所有権の帰属を問題とする担保

 土地を買い受けてその代金を将来にわたって支払うという契約をする場合、売主は未払代金額について債権を有します。この債権を担保するため、土地の占有は買主に移しても所有権は形式的に売主に留保し、登記を移転しないでおくのが所有権留保です。実際に代金の全額の支払いを将来にのばすことは稀で、頭金として三〇〜四〇%ほど支払い、仮登記を行なった上で残額を分割払いにすることが多いようです。
 このような場合、実質的には所有権は買主に移り、ただ残代金債権の担保のためにのみ所有権が留保されているといってもよいでしょう。残代金の支払いがなされなかったときは、売主は、確定的に所有権を掌握し、買主から明渡しを受けた上で、買主に対して清算を行ないます。
 債務者が債務を弁済しないときは、弁済にかえて土地の所有権を移転することを予約し、債務の不履行を条件として債権者に予約の完結権の行使をみとめる約束を土地の代物弁済の予約といいます。この場合、将来ありうべき所有権移転の請求権を保全するため仮登記を行なっておくのが通例です。
 債務の不履行があれば直ちに代物弁済が成立し、自動的にその土地の所有権が債権者に移転するという契約も有効です。これを停止条件つき代物弁済契約といいます。
 これらの担保方法では、担保物(土地)の価額が債権額を大きく上まわることがあります。その結果、暴利行為になることも少なくおりません。そのため、最近の最高裁判例では、代物弁済の予約を完結させても、債権者は、優先弁済を受ける権能だけをもち、弁済に充当した残余額は債務者に返選すべきであると判示しています。

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 不動産の担保物権には、留置権、先取特権、質権、抵当権があります。
 このうち、留置権は、不動産を占有している債権者がその不動産について生じた債権の弁済を受けるまではその不動産を所有者に返さないでよいという権利です。間接的に債権の弁済を強制する手段です。なお、占有していること自体が必要で、いったん不動産を引き渡してしまうと留置権は消滅してしまいます。
 先取特権は、不動産の保存・工事・売買によって生ずる債権をその不動産からの優先弁済権によって担保するしくみです。留置権と同じく、法律の規定にしたがって当然に成立しますが、行使するためにはあらかじめ登記しておかなければなりません。なお、先取特権は、占有を要件としないので、その存否は登記簿によって調べます。
 質権と抵当権は、すでに述べたように債権の成立を前提として、設定契約によって成立します。質権は占有を質権者に移転しますが、抵当権は占有を所有者、抵当権設定者にのこしておくので、土地の利用価値をそこなわずに担保価値をひきだすことができるすぐれた担保制度です。実務上も、担保制度の中核をなしています。したがって、抵当権については、次にややくわしく説明することにしましょう。
 抵当権は、目的物件を競売に付し、競落代金から債権の弁済を優先的に受けることを目的とする不動産担保物権です。通常の抵当権は、それによって担保される債権を特定して、物件の所有者と債権者の間の抵当権設定契約によって設定されます。
 抵当権を設定するのは必ずしも債務者自身に限られません。AのBに対する債権をCが自己の所有する土地に抵当権を設定して担保するということはよく行なわれます。この場合、設定契約はAとCの間で行なわれるのです。
 抵当権を設定するためには、債権の存在が前提となりますが、すでに成立している債権でなく、将来発生する債権であってもかまいません。二個以上の債権を一つの抵当権で担保することも、二つ以上の土地に一つの抵当権を設定することも、二つ以上の抵当権を一個の土地に設定することもできます。すでに抵当権や質権が設定されている土地に抵当権を設定することも可能です。
 抵当権は設定契約によって成立しますが、第三者に対抗するためには登記が必要です。現実にも第三者と最もかかわりの多い物権ですから、設定と同時に必ず登記をします。登記をしない抵当権は実際のところ考えられないといってよいくらいです。ある不動産に抵当権が設定されているか否かを当事者以外の第三者が知るためには、登記をみることが必要であり、またそれで充分です。登記されていない抵当権がかりにあったとしても、第三者はそれを無視することができるのです。
 他人の利用権が存在する不動産に抵当権を設定することもできます。たとえば、AがBに土地を賃貸し、Bが建物をたてて住んでいる場合に、AがCに対する借金の担保としてその土地に抵当権を設定することができます。抵当権が実行されるとBの地位はどうなるか、という問題は、もっぱら抵当権設定登記の時点でBが第三者に賃借権を対抗することができる要件をすでにそなえていたか、すなわち建物についてB名義の所有権の登記が存在したかによってきまります。
 これとは逆に、Cのために抵当権の設定登記がなされたのちにBが賃借することも可能です。ただ、Bの賃借権の成立は抵当権の登記よりあとですから、賃借権がいかに対抗要件をそなえても、本来ならばCの抵当権には勝てないのです。
 しかし、このようにわりきってしまうと、抵当権を設定した土地は利用できるのに利用されないという結果になりがちです。そのため、原則をすこし修正して、抵当権設定後の土地の賃貸借でも五年、建物の賃貸皆については三年をこえない短期のものであれば、その期間中は抵当権に勝つ(競落人に対抗できる)とされています。
 土地とその上の建物は別個の不動産ですから、所有者が同一の場合、土地だけに抵当権を設定することも、建物だけに抵当権を設定することも、両者に設定することも自由です。ただ、これらの場合は競落によって土地または建物だけが競落人に帰属すると困った問題が生じます。
 土地だけに抵当権が設定された場合、競落によって土地が競落人に帰属すると、土地利用権のない建物だけが残ってしまいます。また、建物だけに抵当権が設定された場合、その建物を取得した競落人は土地利用権をもたないことになります。土地建物双方に抵当権が設定されて一方のみが競売されたとき、または双方とも競売されたが別の競落人に帰属したときも同じ問題が生じます。このようなとき、土地利用権がないのだから建物をとりこわせとはいえないので、法律上当節に地上権が設定されたものとして取り扱います。
 ただし、土地に抵当権を設定したときにはまだ建物が存在しなかったという場合や、競落の時には同一人が所有していたが抵当権設定当時はそうでなかったという場合は地上権は成立しません。
 最後に、借地上の建物にも抵当権を設定することができます。借地権が地上権である場合は地上権ぐるみで抵当権の対象となりますが、賃借権の場合は厄介な問題があります。賃借権自体に抵当権を設定することはできませんが、建物に対する抵当権の効力は建物の従たる権利である土地賃借権にも及ぶので建物が競落されると賃借権も競落人に移転します。しかし、賃借権の移転には、地主の承諾を必要としますから、地主が承諾を与えないと困ります。そのため、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を申し立てる道がひらかれています。

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