建物の建築

 土地を確保したのち、建物の建築に移ります。建物の種類・構造などは原則として建築主が自由にきめるべきことがらですが、他方、法律上の制限があります。
 私法上の制限としては、借地契約によって建物の種類が限定されること、地役権の承役地においては要役地のための便益を害しえないこと、隣接地所有者の相隣関係上の権利を害しえないことなどがあります。
 重要なのは公法上の制限です。都市計画法、建築基準法などによって建物の建築がどのように制限されるかについては、すでに概要を説明しました。ここでは、そこでふれなかった道路および隣地境界線との関係における制限について述べておきます。
 このほか、建築の確認・許可・届出・検査などの手続も、公法上の規制の一環をなしています。

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 都市計画区域内では、建物の敷地は、道路に二メートル以上接していることを必要とします。ここでいう道路は、(1)公道、(2)道路位置指定を受けた私道、(3)建築基準法適用時にすでに存在した道路(公道または私道)でいずれも幅員四メートル以上の道路ですが、(3)については、特定行政庁の指定があれば幅員四メートル未満のものも含まれます。この最後の場合には、道路の中心線から二メートルを道路境界線とみなしているので、たとえば幅員二メートルの道路の場合は、敷地内に一メートル分だけ、建築禁止部分が生ずることになります。
 建物の高さは、第一種低層住居専用地域では一〇メートル、あるいは一二メートル以下に制限されます。このほかは、高さの絶対的な制限はありません。ただし、次のような斜線制限とよばれる三種の制限によって、相対的に制限されています。(1)前面道路斜線、第一種・第二種住居専用地域および住居地域では、前面道路の反対側の境界線までの水平距離に一・二五をかけたものをこえる高さの部分をもつ建物は、建築することができません。建物が斜線内に入ることが必要なのです。なお、第一種低層住居専用地域では一メートルまたは一・五メートルの壁面後退距離が定められることがあります。
 隣地斜線制限、第二種住居専用地域および住居地域では立上がり二〇メートル、その他の用途地域では立上がり三一メートルをこえると、隣地斜線制限があります。
 北側斜線制限、第一種住居専用地域では立上がり五メートル、第二種住居専用地域では立ち上がり一〇メートルをこえる部分について勾配一・二五の斜線制限があります。
 一定の建築物については、建築主は、建築着工前に特定行政庁の建築主事に対して建築計画が建築基準法その他の法令に適合していることの確認を求める必要があります。建築確認申請書を提出すると、建築主事は、審査を行ない、建築関係法令に適合していることを確認して建築主に通知します。
 この建築確認は、都市計画区域または知事の指定する区域内ではすべての建築物について必要とされます。これらの区域外でも、学校、病院、診療所、劇場・映画館・観覧場、公会堂・集会場、百貨店・マーケット、公衆浴場、ホテル・旅館、下宿・共同住宅・寄宿舎、自動車車庫などで床面積一〇〇平方メートル以上の建築物、木造で三階以上もしくは床延面積が五〇〇平方メートルをこえるもの、または木造以外で二階以上もしくは二〇〇平方メートル以上の建築物については、建築確認申請が必要です。
 以上の手続が終わったのち、工事にとりかかることになりますが、床面積が一〇平方メートルをこえる建築物についてはすべて、都道府県知事あてに建築工事届をださなければなりません。工事が終わると、建築確認申請をした建築物については四日以内に工事完了届を建築主事あてに提出します。建築主事は、七日以内に建築物の検査を行ない、法令に違反していないことを確認して検査済証を建築主に交付します。この検査済証の交付をうけると、建物を使用することができるのです。以上が、建築に関する行政法上の手続の概要です。
 建物の建築を建設業者に行なわせる契約を建築請負契約といいます。請負契約とは、当事者の一方(請負人)かおる仕事を完成することを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。契約の目的は、労務そのものではなく、労務によってもたらされる結果(仕事の完成)にあります。したがって、報酬は、労務に対してではなく、仕事の完成そのものに対して支払われます。
 建築請負契約は、建物をたてようとする注文者と建設業者の間で締結されます。建設業を行なうためには、都道府県知事(二以上の都道府県に営業所を設ける場合は国土交通大臣)に登録をしていなければなりません。なお、建築物の設計および工事監理を行なうには、建築物の種類・規模によって一級または二級建築士の資格を必要とします。
 建築請負契約における請負人の基本的義務は、建築を注文どおりに、約定の期限までに完成させることです。仕事をどのように完成さぜるかは、原則として請負人の自由ですが、注文者がその方法を指定または限定したい場合は、建築請負契約中で定めておく必要があります。たとえば、原則として下請けを禁止し、注文者の承諾を得た場合に工事の一部に限って下請けをみとめる、という条項など。なお、工事を下請けに出す場合には、下請業者の仕事については、請負人が全面的に責任を負います。
