建物の購入

 建物の所有者が建物を売却したり、賃貸したりする場合の問題がつぎに出てきます。ここでは、まず建物の売買について説明しますが、主として不動産を入手する側、すなわち建物の買手の立場からみることにします。
 買手の側からみる場合、第一に問題となるのは、建物とその基盤である土地の関係です。分譲マンションの場合はかなり特殊な問題がありますからのちに一括して述べることにして、ここでは敷地上に一戸建ての建物が存在する場合を想定して下さい。

スポンサーリンク

 建物と土地の関係は、土地と建物の所有者が同一であるか、ことなるかによって二つにわかれます。
 所有者が同一である場合、建物の売買契約には次の二つがあります。建物と土地をあわせて売買する場合(土地建物売買契約)、土地を貸借し、建物を売買する場合(借地権設定建物売買契約)。
 所有者がことなる場合は、すでに土地所有者と建物所有者の間に、借地契約が成立しているのがふつうです。まれに使用貸借関係であることがあり、他方、なんらの利用権もない場合もありえます。
 借地契約が存在する場合は、借地権譲渡(転貸)契約と建物売買契約をあわせて行なうのがふつうです。また、土地所有者から別個に土地を買い受けることもあります。なお、建物所有者が地上権者であるときは、地上権譲渡建物売買契約のほかに、地上権者を貸主とする賃借権設定建物売買契約の場合も考えられます。
 使用貸借関係の場合は、ふつうは土地所有者とあらためて借地契約をむすぶことが必要です。
 土地についてなんらの利用権もないというケースは、異常です。しかし、まったく例がないわけではありません。土地所有者があらためて借地契約の締結または土地の売却に応ずるかどうかが先決問題でしょう。
 このように建物の売買は、土地と建物の関係がどうであるかによって左右されます。したがって、建物の購入にあたっては、まず、土地が建物所有者のものであるか否かをしらべることが肝要です。その上で土地所有者が建物の売買についてどのように考えているかを知ることが必要となります。いずれにしても土地利用権を取得しなければならないからです。
 ところで、さきにあげたさまざまのケースを整理すると、契約の類型は、次のようになります。
 (1)土地建物所有者との土地建物売買契約
 (2)土地建物所有者との借地権設定建物売買契約
 (3)建物所有土地賃借人との賃借権譲渡(転貸)建物売買契約
 (4)建物所有地上権者との地上権譲渡建物売買契約
 (5)建物所有地上権者との賃借権設定建物売買契約
 (6)土地所有者との土地売買契約と建物所有者との建物売買契約
 (7)土地所有者との借地契約と建物所有者との建物売買契約
 これらのうち、(1)、(2)、(3)は通常よくみられるところで、(4)以下は例外的です。他方(4)は(1)に、(5)は(2)に準じて考えてよく、(6)と(7)はすでに土地売買契約および借地契約について述べたので建物売買契約について(1)を参考にすれば理解できます。したがって、以下(1)を基本とし、(2)、(3)については注意すべき点のみを述べることにしましょう。
 建物の売買契約と土地の売買契約は、いずれも不動産の売買として共通した性格をもっています。そのため、土地と建物を同一所有者から買う場合の売買契約は、土地売買契約に建物売買の特殊性を加味した形をとります。すでに土地売買契約についてくわしく述べたので、それをベースにして建物売買に固有の要素をつけ加えて説明します。
 契約書の前文および第一条は、土地売買契約書と同様です。物件の表示に建物が加わります。
 売買代金は、実際には土地・建物を一括してきめることがすくなくありませんが、本来、わけて定めるべきです。土地面積について売主に担保責任を負わせる場合には、必ず内訳を記載します。
 手付金、代金の支払時期・方法、登記などの条項については、土地売買契約と同じです。
