土地信託の現状と将来

 地主サイドの視点から、広く社会一般に目を転じますと、宅地供給の停滞、市街地再開発の遅れが目立っていることがわかります。
 宅地供給停滞の背景には、土地所有者の強い保有志向と、住宅開発事業の採算の悪化、素地価格の高止まり、関連公共施設整備への過大な負担、および事業期間の長期化が原因があると指適されています。
 一方、既成市街地においては、土地の高度利用の遅れ、敷地の細分化の進行、ペンシルビルの乱立、道路・公園などの都市基盤整備の遅れが、期待に反し、あまり改善されていない状況にあります。
 この背景には、高い地価、複雑な権利関係、共同事業への反発、共同事業を推進するコーディネーターの不足、等価交換方式の行き詰まりなどがあるといわれています。細分化されている土地は、共同化して始めて本当の利用価値が生まれます。
 このような土地政策、住宅政策ひいては都市政策という社会的課題の打開策としても、土地信託は注目されており関係官庁、地方自治体とも、効果のほどに熱い視線を送っています。
 この制度が、地主の方の「とにかく伝来の土地は手放したくない。」という売り惜しみ意識を、少しでも緩和し、いわば「触媒」の形で事業経営の適切な代行役を果たすことから、宅地の円滑な供給、宅地の流動化の促進、あるいは土地の高度利用や敷地の統合化による都市環境の整備、市街地の再開発に一役買うというわけです。売却と異なり、高い地価が顕在化せず、近隣の地価の値上がりを招来するおそれがない点も、大きな魅力です。
 もとより、土地信託利用の成否は、素材である土地の収益性に大きく依存します。そもそも、算盤に合わない土地では成功はおぼつきませんし、無論リスクを負うのも当然で決して万能薬ではありません。

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 厳しい財政事情を反映して、内需振興と行政改革の一環として、公共的事業への民間活力導入の声が高まり、民間の知恵と資金の活用が焦眉の課題としてクローズアップされています。
 この流れを契機に、事業経営型の土地信託がその主役の一つとして、各方面で注目を浴びるようになりました。信託各社の積極的な取り組みもあり、すでに多くの実績が重ねられ徐々に市民権を得つつあります。これを見ると地主さんは意外によく信託制度を理解されており上手に利用されているのがよくわかります。
 その事業内容は、オフィスビル、賃貸マンションなどが中心ですが、土地の規模、地価、立地条件ないしは周辺の環境を反映して、社宅向けマンション、外人向け戸建て住宅、店舗、スポーツ施設、ファミリーレストラン、ハイテク研究所、工場団地施設など、幅広い用途にまで広がっており、病院やホテルヘの利用も計画されています。
 また、分譲マンション、宅地の造成分譲などの、いわゆる分譲タイプにも導入されています。これは、地主が単に素地をデベロッパーなどへ一括売却するのではなく、信託銀行の企画力、販売力、信用力をフルに活用して、土地や建物をエンドユーザーに販売、開発利益を取り込もうというものです。
 実施地域は、採算面の制約から都心部の一等地が目立っていますが、企業や大学の効外への移転に伴い、大都市近郊、地方都市へも、逐次拡大しています。
 委託者となる土地所有者は、個人や事業会社単独のケースが大半を占めていますが、お寺や神社といった宗教法人、学校法人、あるいは財団法人、労働組合など土地の処分になんらかの制約がある法人も散見されます。
 親族2〜3人での共同委託のケース、さらには、地主の方が会社をつくり、借地契約を結び、会社が借地権を信託銀行へ信託し、配当を収受する一方、地主は会社から地代を受け取るといった形態など節税対策狙いで、所得の分散をはかるケースも現れています。
 今後を展望しますと、土地所有者の方々の資産管理のポリシー、狙い、あるいは土地の規模、立地条件に応じて、さらに多彩な事例が積み重ねられ、一層、裾野が広がっていくことと思われます。
 一方土地の利用者、すなわちテナント側からのたっての希望により、売却を渋っている地主の方を口説き落とし、テナント側の使いやすいビルの建築という、逆のアプローチも出現してきており、この傾向は一段と進むものと思います。
 とりわけ、この普及、発展の過程においては、民間ベースでの、本格的な複数地権者による共同事業や、再開発事業、および、区画整理事業といった点から面への展開と、公務員宿舎などの公有地の信託、公有地と民有地を一団の土地として、一括して信託する形態などが、促進の大きなバネとなることが予想されます。
 すでに具体化へ向け動き出している案件がみられ、各自治体とも導入促進をはかるため、研究に余念がありません。
 また、借地契約や等価交換方式と組み合わせた複合手法も、楽しみな分野です。
 このほか、先端技術産業展開の拠点を全国各地につくり、地域経済の振興と、技術立国をめざすテクノポリス構想に対しても、一括買収にかわる用地確保の手法、ないしは信託銀行の取引基盤を利用した企業誘致の手法として、大いにその活用が期待されています。
 これが実現すれば、ハイテク産業の用地を、格安に確保するとともに、土地造成から工場の建設、賃貸までを、地方自治体と協力して、信託銀行が一括引き受け運営する一大プロジェクトとなることでしょう。

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