借地契約で建物を建てる

 借地契約は、売買契約とならんで、建物をたてるために必要な土地を確保するための重要な法律上の手段です。売買によって土地を取得した人が自分では建物をたてないで他の人に利用させる場合も、借地契約を結びますが、この場合は、借地契約は、収益を確保するための重要な手段となっています。ここでは、主として土地を確保して建物を建てる借主の側から借地契約についてみていくことにします。

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 借地契約の当事者は、土地所有者と借地人です。法律上で借地人というのは、建物の所有を目的として他人の所有する土地を地上権または賃借権によって利用する地位にある人のことです。いいかえれば、借地権とは、建物所有を目的とする地上権または賃借権をいいます。
 ところで、地上権は、地上権設定契約によって設定される物権ですが、賃借権は、賃貸借契約によって成立する債権です。本来、物権は、物に対して直接に支配する排他的な権利でその内容は法律によって定められており、すべての人に対してその尊重を求めることができますが、債権は、債務者という特定の人に対して一定の行為を要求する相対的な権利で、その内容を契約によって自由に定めることができるかわりに、契約当事者の間でしか効力がないのが原則です。
 しかし、土地利用という事実の点では地上権による場合も賃借権による場合も現実にことなるところがありません。他方、建物が重要な財産となるとともに市民の住宅の確保が大きな問題となる時代には、賃借権による土地利用権をできるだけ保護して、物権なみの取扱いに近づけることが一般的に要請されるようになります。そのため、日本では明治四十二年に建物保護に関する法律が、大正十年には借地法が制定されて、建物の所有を目的とする地上権と賃借権に同様の保護を与えるようになりました。
 このようにいっても、土地賃借権は、地上権と同一の物権となったのではなく、あくまでも債権であることにかわりありません。いくつかの重要な点て両者の間には大きなちがいが残されています。
 以下、両者に共通する点については、借地権のことばを用い、その例としては賃貸借契約の場合をあげます。両者に差異がある問題については、地上権、賃借権のことばを用い、それぞれの例をあげることにします。
 土地を購入する場合に準して、土地に対する制限として次の諸点が問題となります。
 第一は、土地の利用(とくに建物の建築)を妨げる他人のための私法上の権利が存在していないかという点です。第二は、同様に土地の利用を妨げる公法上の制限が存在していないかという点です。
 土地の占有を内容とする他人の権利(地上権、質権、賃借権など)が存在していないこと 地上権を設定する場合には、これらの権利が対抗要件をそなえていない限り、地上権の登記によって排除することができますが、それにともなう事実上のトラブルを考えると、そのような土地は避けるのが得策です。
 先取特権または抵当権の登記がないこと、これらの登記がある場合は、土地所有者にその抹消を求め、応じられない場合は避けることになります。
 近いうちに土地売却の予定がないこと、すくなくとも借地人が建物を完成してその保存登記を行なうために要する期間は土地が売却されないように、あらかじめ注意を要します。地上権を設定し、直ちにその登記をする場合は、この心配は不要です。
 貸主が土地所有者でない場合もあります。貸主が地上権者、質権者などである場合は、とくに問題はありせまんが、貸主自身が賃借人である場合は、転貸となるので、土地所有者の事前の承諾を必要とします。
 借地条件の交渉、土地に関する私法上の権利関係や公法上の制限で、建物所有を目的とする土地利用を妨げるものがなければ、つぎに、契約条件に関する交渉に入ります。売買とことなり、借地の契約条件については借地法によるきびしい規制があります。この規制によって、借地人の地位がかなりよく保護されています。いいかえれば、借地法に反する賃貸条件は、たとえば地主が希望してもはじめから交渉の対象とならないのです。したがって借地契約については、契約条件について条項別の検討を行なうかわりに、主要な点についての法律上の規制を説明し、契約条項は一括して掲げることにします。
