法人との契約

土地の売買にあたり、登記簿を見ると会社の所有になっており、交渉に出てきたのは、同会社の経理部長という人です。買う場合には、この経理部長の人を相手に契約書をとりかわしたり、その人の名義での受領証で手付金を払ったりして大丈夫なものでしょうか。
この場合の経理部長が法人たる会社の所有地を処分できる機関であるかどうかの問題は、会社の定款とか内規というようなものでどのように職務の分担が決められているかによって、答えが違ってきます。つまり、会社を代表して第三者と取引する者の権限は、原則として法人内部の規制によってかなり明確に決められていますから、抽象的にはお答えしにくいと言わざるをえません。正確にいえば、会社を代表するのは代表取締役であり、経理部長といえども商業使用人にすぎず、会社の代表期間とはいえませんが、定められた職務を行なうについては、外部に対し会社を代理する権限を持つと考えられます。

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土地

一般には、経理部長は会社の経理一般を司る責任者ですから、会社の財産を管理し、処分の認められた財産を売却するについては、会社を代理する地位にあるとみてよいと思われます。ただ本問での問題は、土地の売却が株主総会ないし取締役会などの会社の方針を決定する機関によって認められたものかどうかです。もし、会社経営のため土地売却が必要という総会の決議があったり、取締役会が業務執行の一環として土地売却の方針を決めているとすれば、経理部長を相手に取引されてなんら心配はない、と考えられ。ところが、このような取決めがないのに、経理部長が自己の一存で会社財産を処分しようとしているのなら、本来代理する権限のない事柄について経理部長が会社にかわって売買をしたことになり、会社は「知らぬ存ぜぬ」という抗弁を出す可能性があります。ですから、その土地を会社が本当に売ろうとしているのか、経理部長にその点についての代理権限があるのか、を調べられるのが一番安全ですが、そういう面倒なことはできないし、また、そんなことをすればカドが立つというような場合もありうるわけで、そんな場合には、民法一一〇条の表見代理の問題が現実化してくるわけです。
法人の機関の代理権は、法律ないし自治的規範で決まっているため、その範囲を確定するのはさまで困難ではない、ともいえるわけでして、代表機関が範囲をこえる行為をしているのではないかという不安があれば、すぐ調査できるのだから、民法一一〇条の表見代理は、任意代理の場合にくらべて成立し難いと説かれています。多くの判例は、市町村長の権限をこえる行為について、表見代理を否定しています。しかし、町長が権限をこえて町有財産を売却した事案について成立を認めたケースもあり公法人とはちがって直接に公益が問題にならず、権限の分配も公法人ほど公知でない会社については、成立の認められる余地は大きいといえますし、事実、商業使用人に関しては、表見代理を容易に認める傾向にある、とさえ思えます。本問の場合、経理部長に会社所有上地を売却する権限があるとみるのが一般でしょうから、表見代理成立の可能性が大きく、会社が売ろうという意思をもっているかどうかを調べなくても、大丈夫だろうと思われます。
お寺の土地を買う際には、やはり特別に注意すべきことがあります。まず第一に、お寺は宗教法人法にいう宗教法人ですから、三人以上の責任役員が置かれ、原則としてこれらの人たちの互選により決められた一人の代表役員がお寺を代表するということです。したがって、取引するにあたっては代表役員を相手方にする必要があります。第二に、お寺が不動産または財産目録に掲げる重要動産を 処分しようとするときは、そのお寺の定めた特別の手続をふむか、定めのないときは責任役員の過半数が処分に同意することが必要であるほか、少なくとも一ヵ月前に信者その他の利害関係人に対して、処分行為の要旨を示して公告しなければならない、ということです。これに違反するときは、土地が境内地であれば、売買行為は無効とされます。ですから、その土地が境内地か境外地かを調べる必要があります。境外地なら、二三条に違反する売買も、役員の内部的責任の問題にとどまり、有効といえます。

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