 引渡しについては、庭木・庭石のほか建物の造作や門・へいなどこまかい点でトラブルが生じやすいですから、売主が留保するものがなければ、「現状有姿のまま引き渡す」旨を明記した方がよいでしょう。境界確認や測量については、問題はありません。
 負担の除去および担保責任については、建物の賃借人(借家人)の存否に注意する必要があります。借家権の存否は、登記によってはなんら確認できませんから、現場をみて確認し、借家人が建物を使用中であれば、そのまま買い受ける場合は別として、借家人の立退きを売主に保障させる必要があります。履行期まで立ち退かせた上で引き渡すか、借家人の立退承諾書を添えて引き渡すか、いずれかを売主に約束させることになります。また、のちに借家人の存在が明らかになることもありますから、借家権の不存在を担保させることが必要です。
 所有権の移転時期については、土地売買契約とかわりありません。
 固定資産税などの負担区分も同じですが、これをあわせて、ガス・水道・電気・電話などの付帯施設の使用料の負担区分も測定する必要があります。なお建物に固有の条項として、火災保険契約上の権利を買主に移転する条項があります。その文例を示すと次のようです。
 「第◯条 売主は、買主に、売買物件中の建物に開する◯◯火災保険会社との火災保険契約(保険期間自◯◯年◯月◯日至◯◯年◯月◯日 保険金   円也)上の権利を、第◯条によって売買代金全額の支払いを受けたときに無償で譲渡し、かつ、保険証書(証書番号第◯号)ならびに保険契約者および披保険者の名義変更に必要な一切の書類を交付する」
 危険負担については、例示列挙事項中に、「火災」を加えるほかは、土地売買契約書と同じです。
 契約解除、損害賠償、手付の効果、協議条項、契約書作成費用なども土地売買契約言と同様です。
 土地を賃借し建物を買い取る場合には、借地契約と売買契約を別個の契約書にしても、単一の契約書にまとめても、法律上のちがいがあるわけではありません。単一の契約書にする場合は、貸借目的物件と売買目的物件をはっきりと区別して表示し、さきに借地契約条項を定めてから建物売買契約条項をおくべきです。なお、明確を期すならば、契約書は二つにわけるべきでしょう。建物売買契約書を別建てにするときは、さきに述べた土地建物売買契約書から土地売買に固有の条項(測量・境界確認規定など)ないしは表現(地上権、地役権)を除去するだけで足ります。
 土地賃借権譲渡建物売買契約については、通常、単一の契約書を作成します。建物および敷地の賃借権の売買であることを明示した上で、つぎのような、土地所有者の承諾を保障する条項を設ける必要があります。
 「第◯条 売主は、売買建物の敷地の賃借権を買主に譲渡することにつき、自己の費用および責任において土地所有者の承諾を得たうえで、その承諾書を◯◯年◯月◯日までに買主に交付する。
 売主は、買主に、土地賃貸借契約に基づいて土地所有者に支払った敷金(金◯◯円也)に関する売主の権利を、第◯条によって売買代金全額の支払いを受けたときに無償で譲渡し、かつ、売主と土地所有者の間の土地賃貸借契約証書を交付する」
 このほかは、担保責任の条項中に、賃借権および土地について買主の完全な賃借権の行使を制限するいかなる負担もないことの保障を追加すること、負担区分の条項中に地代の負担区分を明記することなどに注意すれば足りるでしょう。
 マンションや共同ビルのように一棟の建物が構造上独立して使用することができるいくつかの部分にわかれている場合、それぞれの部分を一個の建物として売買することがみとめられています。これを区分所有の建物といいます。
 区分所有の建物が一戸建ての建物とことなる主要な点は、敷地と建物の関係と、一棟の建物中の共同利用部分の権利関係の二つです。 建物の所有者は敷地を利用する権利(所有権または借地権)をもたなければならないという点では、区分所有建物の所有者も同じです。ただ、一つの敷地の上に数個の区分所有建物がかさなりあって存在するため、権利関係はやや複雑になります。
