抵当権の実行

 抵当権によって担保された債権が弁済期に弁済を受けない場合は、債権者は、裁判所に競売の申立てを行なうことができます。ここでその手続を説明しますが、その前に、抵当権の効力の及ぶ範囲を明らかにしておきましょう。
 まず、抵当権の実行によって優先弁済がみとめられるのは債権の元本金額のほか、すでに満期になった最近二年分の利息および損害賠償(遅延賠償)金に限られます。年金や賃料のような定期金債務について抵当権を設定したときも、同様に、最近二年分しか優先弁済を受けることができません。
 つぎに、抵当権の効力が及ぶ物件の範囲は、目的不動産のほかそれに付加して一体となったもの(庭木、庭石など)と定められています。このような付加物でなく、独立の物でありながら不動産の従たる地位にある物(従物、たとえば物置は建物の従物)については考え方がわかれていますが、やはり、抵当権の効力が及ぶと考えるべきでしょう。
 抵当物件からの収益には、抵当権は及ばないのが原則です。抵当物件が差し押えられ、または抵当物件を取得した第三者に抵当権の実行通知がとどいてからのちの天然果実(自然の収穫物など)に限って、抵当権が及びます。
 抵当物件が滅失・毀損・売却・賃貸などによってその価値が保険金請求権、損害賠償請求権、代金請求権、賃料請求権などに形をかえた場合は、他の債権者に先立ってこれらの権利を差し押えるならば、それらに抵当権の効力が及びます。これを抵当権の物上代位とよびます。たとえば、Aの債権を担保するためBがその建物に抵当権を設定し、Cに賃貸中、火災によって焼失したとします。抵当権者AはBがその建物について火災保険契約を結んでいたD保険会社がBに保険金を支払う前に、またCがそれまでの賃料をBに支払う前にそれぞれ差押えをすれば、それらの請求権の行使によって得られる金銭から自己の債権の優先弁済を受けることができます。

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 債務者が履行期に弁済せず、債務不履行の状態に入ると、抵当権者は、抵当権の実行に入ることができます。
 はじめに、抵当権設定登記後に抵当物件について所有権、地上権、永小作権を取得した第三者(第三取得者)があれば、それらの者に対して、抵当権実行通知を行ないます。実際には、これらの第三者が登記(仮登記を含む)をそなえている場合に、この手続が必要です。これは、第三取得者に対してのちにのべる滌除の機会を与えるためです。実行通知を行なったことは、競買申立ての際に証明する必要がありますから、通常は、内容証明付書留郵便で通知を行ないます。
 つぎに、競売の申立てに移ります。抵当物件所在地の地方裁判所に、不動産競売申立書を提出します。申立書には、債務者が弁済期に弁済をしなかったこと、および第三収得者に抵当権実行通知をしたが滌除がなされなかったことなどを記載し、借用証書、抵当権設定契約書、登記簿謄本、公課証明書、賃貸借取調申請書、抵当権実行通知書および配達証明書、物件目録、当事者目録などを添付します。
 裁判所が申立てを受理すると、競売開始決定がなされ、競売申立ての登記が行なわれます。裁判所は、執行官および鑑定人に物件の調査、鑑定を行なわせたあと、競売期日を定め、その通知および公告をし、最低競売価額を示します。
 競売期日には、執行官によってせり売りがすすめられ、最低競売価額以上で最高額を申し出た競買人が競落人となります。競落人は、別に定められた競落期日に裁判所によってなされる競落許可決定が確定すると代金および登録免許税(登記料)を裁判所に支払い、裁判所は、登記所に移転登記を命じます。他方、抵当権者にその順位にしたがって競落代金を配当します。
 最後に、債権者、抵当権者、後順位の抵当権者、その他の債権者、債務者、物上保証人、第三取肴者など、抵当物件をめぐる利害関係者の相互関係について要約的に説明しておきます。
 抵当権が実行されると、その物件に抵当権をもつ債権者は、抵当権の登記の順位に従って弁済を受けます。競落代金がすべての抵当債権者の債権額に達しないときは後順位の抵当債権者は完全には弁済をうけないか、またはしめだされてしまいます。満足をうけなかった抵当権者は、抵当権を有しないふつうの債権者といっしょに、債務者の(その他の)財産から通常の強制執行手続によって弁済をうける以外にありません。
 抵当権実行によって弁済がなされれば、債務は消滅します。逆に、債務者が抵当権実行前に債務を弁済すると抵当権は消滅し、その登記は申請によって抹消されます。
 債務者以外の者が債権者のために自己の不動産に抵当権を設定した場合です。物上保証人は、債務者が弁済をしないと債権者の抵当権実行によって所有権を失います。そのため、抵当権実行前に物上保証人が債務者にかわって債権者が弁済をすることもあります。いずれの場合にも、物上保証人が債務者のために損をしたことになりますから、債務者に対し損失の補償を求める権利(求償権)がみとめられます。
 たとえば、抵当権つきの土地を買った者はどのような保護を受けるかという問題です。抵当権者A、売主B、買主(第三収得者)Cとします。Cは、Aが抵当権を実行すると所有権を奪われる地位にあるので、抵当権つきの土地をBから買う場合には、Cは、前述のように抵当権を消滅させてから所有権を移転することを望み、そのために内金の支払いなどの形でBに協力しますが、必ず抵当権を除去できるとは限りません。また、Cが抵当権つきであることを承知の上で買うこともあります。
 このような場合、Cにはなお抵当権を消滅させるためのいくつかの方法があります。CからBに支払う代金は抵当債権額だけ安くなりますから、その分を所有権移転後にBにかわってAに支払うのが最もふつうの方法です。
 第二の方法は代価弁済とよばれますが、受身的な方法でCにとって実用性はあまりありません。AがCに対し売買代金をBに支払わないでAに直接に支払えと要求したとき、Cがそれに応ずると、債権額と代金額が一致しなくても抵当権は消滅する、という制度です。
 第三の方法は、滌除です。これは、CがAに対してみずから適当と思う金額を提供して抵当権を消滅させることをいいます。Cは、Aが抵当権実行通知をするまでとその通知をしてから一ヶ月に限って滌除の申出でをすることができます。この申し出でがであっても、Aは、それを拒絶することができますが、その場合は一ヶ月以内に競売を申し立て、その競売でCが申し出でた金額より一割以上高い価額で競落されなかったときはA自身が一割増で買いとる旨をCに対して約束しなければなりません(これを増価競売といいます)。この場合、Aは代価と費用についてあらかじめ十分な担保を提供する義務を負いますが、これは、現実にはAにとって大きな負担となります。そのため、Aとしては若干不利であってもCの滌除の申出でをのむことになりがちなので、Cにとっては有利な制度といえそうです。
 しかし、他面、Cは増価競売の申立てがあれば所有権を失うことになるので、脇除の申出では一つの冒険にほかなりません。そのためか、この方法もまた、実際にはほとんど行なわれていない状態です。

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