土地財産権規制の根拠

 商品交換社会の発展に伴って、土地の商品化が進むにつれ、土地所有権の商品所有権としての機能もまた拡大する。土地が農地であって、農業経営資本が土地所有を把握している限りでは、農地の市場価格は、地代価格によって定められ、その地代価格はまた、究極には農業生産力の水準によって規定されているから、商品所有権としての無地所有権の価格も、そのわくの外に出ることはありえない。しかし資本主義の発達に伴って都市化、工業化が進み、土地の非農業用的利用が拡大すると、土地価格は、農業資本の支払い能力である資本制地代のわくの外に出て上昇する。なぜなら、非無業用的土地利用の地代水準、したがって価格水準を規定する工業資本の生産力水準は、無業生産力水準より、通常、はるかに高いからです。

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 土地の特殊性にもとづき、限定された土地利用をめぐる競争と対立がはげしくなるときには、限られた土地独占の獲得は深刻であり、それだけ地価上昇が顕著になる。そしてその上昇が見込まれる限り、土地は多かれ少なかれ投機の対象となりやすい。都市化、工業化の速度が早ければ早いほど、上地投機の傾向はそれだけ顕著です。それゆえ、どこの国の資本主義の歴史の中でも、都市化、工業化が急激に達んだ時期には、ほとんど例外なく、土地投機が社会問題となったのです。かくて交換価値を追求する商品所有権としての土地所有権の機能は、土地商品の需給市場の特殊性のゆえに、多かれ少なかれ、また潜在的であれ顕在的であれ、投機的傾向を内包しており、そのこと自体が土地利用に対する障害とならざるをえない。したがって、一九世紀の中葉以降、この側面からの土地所有権の自由に対するコントロール、とりわけその投機的利益追求の自由に対するコントロールも、土地利用権保障の重要な課題として登場するのです。
 さらに土地利用権相互の関係において、たとえば大企業の上地利用、中小企業の土地利用、農民の土地利用、都市住民の土地利用等が競合するとき、これを自由なる土地市場に放任し、それぞれの主体の恣意的な経済活動に任せるならば、経済力の強いものが条件のよい優等地を占め、経済力の弱いものが条件のわるい劣等地を探し求めることになり、農業的土地利用と都市的土地利用との相互関係において、あるいは都市的土地利用内部の関係において、無秩序な土地利用が進行し、秩序ある合理的な都市の形成や貧村の発展を妨げることも明らかである。この観点からみれば単に土地所有権に対する土地利用権の保障一般が問題であるのみならず、土地利用権の内部編成そのものをコントロールし秩序づけることもまた重要な課題とならざるをえない。
 以上のことから国家は、商品所有権としての土地所有権の自由市場に介入するのみならず、土地利用をめぐる自由市場にも介入し、所有と利用との両面にわたって土地財産権の自由を規制することになる。それのみならず、土地についてはその不動性と非代替性から生ずる特定の土地利用の必要性を確保するために公用収用制度という、土地財産権に対する特殊な権力的介入の形態をも必要とする。土地収用制度そのものは、古くから存在するものですが、それが広く一般化するのは、やはり、異種の土地利用相互間の競合が深刻化するようになってからです。同種の土地利用相互の間では、土地利用目的の価値の序列をつけることはできないから、それは私的経済行動の法則にまかせる以外になく、権力的介入を生する余地はない。これに対して、異種の土地利用が競合するときには、その土地利用目的に価値の序列をつけ、ある種の土地利用は、他の種の土地利用より公共的価値が高いから、優先的に利用させるべきであるという論理的前提に立って、権力の介入による土地財産権の優先的利用を確保しようとする。そしてそれは、公共の福祉、公益目的という法イデオロギーによって正当化される。どのような種類の土地利用に、この種の優先的上地利用が認められるかは、それぞれの社会の歴史的条件によって異なりうるが、一般的にいえば、この序列は、特殊な行政目的の場合を別とすれば、国民経済において占める比重と国民生活において占める比重との相関関係によって定められるといえよう。資本制国家においては、国民経済の中で、より高い生産力を担うもの、国民経済に対してより重要な影響力をもつものが、公共の福祉の大きいものとして優先的に保障され、国民生活にとって重要なものが劣後するという傾向が一般的に存在する、といえよう。
 他方、別な側面からする土地利用の公共性、すなわち土地が連続し、一つの土地利用が隣接する、あるいは周辺の他の土地利用に直ちに影響を与えるという意昧での公共性もまた、土地の属性にもとづくものであるゆえに、広く、どのような社会でも多かれ少なかれ問題になりうる余地がある。かの権利濫用禁止の法理、古典的相隣関係やニューサンスの法理なども、このような観点からの土地財産権の自由制限の法理として早くから発達していた。しかし、この点でも、在りし良き日の田園社会における土地利用の対立は、まだそれほど深刻でもなく、またそれほど一般化してもいなかった。それゆえ、土地財産権の規制の態様も、例外的に起りうる個別的紛争を処理するという観点からの私法的規制に委ねるにとどまっていた。
 しかし資本主義の発展と技術の発達によって都市化、工業化が進展すると、一方では、公害に典型的なように周辺土地利用者に与える影響の大きさと深刻さは以前とは比較できないほど大規模なものとなり、また他方では、巨大過密都市に典型的なように居住地域の密集や建物の高度化から生ずるさまざまの都市問題の深刻さも以前とは比較にならない規模のものとなる。これら公害問題や都市問題は、地域住民の生存権的土地利用の根底をおびやかす。土地に拘束され、その上に生存、生活している住民は、公害を受け、環境を破壊されたからといって、その土地から逃げ出すことはできないからです。かくて、生存権的土地利用権の保障の観点から、公害問題、都市問題に対処するための各種の公法的、私法的推薦の制度化も、不可欠な課題とならざるをえない。

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