 区分建物の所有者をA・B・C・Dとしましょう。マンションの場合、最も多いのは、敷地をA・B・C・Dが共有するという関係です。共有とは、数人が一つの物を物理的に区分しないで権利の割合だけきめて所有する関係です。各共有者は共有物の全体を使用することができます。他方、所有権の割合部分(これを共有持分といいます)を自由に処分することができます。
 これに対して、敷地をA・B・C・Dが分有する場合もあります。分有とは、数人が一つの物を物理的に区分して、その各部分を単独で所有する関係です。土地を分有するときは、登記簿上も分筆の登記をするのがふつうです。この場合A・B・C・Dは、敷地上のきまった区画をそれぞれ所有することになります。
 この二つは、いずれもA・B・C・Dが敷地を所有権に基づいて利用する形態です。つぎに、借地権に基づく場合がありますが、これも右に準じて二つにわかれます。
 第一は、土地所有者からA・B・C・Dが共同で地上権または賃借権の設定をうける場合です。一つの借地権をA・B・C・Dが共有する関係になります(これを借地権の準共有とよんでいます)。ところで、A・B・C・DがAの所有地上に区分建物を所有しているというケースもあります。この場合、AからA・B・C・Dが借地権の設定をうけて準共有することがみとめられています。Aとしては、貸主であると同時に借主、という地位に立ちますが、法律上、このような借地権準共有設定契約は有効です。
 第二は、A・B・C・Dがそれぞれ土地所有者から単独で借地権の設定を受ける場合です。この場合は、若干問題があります。一つの敷地について重畳的にいくつもの借地権を設定してよいかということです。結論的には肯定してよいのですが、その理由づけにはさまざまなものがあり、判例もまとまっていません。また、前例のようにA・B・C・DのうちAが土地所有者である場合、AB間、AC間、AD間にそれぞれ借地契約を結ぶことがあります。この場合も、同じです。
 区分建物の所有者は、敷地の所有権もしくは借地権またはその共有(もしくは準共有)持分を自由に処分することができます。区分建物を処分する場合には、これらの敷地利用権をあわせて処分することがふつうですが、法律上は、いっしょでなければ処分できないという制限はありません。
 一棟の建物中の共同利用部分は、共用部分とよばれます。これに対して、区分所有者が独占的に利用することができる部分を専有部分といいます。区分所有の対象となる一棟の建物のうち専有部分とされない部分はすべて共用部分です。
 共用部分となるのは、構造上、区分所有者の独占的利用に適していない基礎工作物、外壁、屋根、区隔壁、天井・床、耐力壁、支柱などのほか、共用に供される廊下、階段、共同の玄関・ロビー、エレベーター室、電気・機械室、共同の便所・洗面所、湯沸室などです。共通の電線や水道管など、エレベーター捲上様、クーリング機械、給水槽などの建物の付属物も共用部分です。このほか、構造上は専有部分となりうる建物部分を区分所有者の合意(規約)によって共用部分とすることができます。
 これらの共用部分は、区分所有者の共有とされ、その全体について各区分所有者が共有持分をもちます。そして、共用部分の共有持分は、専有部分と別個に処分することができず、かつ、専有部分が処分されるときは必ずそれにともなって処分されます。いわば、専有部分の区分所有権と共用部分の共有持分はバいつもワンセットになっているのです。
 以上のことがらを前提として、区分所有建物の売買を買手の立場からみることにしましょう。マンション分譲の場合を例にとります。
 マンションの分譲契約は、多くの場合、建築の設計がおわり、建築確認を経て工事に着工したのち、その完成前に締結されます。一見請負契約のようにもみえますが、法律上の性質は売買契約です。
