借家の法制度

 借家というのは、家屋(建物)の賃貸借ということです。建物には住宅(戸建住宅・アパート・マンション)のほか、店舗、事務所、工場、倉庫などの建物がありますが、それらすべての建物の賃貸借を「借家」と総称することができます。
 不動産の利用権(「用益権」ともいいます)としては、民法上、物権的利用権と債権的利用権がありますが、借地と異なり、借家は債権的利用権だけが認められています。債権的利用権は賃賃借にもとづく賃借権と使用賃借にもとづく使用借権です。このうち、使用貸借は無償で貸借する契約ですから、使用借権は賃借権ほど社会的重要性を有しません。通常の建物の貸借は賃貸借による賃借権で、これが多くの紛争をひき起こすのです。
 賃貸借については、民法(明治二九年制定・同三一年施行)に規定があります(六〇一条・六三一条)。民法の規定は、当事者の合意が優先する原則(契約自由の原則)のもとで、合意がないときの紛争解決の拠り所として設けられたもので、両当事者の自由・平等を基調としています。
 民法制定後、借家をめぐる社会経済情勢の変化、ことに住宅問題の登場に伴い、種々の借家特別法が制定されました。大正一〇(一九二一)年の借家法の制定(存続期間の保障・第三者対抗力その他)、昭和一六(一九四一)年の借家法の一部改正(解約申入れおよび更新につき正当事由制度の導入)、地代家賃統制令(昭和一四年国家総動員法一九条にもとづき制定、昭和二一年勅令四四三号、昭和二七年法律八八号により法律としての効力を認められ、昭和六一年一二月三一日廃止)、昭和四一(一九六六)年の借家法の一部改正(家賃増減額請求権の効力制限、内縁の妻等の居住権の保護)のほか、大正一二(一九二三)年の関東大震災による借地・借家紛争の処理に関する借地借家臨時処理法およびこれを承継した昭和二一(一九四六)年の罹災都市借地借家臨時処理法などがあり、建物賃貸借当事者の利害調整、とりわけ借家人の保護に大きく寄与しました。しかし、その後の土地・建物の利用状況の変化等に対応するため、平成三(一九九二年新たに借地帯家法が制定され、平成四(一九九三年八月一日から施行されました)。

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 大正一〇(一九二一)年に制定された借家法(以下「旧借家法」といいます)は、平成三(一九九一)年に改正され、新たに借地借家法に生れかわりましたが、借家法の基本的な仕組に変更はありませんでした。なお、借地借家に関する規定は借地借家法第三章に定められています。
 そこで、まず借家法の基本的な仕組について簡単にふれてみましょう。
(1)借地借家法の適用ある建物
 一個の建物のみならず壁などによって他の部分と区画され、独占的、排他的支配が可能な構造・規模を有する建物の一部(区分所有権)にも借地帯家法の適用があります。ですから、戸建の建物のほか、アパート、マンションなどについても借地帯家法が適用されます。建物の用途は居住用であれ非居住用であれ、区別されていません。
(2)借家権の対抗要件
 賃貸人(平手が所有する建物(マンションのような区分所有も合みます)を第三者に譲渡(売却や贈与)した場合には、民法では借家権つまり建物賃借権の登記がなされていなければ、借家人は第三者である建物譲受人に対し、借家権が存することを対抗(主張)することができません。しかし、借地借家法では、借家人が建物の引渡しを受けていれば、対抗することができるようになっています。
(3)借家権の存続期間
 建物の賃貸借には、当事者間の約定で、期間の定めのある場合とない場合とが存在します。期間の定めは一年以上二〇年以下の場合はそのまま有効です。しかし、一年未満の期間を定めたときは期間の定めのない賃貸借となります。また賃貸借にあたり契約書を作成していない場合、あるいは当初から期間の定めをしない場合もありますが、これも期間の定めのない賃貸借となります。
(4)正当事由制度
 借地借家法では、期間の定めのある借家権は更新がないかぎり期間満了のときに終了する、期間の定めのない借家権は解約申入れから六ヵ月経過すれば終了することになっています。しかし、更新拒絶および解約申入れにつき正当な事由が必要であると定めています。裁判所の正当事由の有無の認定は厳格で、双方の諸事情を比較衛星し、社会的観点からどちらがその建物をより必要とするかを判断して決めます。立退料の提供も家主側の事情の一つとなります。
 なお、家主が正当事由にもとづく更新拒絶もしくは解約申入れをしないかぎり、借家人は引き続き前契約と同一の条件で借家を使用し続けることができます。これを「法定更新」といいます。
(5)造作買取請求権制度
 家主の同意を得て建物に付加した造作および家主から買い受けた造作があるときは、借家人は賃貸借終了時に時価でその造作を買い取るべきことを家主に請求することができます。もっとも、この造作買取請求権については、家主と借家人との間で、借家人は将来、造作買取りを請求しないという約束をすることもできます。
(6)強行法規性
 以上の(2)、(3)、(4)の制度に反する特約を結んでも、その特約が借家人に不利な場合は無効とされます。
(7)家賃の増減額請求
 地代家賃続制令が廃止されたため、家賃についての規制はまったくなくなりましたが、家主が勝手に値上げをしたり、借家人が勝手に値下げすることはできません。家主の値上げ通知に対して、借家人は自分が適当と思う額を主張し、家主がその額を受け取らないときは、借家人が相当と認める金額を供託して支払うことができます。これに対し、借家人が減額を請求する場合は、話合いかつくまでは家主が相当と認める額を支払わなければなりません。話合いで解決がつかない場合は、最終的には、裁判所において適正額が決定されます。裁判所の決定した適正額と借家人の支払額の差額については、年一〇%の利息が付加されます。なお、家賃の増減額請求の裁判を起こす場合は、あらかじめ調停を申し立てる必要があります。
(8)内縁の妻等の居住権
 居住用建物の借家人が相続人なしに死亡した場合に、内縁の夫婦関係や事実上の養親子関係にある者は借家権を承継することができます。
(9)期限付建物の賃貸借
 転勤などで一時的に空家となる場合や、近い将来、建物を取り壊す必要があるが、転勤から戻ってくるまでの間、あるいは建物を取り壊すまでの間、建物を賃貸してもよいという場合があります。このような場合には、賃貸人の不在期間の建物賃貸借、または取壊し予定の建物の賃貸借をすることにより、家主は前者の場合は一定の期間経週後に、また後者の場合は建物取壊しの時に借家人から建物を明け渡してもらうことができます。
(10)一時使用のための借家権の例外
 借地借家法は一時使用のため建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には適用されません。

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