 請負人は、約束の期限までに仕事を完成させなければなりません。工事のおくれはしばしばあることですが、のちにトラブルが生ずることを避けるため、工事のおくれ一目につき金○○円也の割合で損害金を支払うという条項を契約の中にいれておくとよいでしょう。設計の変更など注文者の都合でおくれた場合は請負人の責任とはなりませんが、変更があるときはそのつど工期の期限を明確に合意しておくことがいずれにしても必要です。
 請負人は、仕事の完成を請け負うのですから、完成された仕事について注文者に対し責任を負います。仕事の目的物に欠陥がある場合の担保責任がそれです。建物の建築の場合についてみると、欠陥を発見した注文者は、請負人に対して相当の期限を定めてその修補を請求することができます。ただし、それが重要な欠陥でなく、かつ、修補のために過分の費用を要するときは、請負人は、修補のかわりに損害賠償の支払いによって解決することができます。
 請負人の修補および損害賠償の責任は、建物を注文者に引き渡してから、一〇年間存続します。民法は契約によってこの期間を伸長してよいといっていますが、実際の契約慣行では、逆に短縮することが多いようです。
 この建築請負人の担保責任を売買における売主の担保責任とくらべてみると、請負契約の注文者には、契約解除権が認められていないことに気づきます。これは、契約を解除すると請負人が建物を除去する義務を負うことになり、請負人にとって過大な損失となるからです。また社会的にみても大きな無駄となります。なお、特約によって注文者の解除権を定めても、その特約は、無効と解されています。これに対して、工事完成前であれば、注文者は、いつでも契約を解除することができます。ただし、注文者は、請負人が契約解除によって受ける損害を賠償する義務を負います。これは、注文者が工事完成前にその工事を必要としなくなった場合、工事を完成させても無駄であるという考え方に基づいています。
 請負人の担保責任をはじめから免除する特約も法律上有効です。ただしその場合にも、請負人が知っていて注文者に告げなかった事実に関する限り、担保責任を免れることはできません。
 注文者の基本的義務は、報酬の支払いです。仕事の完成に対する報酬ですから、あと払いが原則ですが、実際には、材料費、労賃などとあわせて一括して請負代金を定め、工事の進行にしたがって何回かにわけて支払い、完成して引渡しを行なうときに残金を支払うという契約が多いようです。請負人に請負代金の一部を前払いするとき、請負人が責任をもって最後まで仕事をしてくれるか不安の場合もあるでしょう。その場合は、保証人をつけてくれと要求することができます。請負人がそれを拒んだ場合は、前払いを拒否することができます。
 工事請負代金を一旦きめたのちは、注文者側の要求による設計変更などの場合を除いて、変更しないと定めるのが契約慣行です。注文者としては、仕事の具体的な方法については請負人に委せてあるわけですから、個別的事情による代金額修正の要求にいちいち応ずることはできないという考え方です。
 このほかに危険負担の問題があります。請負人の責任に帰すべき事由によらないで発生した事故など(たとえば延焼による滅失)の損失はどちらが負担するか、という問題です。請負契約では仕事の完成を目的としますから、完成前の損失等は、注文者の責任で生じたものでない限り、請負人が負担します。といっても、紛争が生じがちな点でありますから、契約中でその旨を明示しておく必要があります。
 建築物の所有権は、民法の原則によると材料の主要な部分を供給した者に帰属します。通常は建設業者が材料を供給するので、この考え方をあてはめると、建築物の所有権はいったん請負人に帰属し、引渡しによって注文者に移転することになります。請負人は、自己の名義で保存登記をすることもできるわけです。
 これに対して、最近では、建物の所有権ははじめから注文者に帰属するので請負人は自己名義で保存登記をすることができない、という考え方が有力です。当事者の意思を推測してもそういえるからです。また、請負人が所有権を取得するとしても、土地利用権がないのでその所有権は本来安定していません。
 これらの点を考慮すると、契約中で所有権の移転について明確にとりきめておく必要があります。
 建築物の引渡しは、工事完了後、検査を終了したのち直ちに請負代金の残金の支払いとひきかえに行なうのが適当です。請負人は、注文者が請負代金の総額を支払うまで、建築物の引渡しを拒む権利(留置権)をもっています。
 建物が完成するとその登記を行ないます。建物登記簿は、一個の建物ごとに編成されていますが、新築の場合は、まだ登記用紙が細微されていないので、建物の表示の登記の申請からおこないます。申請は、所有者の単独申請です。建築から一カ月以内に行ないます。

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