土地収用関係法

 企業の側からする円満迅速な土地取得要求は、新土地収用法の一定の民主的手続を漆黒と感じ、二〇年代末からその改正を迫っていたが、昭和三六年に公共用地取得制度調査会の答申を経て公共用地取得特別措置法が制定され、高遠道路、鉄道、空港、水利施設、発電施設、治水・利水施設、駅前広場などの特定公共事業のうち建設大臣が公共用地審議会の議を経て認定したものについては、一般の土地収用より起業者に有利に土地を収用することができる法律的基礎がととのえられた。すなわち、この法律によれば、収用委員会は、明渡裁決が遅延し事業実施に支障がある場合で起業者の申し立があったときは、損失補償の審理をつくしていないものがあっても、概算見積りで仮補償金を定め、明渡裁決をすることができ、この仮補償金を補償金とみなして収用の効果が生じることとしている。また収用委員会がニカ月以内に緊急裁決を行わない場合には、建設大臣の代行裁決が認められている。また、事業認定及び土地細目公告の有効期間の短縮、事業認定又は裁決の申請書の縦覧を市町村長が怠った場合の都道府県知事の代行、土地調書又は物件調書を作成するための立ち入りを拒まれ又は妨げられた場合の特例等、収用手続を迅速にするための諸措置も認められている。

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 本法は、他方では、被収用者の利益のための規定、たとえば事業施行者に事前説明義務を課する規定、現物補償(建物提供)の裁決の規定、現物給付の要求実現の努力義務、生活再建対策の規定等を設けているが、これもまた、被収用者の権利の尊重というよりは収用の円満迅速な実現のための手段という性格が強く、全休として、企業サイドに立ち、また企業本位の新しい土地収用制度であることに変わりはない。この法律により、オリンピック道路、名神高速道路等の建設用地取得が進められた。
 さらに公共用地取得制度調査会の答申の中で、用地取得難の解決を促進するため補償基準の作成について速切な措置を講ずべきことが強調され、また公共用地取得特別措置法を審議した国会の審議においても同様の附帯決議がなされたので、政府は、あらためて公共用地審議会を設置した。この審議会は、昭和三七年に、統一的損失補償基準の確立、公共補償の基準の確立、鑑定評価制度の確立の三項目を内容とする答申を出し、それを受けて同年六月二九日の閣議決定で「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」および「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」の閣議了解が行われた。要綱は、もちろん、法律的効果を全くもだない単なる閣議了解であるにもかかわらず、その後の運用において、補償基準の基本法であるかのごとく金科玉条とみなされ、しかも公共用地の取得のみならず一般用地の取得にも使われ、さらに土地収用によらず民法上の売買による場合の基準や、他の法律にもとづく補償基準にも使われるなど、きわめて重要な役割を果すことになるのです。
 また公共用地審議会の答申で提案された鑑定評価制度の確立については、さらに昭和三八年の宅地制度審議会の答申でもその必要性がのべられ、その結果、同年に、不動産の鑑定評価に関する法律が制定された。これは、不動産鑑定評価を適正に行う上において、法律、経済等必要な分野について知識をもち、且つ実務経験のある者を専門職たる不動産鑑定士として確保する必要があるという見地から、その資格要件を定め、義務を課し、地位と収入の安定を図ることを目的とするものであった。不動産鑑定士の仕事の中味である不動産鑑定評価基準は翌年の昭和三九年に定められ、補償基準要綱とならんで、国家の側からする地価基準の規制原理として作用することになるが、後に地価公示法の制定に伴って改訂され、これまた重要な役割を担うに至った。
 これら二連の措置の後に、昭和四二年には、土増収用法の本体そのものについて重要な改正が行われ、土地収用権限が一般的に強化されるに至った。とくに改正法は「ゴネ得」防止という観点から、補償価格の算定時期を、事業認定の告示の時とし、補償金額は、事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額としている。この修正率は、政令により、総理府統計局の小売物価統計のための調査結果にもとづき作成する消費者物価指数のうち全国総令消費者物価指数及び日本銀行が統計法にもとづき作成する卸売物価指数のうち投資財指数を用いて作成することとされた。これらの総含判定にもとづく物価指数の上昇率は、地価上昇の指数より、通常はるかに低いから、改正法のこの規定は、事業認定の告示の時よりの地価の上昇をほとんど含まない低い地価での収用を可能にするためのものであった。

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