土地収用法

 開発政策の遂行にとって不可欠な土地取得を担保するための基本法は、いうまでもなく土地収用法です。戦前の土地収用法について一言すると、明治以降の最初の土地収用法制といわれる明治五年の地券渡方規則の改正から明治前期の基本法たる同八年の公用土地買上規則を経て、同二二年に土地収用法が制定された。この法律は、旧来の強制売買の観念を改め、近代的収用制度としての体裁を整えたこと、国家事業による収用を原則としてきた従来の態度を改め、政府事業と民間事業とを平等な地位に置き、両者を含めて公共の利益としたこと、従来の包括主義を排して、限定列挙主義をとったこと、収用手続を整備し、測量検査、協議、収用審査委員会の裁決、内務大臣の訴願裁決、補償金の出訴等に開する規定を置き、また残地補償、工作費補償、飛地収用、物件移転費補償等を認めたこと、等の諸点において、現代土地収用法の出発点となるものであった。その後、資本主義の発展と共に、収用法の適用すべき事業の範囲を拡張し、また手続を整備する方向で、明治三三年収用法が成立し、大正三年、同一五年の改正を経て、昭和二年には、土地の定着物を収用しうると同時に、借家人等の建物権利者を関係人に追加し、また事業認定権限を内務大臣に所属せしめる大改正が行われた。しかし、いずれにせよ戦前の土地収用法は軍事優先的であり、また権力主義的でした。

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 このような旧法に対して昭和二六年の新土地収用法は二つの側面をもっている。その一つは戦後改革の一環としての側面である。戦後の憲法により、財産権も基本的人権とされるに至ったので、新土地収用法は、戦前の場合よりもいっそう土地所有権の保障を考慮せざるをえなくなり、収用手続が慎重かつ複雑となり、戦前ほどには権力主義的でなくなった。しかし同時に、それは他面において、そのような一定の「民主化」を前提としたうえで、手続的整備を行うことによって、戦後日本社会に適公的な土地収用のための基本法としての役割をもつようになった。
 講和以降の日本経済の再建過程において、高度成長を準備するための開発政策としては、昭和二〇年代末から三〇年代にわたる大規模な電源開発が中心となるのであるが、この電源開発をすすめる上で新土地収用法は二面的役割を果した。一方で、それは電力会社が発電ダムに必要な土地を取得するための武器として使われた。その結果、各地で、一村が湖底に沈み、ダムによる水没は、深刻な社会的問題を生ぜしめた。しかし他方において新土地収用法の一定の民主的手続は、土地を奪われる農山村の往民たちのダム反対運動の武器としても利用された。このため電力独占資本を中心として財界の側から、土地収用法の再改正問題が早くも昭和二〇年代末以降論じられ、昭和三一年に土増収用法の一部が改正された。その内容は、建設大臣の事業認定権限が強化されたこと、事業認定申請書の添付書類のうち土地管理者又は関係行政機関の意見書については相当の期間内にこれを得ることができないときはその事情を疎明する書面で足りるとしたこと、等である。原案には、協議の省略、審理手続の制限などがあったが、この点は国会で削除された。

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