道路の通行と行政

 私達の身の回りの法律関係は、大ざっぱにいって、国や地方自治体から規制されたり、生活保護など給付を受けたりする関係と、こういういわば縦の関係とは別の私人相互間の横の関係にわけられます。前者つまり縦の関係を公法関係、後者つまり横の関係を私法関係といっています。道路通行をめぐる法律関係も同様です。ここで公法関係を裏づけるのは各種の行政法規です。たとえば、そもそも、道路とは何かという、道路問題のいわば出発点も、国家的な見地、つまり行政法規で定められることになります。それも常識的には、すべての道路行政を包括した「道路法」を一つ作ればそれで十分だという気もしますが、きわめて数多くの法律が制定されています。しかし、これらの直接、道路に関連した法律の多くは、道路の維持・管理をどの行政庁が、どういう手続で行うか、あるいは道路の公害対策に行政庁がどのように取り組むべきかという、いわば行政の在り方を規定しているので、私達の日常生活においては、なじみが薄い感じがします。携帯用の小型の六法全書にも、これらの法律のほとんどはのせられていません。しかし、なにか問題が生じたときに、行政庁になにかをしてもらうためには、交渉相手が誰であるかを知らなければなりませんし、できれば、行政は何をなすべきかを知っておくことが大切です。

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 ここでは、とくに留意七て欲しい点を挙げておきます。行政との関係で、私達が最も大きい影響をうけるのは、都市計画道路(都市計画法一一条一項一号)と建築確認の前提としての道路(建築基準法四二条)の問題でしょう。都市計画は、都道府県知事または市町村(国土交通大臣の場合もあります)が案をきめて、公聴会を関催したり(都市計画法一六条)、利害関係人に案を縦覧させる(同一七条)などの手続を経て決定され、公に告示されます(同二〇条)。この都市計画による道路の敷地になっていますと、建築等を制限され(同五二条の二・五七条の三・六五条)、やがては、土地収用法の適用をうけて(都市計画法六九条以下)、買い上げられて、道路になってしまいます。このように、都市内で土地を購入するときは、都道府県または市町村の担当課で、都市計画の書類を閲覧して内容を知っておかなければなりません。
 また、建物を建築しようとするときには、建築主事に、建築確認をしてもらわなければなりません(建築基準法六条)。この時、四メートルの幅員のある道路に二メートル以上接していることが、最低限度要求されます(同四三条一項、条例でもっときびしいかもしれません)。この点も、土地購入にさいして、道路との関連で十分注意しておかなければなりません。たまたま、十分な通路がないまま買ってしまった場合は、私人相互間の紛争となり、次連のように、まわりの土地の所有者等に法定通行権を主張するか、合意で通路を認めてもらうかしなければなりません。どうにも通路を確保できないため、家を建てることができないということになれば、土地の売主に文句をいうほかありません。
 このほか、通行権について行政とのかかわりは、案外多いのです。ただ、この問題は、一般的には、「手続」さえわかれば、その手続に沿って行政と交渉することによって、結論が自然に出されてくるでしょう。この手続は、本書の設問とその解説から明らかになると思います。
 これに対し、難しい法律論が必要になるのは、民事訴訟で決着をつけなければならない種類の紛争です。私人対私人の関係、すなわち、私法関係です。本書は、法律相談書ですから、設問とその解説から具体的事件の解決のヒントが得られるように執筆していますが、この内容を理解し、応用がきくようにするためには、私法関係の基礎となる民法の通行権理論の基礎をひととおり説明しておくことがよいでしょう。
 通行権は、大まかにわけて、民法の規定から直接に与えられるものと、当事者が契約を結ぶことによって生ずるものとがあります。前者を法定通行権、後者を約定(やくじょう)通行権といいます。

土地
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