 借地契約の存続期間は借地上に建てる建物の種類によって制限がことなります。石造、土造、レンガ造、コンクリート造などの堅固な建物の場合は、存続期間は六〇年、その他の(堅固でない)建物の場合は三〇年とされますが、契約によって前者については三〇年、後者については二〇年まで短縮することができます。しかし、それより短くすることはできず、かりにそのような契約を結んでもその定めは無効です。逆に契約によって六〇年または三〇年をこえる存続期間を定めることは自由です。
 契約の存続期間が満了しても、借地契約は、借地人が希望する限り原則として更新され、終了しません。借地人の意に反して更新の拒絶がみとめられるのは、地主に自己使用その他の正当な事由があって、借地人の更新請求または使用継続に遅滞なく異議を述べた場合に限られます。正当の事由があるかないかがきめ手となりますが、この点は、最終的には地主からの明渡請求などの訴えに際して裁判所が判断します。更新拒絶が正当とみとめられる場合、借地人は他主に対して建物の買取りを強制することができます。なお、契約中であらかじめ更新は一切みとめられないとか、建物は買いとらないとか定めても、それはなんら効力がありません。
 建物が契約期間中に寿命がつきたり、焼失してしまった場合も、原則として借地契約は存続します。新築して土地利用をつづけることができるのです。ただし、存続期間についてはじめから契約で定めていなかった場合で、建物が寿命がつきてしまったときに限って、借地契約は終了し、借地権は消滅します。
 木造を鉄筋コンクリート造にたてかえるというように、建物の種類を変更することは、契約中に特約がなくても、地主の承諾を必要とします。しかし、防火地域に指定されたり、周辺の土地利用状況がかわって堅固な建物が多くなり、あらたに借地契約をむすぶのであれば堅固な建物の所有を目的とするのが適切と考えられる場合には、地主が承諾を与えないと不都合が大きいので、裁判所に対して地主にかわって借地条件の変更を認めてもらうみちがひらかれています。
 建物の種類をかえない増改築は、原則として借地人の自由です。ただし、地主の承諾を必要とする旨を契約中で特約することはみとめられています。なお、この特約があっても、土地利用上適当な増改築であれば、借地人は地主の承諾に代る許可を裁判所に求めることができます。
 地代は、契約によって自由にきめることができます。ただし、地代家賃統制令によって、昭和二十五年七月十日以前の着工でその床面積が九九平方メートル以下の建物の敷地などについては、地代の制限が定められています。地代の支払時期も、契約で定めますが、定めがないときは月末です。
 地代に関する重要な問題のひとつは、地代の増額要求です。借地法では、固定資産税などの増額や地価の上昇、近隣地の地代とのアンバランスなどが生じた場合は、地代の増額をみとめています。それでは地主が地代をあげたいといってきたとき、どのように対処すればよいでしょうか。かりに、平方メートルあたり一〇〇円の地代を一五〇円に増額するとの申入れがあったとします。
 借地人は、一五〇円への値上げを不相当と考えるならば、自分が相当と判断する額を支払う旨申入れをします。地主はおそらく受取りを拒否するでしょう。その場合、借地人は相当と思う額を供託所に供託しなければなりません。
 地主は、話合いによって解決しない限り、増額した地代額の支払いを求めて裁判をおこすことになります。判決によって、適正な地代の額は平方メートルー三〇円と決定されたとします。すると、地主が値上げを申し入れた時点以降、地代は、一〇〇円から一三〇円に増額されたものとみなされます。借地人が供託していた額は、一二〇円ですから、一〇円不足です。この場合、借地人は、供託開始後判決の執行まで一〇円の不足分に利息をつけて地主に支払わなければなりません。
 造成地などでは、自然災害によって石垣の崩かいなどが生じることかあります。その場合、修理義務は、契約によって特別の定めをしておかない限り、地主が負担します。地主にかわって、借地人が土地の保存のために必要な経費を支出したときは、その償還を求めることができます。また、借地人が自らの費用で土地の整備改良を行なって土地の価格を増大したときは、借地契約の終了時に、現に地主にとって利益が残る限度で経費の償還を請求することができます。なお、これらの償還について別に特約をすれば、それは有効です。
 借地契約は、すでに述べた諸条件について借地法上の規制に反しない範囲で自由に締結することができます。つぎに、借地契約と第三者の関係、および契約不履行の場合の解決が問題となります。

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