土地収用法による土地財産権の補償

 土地区画整理の場合と同じように土地財産権を商品所有権たる土地所有権としてとらえる発想から脱却していないために、土地を生活、生存の基礎としている国民の生活利益の確保という観点からみて種々の矛盾が生じている例として、土地財産権の補償制度を取上げてみましょう。
 公共用地取得の基本法としては、土地収用法があり、土地財産権の補償について、第六八条以下で規定している。しかし周知のごとく、現実に公共用地を取得する場合に、収用法を発動する場合はむしろまれであり、多くは民法上の売買契約の形をとっている。このように法形式的には売買であっても、収用法の発動を背後にもった買収は、土地権利者にとっては実質上、収用と同じ意味をもつものであるから、この場合の補償も、収用法上の補償と同様に考えてよいであろう。そして公共用地の買収にあたって、従来、起業者により補償基準が若干異なっていたので、昭和三七年三月二〇日「公共用地の取得に伴う損失の補償を円滑かつ適正に行なうための措置に関する答申」にもとづき同年、「公共用地取得損失補償基準要綱」が閣議決定された。したがって、現実には、収用法上の補償規定よりも、この「要綱」の補償規定の方が重要な役割を果している。

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 「答申」の主要な内容は、第一に土地収用、売買契約をつうじて統一的な損失補償基準を確立すること、第二に公非補償基準を確立すること、第三に鑑定評価制度を確立すること、の三点にあるが、「要綱」はこの第一をうけて作成された。「答申」で指摘された三点のうち、補償項目の整理統一および補償額の算定方法の内容の大部分は「要綱」に盛りこまれたが、損失補償基準の適正な実施を確保する措置は、「要綱」に入っておらず、閣議決定と同時になされた「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」という閣議了解の中で生かされ、「精神損失に対する補償等について」および「事業施行に伴う損害等の賠償について」という了解事項として残っている。
 「答申」および「要綱」の補償原則は次のとおりです。
 土地等の財産権に対する補償、財産的補償が適正に行われれば、生活権補償のごとき項目を設ける必要はない。公共事業の施行に伴い生活基盤を失う者がある場合には、補償の枠の中ではなく、別に必要に応じて職業の指導、生活環境の整備など生活再建措置を講ずべきである。「慣習上認められた利益に対する補償」は、社会通念上認められる程度にとどめ、「土地に権利を有する者に雇用されている者に対する補償」は、本来理論的には補償すべきでないが社会政策の行き届いていない現状に鑑み再就職に通常必要な期間、従前の所得相当額で補償する。「少数残存者補償」は、生活共同体から分離される場合であって、受忍の範囲をこえるような著しい損失があり、公平の原則に著しく反するような場合に限って適正な額を補償する。
 土地の補償額算定の基本原理は契約締結時の正常な取引価格とし、正常な取引価格は、近傍類地の取引価格を基準として決める。
 通常生じる損失の補償として移転料、立木補償、営業補償、漁業補償、残地補償、その他の補償を定めている。
 補償の方法は、金銭をもって行うことを原則とする。したがって、宅地、無地などの代替地による現物補償は、例外的なものとして、起業者に義務づけず、倫理的義務のみを課する。
 精神的損失に対する補償はしない。けだし精神的苦痛は、社会通念上受忍すべきもので通常生じるべき損失と認めないので補償しない。
 事業施行に伴う損害等に賠償は行わない。事業施行中又は施行後における目陰、臭気、騒音、水質汚濁等により生じる損害については、損失補償として取り扱うべきではない。しかし、これらの損害が社会生活上受忍すべき範囲をこえる場合に別途損害賠償の請求が認められることもあるので、これらの損害の発生が確実に予見されるような場合には、あらかじめこれらについて賠償することは差支えない。
 さらに、昭和四二年に収用法が全面的に改正され、土地の収用価格が事業認定の告示の時の価格に権利取得裁決の時までの価格の変動に応じる修正率を乗じたものとするよう改正され、従来の裁決時主義が変更された。「要綱」では任意買収の建て前上契約締結時の正常な取引価格を基準としていたが、収用法の改正に合わせて「要綱」も修正されている。

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