購入する土地の選定

 購入地を選定するにあたって買手側の判断の基準となることがらを整理すると、ほぼ次の三つにまとめることができます。
 第一は、ある土地が買手の利用計画(購入目的)に合致した土地であるかどうか、という事実上の問題です。これは、所在地、面積、形状、環境など、いわばその土地が物理的、社会的に有している性質からみて、判断されることがらです。
 第二は、売買契約の条件について売主と合致することができるかという問題です。これは事実的経済的問題であるとともに、当事者の間の合意次第で解決できる問題でもあります。
 第三は、その土地について存在する法律上の制約から生ずる問題をどう解決するかということです。これには、売主がその土地について負担してきた私法上の権利関係と、公法上の諸制限の二つがあります。
 土地を購入するに際して考慮される事項は、ほぼこのように大別することができます。

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 私法上の権利関係、まず、売主の法律上の立場が問題となります。
 売主が所有者でない場合、売買契約の相手方(売主)が所有者であるのがふつうです。しかし売主として現われる人がつねに土地の所有権者であるとは限りません。法律上は、所有者でなくても売買契約を有効に締結することができます。具体的には次のようなケースがあります。
 「Aが土地所有者Bから土地を買い受ける契約(売買契約)をして手付金をBに支払ったのち、Cに転売するためAC間で同土地の売買契約を締結した。AB間の契約では売買代金完済の時に所有権が売主Bから買主Aに移転する旨の約定がある」という場合です。
 このような場合、AC間で売買契約を締結した時点では、土地の所有権はいまだBにあり、AはCに対して他人(B)の土地を売ったことになります。AはBに対して代金を完済して所有権をAにうつし、ついでCに移転する義務を負います。他方、所有者Bは、Aに手付金の倍額を支払ってAとの契約を破棄し、他のより有利な買手に売却することもできます。Cは、AがBに代金全額を支払うまでは、確実に土地を取得する保障がありません。AからBへの代金支払いにあてるために、AがCに代金の支払いをさきに求めることもあります。Aが、Cから代金をうけとってその金でBに支払い、Bから所有権を取得してCに移転するというしくみです。このような取引は危険が大きいですから、できるだけ避けなければなりません。不動産業者が「社有地」を売り出すと広告する場合、実際は手付をうって確保しているにすぎない土地であることもありますから注意が必要です。
 類似の事例としては次のような場合があります。それは、所有者Bから売却の仲介を依頼された業者Aが売却希望価額より高い金額で買う相手方Cをみつけたとき、AC間で売買契約を結んだ上でAがBから買いとるというケースです。AはBの仲介の依頼に反して自ら買主となり売主となるのですが、このような場合、AがBから直接に買いうけるのはCへ転売するためだということをBに示さなければ、取引態様の明示義務を定めた宅地建物取引業法に反すると解されます。なお、業者がいったんひきうけた仲介を直買いにきりかえたいという場合は、このような事情にあることが多いですから、注意を要します。
 売主が登記名義人でない揚合、所有者であるとき 次に、売主が所有者であっても、登記簿上は別人の名義になっている場合があります。たとえばBがAから購入したが登記はまだBに移転していない土地をCに売る場合、売主所有者はBですが、登記名義人はAです。この湯合、A〜B〜Cと二度移転登記をするべきですが、ABC三者の合意によってAからCへ直接に登記を移すことも行なわれています(これを中間省略登記といいます)。ただ、登記をAからCに移すためには、AとCの間で売買がなされた形にして契約書をつくる必要があります。登記制度のたてまえからは望ましいことではありませんが、このようにしてなされた登記も有効だとされています。
 登記名義がAにある間に、AがBではなく他の人Dに売却して登記をDに移転してしまうと、Bは所有権を失ない、Bから買ったCも無権利となってしまいます。いわゆる二重売買のケースです。
 いずれにしても、登記簿をしらべて、売主以外の者が登記名義人である場合には、確実に目的物件を取得しその登記を移転することができるか、をまずたしかめなければなりません。
 BがAから相続によって取得した土地をCへ売却する際、登記はいまだ死亡したAの名義になっていることもあります。この場合は、AからBへ相続による移転登記をした上でBからCへ登記を移転するほかなく、中間省略登記は不可能です。
 所有者でないとき、売主が登記名義人であっても所有者でないことがあります。ただし、「所有者でない」という場合、つぎの二つを区別しなければなりません。
 第一は、AがBに売却して代金を受領し、所有権は移転したが、登記はまだBに移されていないというときのAの立場です。Aは、Bとの関係では所有者でなくなっていますが、登記はAの名義になっているので、第三者との関係ではBに所有権が移転したとはいえないのです。このような場合、CがAから譲り受けてさきに登記をCに移すと、Cは、完全に所有権を取得します。このように、結果からみると、AはBに売却したにかかわらず完全には無権利者ではなかったということになるでしょう。
 第二は、なんら所有権者でなかった者が登記簿上だけ所有権者とされている場合です。無効の売買契約や、偽造された登記申請書によって登記がなされた場合がこれにあたります。この場合、その者を所有権者と信じて売買契約を結んでも、買主は所有権を取得しません。後述のように、登記には公信力がないからです。
 ただし、AがBと共謀して架空の売買契約を行ない、Bに登記を移転したのち、そのような事情を一切知らないCがBを真の所有権者と信じてBと売買契約を結ぶと、この場合に限って、Cは完全な所有権者となります。民法は、これを、虚偽表示による無効は善意の第三者に対抗することができない、といういいかたで規定しています。
 売主が無能力者である場合、売主が所有権者であり、登記名義人である場合も、売主が無能力者である場合、売主が共同相続人である場合、売主が法人である場合および売主が代理人を通じて契約を行なう場合には、それぞれ一定の注意が必要です。
 まず、売主が無能力者である場合を考えましょう。未成年者が単独で(すなわち法定代理人である父母の同意なしに)土地を売却したとします。この場合、未成年者またはその父母は、あとから売買契約を取り消し、よって契約がはじめからなされなかったものとすることができます。このようにして契約が無効となると、買主は、取得した権利を失なうことになります。買主は不測の損害を受けますから、売買契約の相手方(この場合は売主)が成年(満二〇歳以上または既婚者)であるか否かうたがわしい場合には、戸籍謄本をとりよせるなどしてしらべることが必要です。取引の相手方が未成年であることがわかれば、その父母の同意を求めさせなければなりません。
 未成年者のほか、家庭裁判所の宣告によって禁治産者または準禁治産者とされている者についても同様の注意が必要です。禁治産者の揚合は後見人を相手として契約をする必要があり、準禁治産者の場合は保佐人の同意を得て不動産の売買をする必要があります。これに反する場合には、これらの者の取引行為は、未成年者の単独取引と同じく取消しの対象となります。禁治産者または準禁治産者である場合は、戸籍簿にその旨の記載がありますから、容易にしらべることができます。
 未成年者、禁治産者、準禁治産者は、このように、単独で完全に有効な取引を行なう法律上の資格がないので、行為無能力者または単に無能力者とよばれます。
 売主が共同相続人である場合、売買の目的物件である土地が、売主が他の相続人と共同で相続した遺産の一部であって、共同相続人の間でまだ遺産の分割がなされていない場合には、売主だけでなく共同相続人全員を相手方として売買契約をむすぶか、または共同相続人の間で相続分割の協議をして売主のみを当該土地の相続人とした上でその者と売買契約をむすぶかのいずれかをとることになります。いずれにしても、売主の意思だけで売却することは許されないのです。前者の場合は、登記は、被相続人(父)〜共同相続人(母・子二人)〜買主と移転し、後者の場合は、被相続人〜売主〜買主と移転します。
 売主が法人である場合、法人が所有する土地を買う場合には、法人の代表権を有する人と売買契約をむすぶ必要があります。株式会社の場合は代表取締役(社長)、有限会社では取締役、学校法人のような公益法人や協同組合のような中間法人の場合は理事(代表理事)が、それぞれ代表権をもっています。これらの者は、法人名と代表者たる役職名(肩書き)を表示して契約を締結します。ただし、大きな法人の場合は、代表者が社員を代理人として契約をおこなうことが少なくおりません。法人と取引をする場合には、だれが法人の代表者であるか、および契約締結の相手方が代表者自身でない場合その者が代表者から代理権を与えられているか、を確認することが必要です。
 売主の代理人と取引をする場合、代理人とは、本人から契約を締結する権限を与えられて、本人のために、本人の名を示して契約を行なう者をいいます。本人が委任契約によって代理権を授与する場合と、委任状などによって一方的に権限を授与し、その旨を相手方に表示する場合があります。
 代理人が契約を締結する場合には、本人は取引の場に出てこないのがふつうですから、相手方は代理人が適法に代理権を授与されているか否かを充分にしらべる必要があります。委任状はしばしば偽造されることがあるので、委任状を過信せず、その他の方法によって代理権の有無を確認すべきでしょう。
 代理権のない者を通じて土地を買う契約をしても、その契約は、本人(所有者)との関係では本人が追認しない限り無効であって、なんら所有権を取得することができません。登記を移転しても、その登記自体が無効です。また、代理人と称する者に代金を支払ったのちに代理権のないこと(無権代理といいます)が明らかになると、とりかえしのつかない損害をこうむることがあります。
 ただ、つぎの三つの場合は、本来、無権代理であるにかかわらず、相手方が代理権ありと信じても無理がない事情があるものとみて有効な代理行為と同し取扱いをします。これを表見代理といいます。
 (1)本人が代理権を与えていないのに与えたと相手方に表示した場合
 (2)代理人が与えられた代理権の範囲をこえて契約を行なった場合
 (3)代理権が消滅したのちに代理人が契約を行なった場合
 いずれの場合にも、代理権のないことを相手方が知っていたり、不注意のため知らなかったときは、本人は責任を負いません。このことは、(1)の場合には本人の側で立証する必要があります。(2)と(3)の場合には、逆に、相手方が、代理権ありと信じたことには「正当の理由」があったということを立証する必要があります。
 売買物件である土地の上に他人の権利が存在すると、せっかく買っても利用することができなかったり、のちに所有権を奪われたりすることがあります。他人の権利でも、それを無視してよい場合と、そうでない場合があります。
 ここでは、まず、他人の権利が対抗力をもっているため、その権利の行使を承認しなければならない主要な場合をあげましょう。
 (1)地上権、永小作権、地役権、不動産賃借権、不動産先取特権、不動産質権、抵当権、採石権で登記されているもの
 (2)登記されていない地上権または賃借権で、その土地上に地上権者または賃借権者の名義で登記された建物が存在している場合
 (3)土地収用法、土地区画整理法、都市計画法などによる土地使用権
 (4)罹災都市借地借家臨時処理法が適用されている地域における借地権
 (5)農地または採草放牧地の賃借権で賃借人に土地の引渡しがなされている場合
 これらのうち、(1)は土地登記簿(乙区の欄)をみることによって、(2)は建物登記簿をみることによって容易に知ることができますが、(3)については所轄官署などで、(4)と(5)については関係者から調査することが必要です。
 このほか、所有権、地上権、抵当権などの不動産物権の仮登記の有無も登記簿によって確認しておかなければなりません。仮登記がのちに本登記に改められると、これらの他人の権利を承認しなければならなくなるかじです。
 調査の結果、これらの他人の権利の存在が明らかになった場合は、まず、売主に、売主の責任でそれらの権利を除去することを求めるべきでしょう。他人のために担保物権が設定されている場合は、売主が債務を弁済すれば、担保物権は消滅します。売主は債務の弁済にあてるために、売買代金の一部を内金として先払いしてくれというかもしれません。その場合は、担保権の抹消のために内金が用いられ、確実に担保権を消滅させることができるかを確認してから内金を支払うべきです。
 他人のための利用権が存在しているときは、権判者の同意が得られない限りその権利を除去することはできません。たとえば、登記した建物を有する借地人がいる場合、その者の意に反して借地権を消滅させることはできないのです。したがって、他人の権利が存在したままで買うか、それとも買うことを断念するかのいずれかとなります。

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