主に対し、瑕疵担保責任を追及して、契約解除と損害賠償の請求ができます。本問の文面からみると、買主からそのような申出はなされていないだけでなく、取引業者に契約締結の代理権まで与えているかにみえますが、もし業者の代理行為によって無条件で現状有姿のままで買い受けたことになっているとすれば、売主の責任は追及することができない代りに、不動産業者の責任を追及できます。そして、今さら売買を解除するすべもないので、結局この土地を転売して他から適当な土地を買い入れなければなりませんが、少なくともその差額は損害賠償として不動産業者へ請求できることになりましょう。
緑地帯である ことを調査しなかったことについて依頼者自身の不注意は問題にならないでしょうか。従来、不動産業者が責任を追及されたときはいつでも、業者は依頼者にも不注意があったとして損害賠償額減額つまり過失相殺を主張するのが例になっていますが、これがみとめられた判例は全くないようです。不動産業者は専門家なのであって、依頼者はそれを信頼して相当に高い手数料も支払うのですから、業者の不注意の結果を依頼者に転稼することはみとめられないのです。
本問において、売主は売主と一度も会わずに終わった由ですが、このような場合には、売買価額や手数料が適正であったかどうかも疑問です。前にも判例が あり、買主が売主との面談を要求したのに、仲介業者が両者を会わせないでおいて、業者自ら安く買い高く売りつける、いわゆる介入行為をおこない、手数料のほかに多額の利ざやをもかせいでいたわけですが、これは、双方を故意に会わせなかったことが取引業者の善管注意義務違反だとして、損害賠償責任を負わされたことがあります。本問についても同じことが考えられるでしょう。介入行為は、これを依頼者の了解なしにおこなうことは信義誠実の原則、公定報酬     にも反することになりますが、自ら売主、買主となるのか単に媒介するのか、予めその立場を明示する義務が課せられています。この違反は業務停止の処分を受けることになります。
仲介業者は、適正な物件を媒介すれば責任は果たしたことになるのであって、買主の支払能力まで保障する義務はない、というのが諸外国の例です。だから、買主が代金を支払わなかったり、売主が目的物を引き渡さなかったりしても、そこまでは責任を負わない、と考えられています。日本でも一般論としては同じように考えるべきでしょう。特に悪質な売主や買主であることを知りながら告げなかったとか、少なくとも重大な過失がないかぎ り、不履行の責任まで業者が負うべきではないと思われます。その点については、依頼者に注意義務があるといえましょう。

土地
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