 契約にあたっては、売主はだれか、建築確認を受けているか、土地所有者はだれか、土地に対する区分所有者の権利はどうか、土地には抵当権など他人の権利が設定されていないか、共用部分の内容は何か、その管理はどうするか、などを確認する必要があります。これらは、工事完了後の売り出しの揚合でも同じです。完成前の契約においては、このほか、竣工予定日、引渡期日、手付金および内金の支払い方法などに注意する必要があります。
 代金は、契約締結時、上棟(予定)日、竣工(予定)日の三回にわけて支払う、とする契約が多いようです(手付金は最後の支払いの一部に充当されます)。通常は、代金の支払いの時に所有権が移転するものとし、それと同時に引渡しを行なうと定めます。
 建物の竣工前に代金のかなりの部分(六〇〜七〇%)の前金を支払うことになりますが、この前金については、分譲業者の側で銀行や保険会社や指定保証機関を保証人としてたてることが、昭和四十六年の宅地建物取引業法の改正によって義務づけられることになりました。また、積立式の売買についても、積立式宅地建物販売業法が制定され、買主の保護がはかられるようになりました。
 代金の支払いのためにローンを利用することがあります。しかし、売り出しの広告などにローンの記事があっても、必ずローンを受けられるという保証はありません。分譲業者と銀行が提携している場合でも、ローンをみとめられるか否かについては、買主が銀行側の審査にパスしなければなりません。
 一般に行なわれている提携ローンのしくみはつぎのようです。売主(分譲業者)をA、買主をB、銀行をCとしましょう。
 まずBが内金の支払期日である契約締結日(および上棟予定日)に代金総額の四〇〜五〇%をAに支払う(いわゆる頭金です)とともに、Cあてのローン申込書をAに提出します。Aは申込書に、Cに対してBの借入金債務を連帯保証する旨を書きいれてCに提出します。Cは審査のうえ、貸出しをみとめるときは、Bの依頼に基づいて貸出金をAに直接に支払います。返済はBからCに対してなされます。Bの債務の担保は、BがAから購入する区分建物(および敷地の共有持分)にC名義の第一順位抵当権を設定し、あわせて建物に火災保険をかけさせ、その保険金請求権のうえにC名義の質権を設定するという形をとります。
 このほか「生命保険付」というのがありますが、これは、銀行が生命保険会社と提携し、保険料を銀行が負担して買主について生命保険をかけ、買主が銀行への借入金返済の途中で死亡した場合に保険金を残金額の返済にあてるしくみです。
 最後に、登記について述べておきます。区分所有の連物の登記用紙には、はじめに一棟の建物についての表題部があり、つづいて各専有部分ごとに専有部分の表題部と甲区、乙区の記載欄が設けられています。したがって、新築後はじめて登記をするためには、一権の建物の表示の登記と区分建物の表示の登記および区分建物の所有権保存登記の申請をすることになります。
 マンションの分譲の場合、原則的には、分譲業者が一棟の連物の表示登記と、すべての区分建物(専有部分)の表示登記および保存登記をした上で、買主にそれぞれの区分所有建物の移転登記をすべきです。しかし、実際上は、一棟の建物の表示の登記を行ない、それまでに代金支払いが終わっている買主に対しては同時に買主名義で区分建物の表示登記および保存登記を行なわせ、その後の買主については、代金完済ごとに区分所有建物の表示登記および保存登記を行なわせることが多いようです。ローンのための抵当権設定登記は、買主名義での保存登記ののちに行ないます。

土地
不動産とは/ 不動産の取引/ 不動産取引と業者/ 購入する土地の選定/ 土地売買契約条件の交渉/ 土地売買契約の手付金/ 土地の引渡しと登記/ 契約の履行と履行をめぐる紛争/ 売主の義務、登記の移転/ 借地契約で建物を建てる/ 借地権と第三者との関係/ 建物の建築/ 建物の購入/ 建物利用権の性質/ 建物の賃貸借契約/ 土地建物による担保/ 抵当権の実行/ 不動産登記制度と機能/ 所有権の帰属を問題とする担保/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー