複数地権者による共同事業、再開発事業への展開

 土地信託独自のメリットが期待できる、隣接する複数地権者による共同事業、再開発事業への導入について紹介してみましょう。
 東京・千代田区内の商業地で、低層の商店街を、一棟のオフィスビルに建て替えようという計画です。
 銀行が、地権者6人の権利調整にあたり、これをまとめあげ、900平方メートルの対象地に、延べ床面積6000平方メートルの8〜9階建てオフィスビルを建設、この建物は、大手不動産会社に一括賃貸し、同社がテナントを集め、建物の維持・管理を担当する計画です。
 地主の方6人は、受益権の持分に応じて、それぞれ、信託配当を受け取ると同時に、このビルにテナントとして入居することとなります。
 この計画によれば、大手不動産会社への一括賃貸により、一定の配当が保証されることとなっており、実現へ向け動き出しています。
 このような、複数地権者による共同ビル事業、ひいては、より大きな再開発事業へ、土地信託を導入した場合における基本的な仕組みと前提条件は、次のとおりです。
土地信託
 流れにそって説明してみますと、まず隣接する複数の地権者がそれぞれの財産(所有権・借地権)を信託銀行に信託し、受託者である信託銀行が、各地権者の財産をひとまとめに管理・運用し、施設全体の事業経営による成果を、信託配当として、受益者である地権者に、それぞれの受益権の割合に応じて、交付していく方式です。
 地権者がビルを利用したいときには、テナントとして入居します。信託終了時には、地権者それぞれに、各自の受益権割合を持分とする、土地・建物の所有権が戻ることになります。
 すなわち、一般に土地・建物は、地権者の共有不動産の形態で返還されます。希望があれば、区分所有の形態、あるいは売却処分による金銭交付により返還することも可能です。
 実際のケースでは、再開発の機運の盛り上がりに伴って信託銀行が事業計画案の作成を通じ、地元のコンセンサスの形成をはかり、次に、現在の不動産の権利(所有権・借地権)に基づき、各地権者間の受益権の割合を、一定の方法により、権利調整します。
 具体的には、当該地域全体の評価額を100として、再開発の効果を織り込んで、各地権者の権利を、相対評価の形で定めるわけです。
土地信託
 信託方式による、共同ビル事業や、再開発事業では、単独のケースに加え、次のようなメリット、特徴が考えられています。
 地権者にとって複数地権者間の権利調整が、公正かつスムーズに運ばれ、事業化が円滑に進みます。再開発による開発利益を、インカムゲイン、キャピタルゲインとも全面的に享受できます。専門家によるビルの一体運営により、効率的なビル利用が可能となり、高配当が期待できます。所有面積の小さい地権者が待っている、大きな地権者の発言が優先するのではという不安が解消します。
 事業資金の調達が、借り入れ主体が信託銀行になることで、容易になります。地権者の一部に、相続や破産などの事態が発生しても、信託受益権の変更だけで済み、事業運営上なんら支障が起こりません。等価交換などのように権利変換を行わないため、地価が顕在化しません。その結果、テナントの誘致がやりやすくなります。
 再開発後の権利関係が単純になります。ビルの所有者は信託銀行、入居者はすべて賃借人です。区分所有形態とならないため、商業施設に有効なオープンフロアでの利用が可能となります。テナントとの契約や、建物の管理において、信託銀行の取引基盤、ネットワークが活用できるほか、統一された質の高い管理・運営ができます。

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 一般に、都市再開発事業は、次のように、都市再開発法に基づく法定再開発と、民間ベースの任意の再開発とに大別できます。
 駅前商店街や、都心部のオフィス街での大規模な再開発だけでなく、複数地権者による共同ビルの建設、工場跡地の開発、老朽化した低層建築物の建て替えなどもこの分野です。
土地信託
 法律に基づかない「共同ビル事業」「等価交換方式」についても、計画的かつ総合的に推進していく必要性は、社会的にみて大きく、再開発に関する各種助成制度が設けられています。
 代表的なものとしては、次のものがあります。

 優良再開発建築物整備促進事業
 三大都市間の既成市街地、県庁所在都市および人口20万人以上の都市を対象に、2人以上の地権者などが敷地を共同利用し(1000平方メートル以上)、オープンスペースをとった共同の中高層建築物を建てる場合における国や地方公共団体の補助金、公的融資制度、さらに税制などの助成制度です。

 特定街区制度
 健全な形態を有する建築物の建築の整備と、有効な空地を確保することにより、環境のよい街区の形成を目的とした制度です。この制度では、敷地単位でなく、街区単位で建ぺい率、容積率、高さ制限が指定され、建物の容積率、高さの制限、壁面線の位置の制限などが緩和されます。

 総合設計制度
 土地の有効利用と公開空地の確保により、市街地の環境整備をはかる制度です。この制度では、建物の容積率、高さ、斜線制限などの規定が緩和されます。

 法定再開発事業へ土地信託を導入した場合には、第一種再開発事業の枠組みの中で、受託者が「個人施行者」となることにより事業が推進されるものと考えられています。この場合、権利変換による保留床の処分、事業費の捻出という形態はとられずに進められるのが大きな違いです。
 なお、これまでは、商業ビル建設の市街地再開発事業を念頭に紹介してきましたが、住宅分譲型の市街地再開発事業へも、同じように活用することができます。
 このケースでは、施設建築物の竣工次第、ユーザーに分譲し、その分譲代金を事業資金へ充当したうえで、残りを配当として、地権者に交付することになります。
 また、店舗や住宅が密集している術中で、街路を拡張し、整然とした術区につくりかえ、公共施設を整備したり、農地や山林を大規模な造成工事により、住宅用地とする土地区画整理事業へも活用できます。

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